FRIENDS

緒方宗谷

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二年生の一学期

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 橋を渡りきると左右に道が伸びていたので、道の先を交互に見やって瑠衣が訊いた。
「どっちから行くぅ?」
「左から。一周回る」
 弁財天様の赤い社がある小島を通り過ぎると、階段の上にある休憩所手前で、奈緒が言った。
「さくら、きれいだね。ソメイヨシノだけじゃ ないのかな? ふさふさのもある。もう少し早く来れば、散ってなくて きれいだった?」
「知らない。見に来てないもん」
「なんで? もったいない」
 階段を上って休憩所に足を踏み入れた奈緒がベンチに座ると、隣に腰かけた瑠衣が、三つ編みとダイヤモンド柄のニットについた水雫を払いながら、すぐに口を開く。
「さっきの話の続きになるけどぉ、クラスには、いろんなグループがあってコミュがあるでしょぉ。それからあぶれるのが怖いから、誰かいじめる対象を見つけて、その子を生贄にするの。そういう存在がいないとー、いつ自分がいじめの対象になるか分からないじゃなぁい? その不安を払しょくするために、小沢さんが必要なんだよ。わたしたちは小沢さんとは違う、だからわたしたちもみんなと一緒だよねっていう安心感が得られる。誰が生贄なのか自分が生贄なのか、どういう儀式があるのか分からないと、どうしていいか分からなくて不安が続くでしょう? でも、対象は小沢さん、理由は不良って定義してしまえば、対処方法が明確になる。だから、こうしていれば安心って方法が見つかる。自分たちが安全でいるために、暗黙の了解で小沢さんを生贄にしたんだよ」
 奈緒は愕然とした。
「南ちゃん、かわいそう」
「そうかなぁ? 小沢さんはぴくりとも反応しないよぉ。精神力がすごく強いんだろうねぇ。本当にいじめに発展してもおかしくないくらいなのに、みんなじゃ腕力で勝てないから、無視しているだけにとどまってる。小沢さんは凛としてるから、放っておいても大丈夫だと思うよぉ。孤立しても、カーストの段々を転げて落ちていかないよねぇ、きっとぉ」
「でも時々仲いい時もあるよ。卓球クラブの時がそうだった」
「だから、真相なんてそんなものよぉ。どうでもいいの。その時の雰囲気というかぁ、場の空気でいくらでも正しいことはすり替わってしまうのねぇ。小沢さんが加わって不良と交わるってレッテルと、みんなが卓球している時にそこから抜けたっていうレッテルと、小沢さんを入れないことにしてもめたっていうレッテルとを天秤にかけた時に、一番つまはじきにされないというか、言い訳がたつ選択ってぇ、一緒に卓球することなんじゃなぁい? だから仲良くなったんだよ、その時だけ」




流川琉依
作画:緒方宗谷&イラストAI
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