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一年生の三学期
第九十七話 一年生大会決勝戦
しおりを挟む敵味方の緊張が溶け合って、体育館の空気を重くしていた。
「高木、速攻」南が活を入れる。
だが春樹は、ゴール下には入れずパスを回した。フロントコートでの一進一退。
「高木がいいところにいるんだから、パスしてスリーポイントしなきゃ」
南の言葉を否定して、心愛が考察を述べる。
「マークされてる。高木君のスリーポイント警戒されてるんだよ」
続けて味方の位置と敵のフォーメーションを解説された南は、半信半疑ながらも納得したように黙り込んだ。だが、隣で二人のやり取りを聞いていた奈緒は、ちんぷんかんぷんな様子。
関係者やみんなが時計を見る。場外でストップウォッチを見ていた女の人が、ホイッスルを咥えた。
「ああっ」
悲鳴と歓声が入り乱れる。
「取られた!」南が叫んで腰を浮かし、ボールを目で追う。
ひだまりを応援する人たちの悲鳴がため息に変わった。だがその瞬間、みんなの息が止まる。
相手のパスを春樹がカットして、敵陣に攻め込む。開いた反対側にパスを出して強引にカットイン。
「高木」「高木君」「春樹君」三人が声を揃えた。
パスを返された春樹が、一瞬スタンド席を見上げる。奈緒は一生懸命手を振った。
選手も見学者も一斉に春樹を見る。ドリブルでゴール下まで強引に体をねじ込む。放ったシュートが、ディフェンスにはじかれた。
彼はすぐさまボールを追うが、その足が限界を迎えているのは、遠くからでも見て取れた。それでもすさまじい気迫を見せてボールに追いすがり、再びゴール下を目指す。
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