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二年生の一学期
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成瀬家の玄関をくぐると、すぐさま南は気がついて、真正面の壁を見据えて口を開く。
「なにこれ、銅板画?」
「ううん。銅板の 飾り絵。銅版画は、版画 みたいの」
南は見惚れる様子で銅板から視線を逸らさず、続けて訊いた。
「前来た時なかったよね、奈緒が作ったの? すごいレトロな車。アメリカの二十世紀初頭くらいの車かな? ドアの横にタイヤが積まれてるし、シルクハットかぶった丸眼鏡の紳士が乗っていそうやつで格好いいよ。屋根がないのがスポーティでいいね」
二人の目の前にある壁掛けの飾り絵には、T型と呼称されていそうなアンティークな車が、凹凸によって打ち出されていた。
褒め称えるように、彼女が言葉を紡ぎ続ける。
「相当根気がいるよね、片手で銅板を叩いて絵を浮かび上がらせていくんでしょ。絵の具の絵と違って手直しがきかないし、前もってちゃんと想像できていないと、怖くて打ち始められないよね」
背景の全面に打ち出された爆発的に分裂した神経細胞のような塊を見やって続ける。
「背景だって、この不思議な模様を全部に打ち出していくんでしょ。わたしだったら無理かもしれない。その創作意欲を思うだけでも感心しちゃう」
「よかったらあげようか?」
奈緒がそう言葉をかけると、南が振り返った。
「いや、いいよ。すごくうれしいけど、こんないいものをもらうなんてできないし。大事に飾っておくといいよ。これからも奈緒のうちに遊びに来させてもらうたんびに、鑑賞させてもらうことにする」
言い終わって玄関を見渡す。彼女の目に映る風景は、以前来た時とはだいぶ様変わりしていた。置いてあるものは基本的にみんな同じで代わり映えしないのだが、奈緒の描き出した絵が幾つも加わって飾られていた。
「なにこれ、銅板画?」
「ううん。銅板の 飾り絵。銅版画は、版画 みたいの」
南は見惚れる様子で銅板から視線を逸らさず、続けて訊いた。
「前来た時なかったよね、奈緒が作ったの? すごいレトロな車。アメリカの二十世紀初頭くらいの車かな? ドアの横にタイヤが積まれてるし、シルクハットかぶった丸眼鏡の紳士が乗っていそうやつで格好いいよ。屋根がないのがスポーティでいいね」
二人の目の前にある壁掛けの飾り絵には、T型と呼称されていそうなアンティークな車が、凹凸によって打ち出されていた。
褒め称えるように、彼女が言葉を紡ぎ続ける。
「相当根気がいるよね、片手で銅板を叩いて絵を浮かび上がらせていくんでしょ。絵の具の絵と違って手直しがきかないし、前もってちゃんと想像できていないと、怖くて打ち始められないよね」
背景の全面に打ち出された爆発的に分裂した神経細胞のような塊を見やって続ける。
「背景だって、この不思議な模様を全部に打ち出していくんでしょ。わたしだったら無理かもしれない。その創作意欲を思うだけでも感心しちゃう」
「よかったらあげようか?」
奈緒がそう言葉をかけると、南が振り返った。
「いや、いいよ。すごくうれしいけど、こんないいものをもらうなんてできないし。大事に飾っておくといいよ。これからも奈緒のうちに遊びに来させてもらうたんびに、鑑賞させてもらうことにする」
言い終わって玄関を見渡す。彼女の目に映る風景は、以前来た時とはだいぶ様変わりしていた。置いてあるものは基本的にみんな同じで代わり映えしないのだが、奈緒の描き出した絵が幾つも加わって飾られていた。
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