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二年生の一学期
第百四話 存在の方法
しおりを挟む誰もいない静かな休憩所で大将のカフェラテを飲んだ瑠衣は、空っぽになったペットボトルを両手で包んで、また語り始める。
「たぶん今、小沢さんは気が楽なんじゃないかなぁ? 確かに一人でいるのは大変かもしれないけどぉ、誰かに合わせて毎日怖がりながら過ごすより、心は擦り減らないのかもしれないよぉ。だって自分は自分でいられるんだから。一人になる不安や恐怖は、一人になっていないから感じるんだよぉ。一人になったら、却ってそんな心配はなくなるから、安心が得られるかも。だから、成瀬さんが無理に関わろうとすると、せっかくの居場所がかき乱されて、不安が流れ込んじゃうかもだよねぇ」
潤いのあるピューピットラインで、くすりと微笑む。
「小沢さんってストイックで自分を持っていると思わない? いもしないみんなとの同調圧力に押しつぶされずにいられるなんてすごいよねぇ、尊敬しちゃうし憧れちゃうよ。でもそれはぁ、小沢さんだからなせる業なんだと思う。わたしやなおちんにはむりだよ。特にひなちっちにはねぇ。だから今は、わたしたちとグループ作って仲良くしたほうが無難だよぉ。わたしもひなちっちも助かるしぃ」
みるみるうちに奈緒の顔が渋面と化し、
「言って い る 意味が 分かりま せ ん」シドロモドロした幼児のように叫ぶ。
瑠衣は笑って、かいつまんで説明する。
「わたしやなおちんは、一人でいるのはいやだけれど、小沢さんはそうではないのかも。わたしもひなちっちも、なおちんがいてくれると心が安らぐから、一緒にいよう?」
「でもそれって、わたしが 下の カーストだから 安心するって こと でしょう?」
渋い顔を崩さない奈緒を見て、困った顔をした彼女が答える。
「うーん。なおちんがわたしたちに噛みついてこないっていう安心感があるから、違うっていったらうそになるけどぉ。人畜無害ななおちんがいるおかげで場が和むって言い方もできるよぉ。探り合いや仕掛け合いが必要ないから。なおちんがいるっていう共通認識があるおかげで、わたしもひなちっちも共闘できるんだと思う。
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