FRIENDS

緒方宗谷

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二年生の一学期

🐟

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 絵を挟んだ向かいに座った瑠衣が見守る中で奈緒は、はがきの真ん中に描いた逆『く』の字の鯉の左横に、黒い墨汁で『なま』と書いて、右横に『こ』と書く。
 瑠衣が吹き出す。
「なんだぁ、けっきょくなまこじゃなーい」
「あれ? なんて書いたこれ?」
「なまこ」
「こいって書いた」
「一文字多いよ」
「もうだめだぁ、わたし」がっくしと肩を落としてしょげると、「今日はおしまい」と身を起こす。
 続けて奈緒は、筆をポケットティッシュでぬぐって竹の筆巻きで包み、紙パレットをくちゃくちゃに丸めて水切り袋に入れ、広げた新聞紙と黒い毛氈をかたす。それが終わると、注目を促すような表情で瑠衣に微笑みかけた。
「お散歩しよう」
 二人は、木の手すりに囲われた土の遊歩道を抜けて、水辺に沿って伸びる木板を敷いた道を歩きながら、まっすぐと伸びる蒲の葉が生い茂った水辺を眺める。会話は無く、なにか話題を探している様子だ。
 トイレのそばの菖蒲の園路を抜けて橋を渡っている最中、中央付近で池に浮かぶ数台のボートを指さした奈緒が叫ぶ。
「あら、スワンボート。見て、白鳥のやつがいる」
 はしゃいで指さすほうを瑠衣が見やると、そこには白鳥のボートが、三台浮かぶ天井つきボートの中に一台だけ紛れて遊覧している。
 しばらく立ち止まって眺めていた奈緒が言葉をこぼす。
「わたし、どうしたらいいんだろ。いろんなところで南ちゃんのうわさを聞くの。二年生じゃない人からも。みんな怖がって、南ちゃんが一人になっちゃうよって心配したら、クラブでは仲良くピンポンピンポンしてる。わたしがいらない心配だから かなぁ」
 表情を作らず淡々とした口調で瑠衣が答える。
「結局のところ、小沢さんがバイク盗んだとか不良と付き合っているとか、本当のことなの?」
 瞳を見つめて一瞬黙りこくった奈緒は、あからさまに視線をそらして「さぁ」と首を傾げる。瑠衣はその後も根掘り葉掘り質問攻めにしてきたが、障がいの影響で支離滅裂なことしか言えないといった口調で返し、全てに知らぬ存ぜぬを押し通す。



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