FRIENDS

緒方宗谷

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二年生の一学期

🍭

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 奈緒を除く三人の好評を博した。
「ピーナッツバター味をあけまーす」
 彩音が差し出した袋から一粒取って奈緒、「言わずと知れたピーナッツバターの味だ」と呟く。
 誰にも異論はないようだった。
「じゃあ、これは黒こしょうのレモン味」
 みんなに袋を回し終えた彩音が最後に一粒取ると、示し合わせたように一斉に口にする。
「レモンの味しないね。全然酸っぱくない」
 こよみがそう言ったが、正面に座っていた奈緒の顔がくしゃくしゃになって真ん中による。しびれたように微震して「しゅっぱい」と叫ぶ。
 右隣にいた心愛が驚いた。
「ええっ、どこが? 全然レモンの味しないよ」
「レモングラスのアロマみたいな香りがしますね」とこよみ。「さっきの瀬戸内レモンには全然香りなかったのに」
「あ、でも、なんかこしょうの刺激の裏に酸味が見え隠れするような……」
 と彩音。悩み悶える様子で咀嚼を繰り返す。
「ああ、確かに」心愛が頷き、こよみが「これも美味しい」と評価した。
 奈緒が置かれた四つの袋から一つを持ち上げる。
「最初のが一番おいしい。今度キャラメル味開発しないかな? でもなんでケトルコーンていうの?」
 買いに行った彩音が答える。
「なんでも百五十年前にアメリカの農家の人が鉄製のケトルでポップコーンを作って、フェスティバルで販売したのが起源らしいですよ。それに由来するというか、再現したお菓子なんじゃないですか?」
 少し間を置いて、つまんだオリジナルをしげしげと見やりながら奈緒が呟く。
「……ポップコーンだよね」
「うん、ポップコーンだね」[心愛]
「そうですね、それ以外になにかありますでしょうか」[彩音]
「ちがうとは言えませんね、ほぼ確実に」[こよみ]
 ここにいる美術部員と奈緒の間で、ケトルコーンはポップコーンだということになった。
「そういえば――」と彩音が口を開く。「注文した時、カップにします? 持ち帰り用の紙袋にします? って訊かれて、紙のほうがエコかなって思って紙にしたけど、よくよく考えたら、エコステーションに返せばリサイクルだったのかな?」
「どうだろ、いまさらしかたないけど」こよみが答える。
「紙パレット代わりにして捨てれば、リサイクルになるよ、たぶんきっと」
 奈緒が自信ありげに笑って言うとこよみが、驚いて口をついて出た言葉が転げ落ちるような声を発した。
「成瀬先輩って、たまに鋭いこと思いつきますよね」
「あはははは、たまにだって。たまに」困った様子で頭を右に傾ける。
「あ、いや、おかしな意味じゃなくて」
 慌てるこよみを、みんなで笑い倒す。お客さんはまだ一人も訪れていなかったが、楽しい時間が流れていった。





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