FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の三学期

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 どっと笑いが起こる中で、南が梨花に箱を持った右手を持ち上げた。
「ありがと。でもそもそも論でたんない。レギュラーだけでも二人余る」
 突然、奈緒が割って入った。
「シュー買うの忘れた」
「買ったよ」と南が小分けにしてもらった小さな箱を掲げる。
「心愛ちゃんが渡してあげて。南 ちゃん は、ボールを玉なんて 言うやつ だから」
 南からケーキの箱を奪い取って優しく心愛に渡す奈緒を恨みがましく見やりるいがぐり頭の少女が、しかめっ面で頬を膨らませた。
「なに、一月の発言覚えてるの? それでさっきシュー買ったの忘れるって、どうなってんの?」
「こうなってんの」
 顎をしゃくった奈緒が、開き直った様子で答えるそのさまが可笑しくて、みんなが笑い声をあげる。その波の中を漂うようにして、誰も気がつかぬうちに心愛が春樹に歩み寄った。白い瑪瑙のような頬が、うっすらと桃色に染まっている。
「高木君、これみんなから差し入れ。がんばってね」
「ありがとう。マジ嬉しい。これで優勝確実」
 照れ笑いを浮かべて頬を下げた心愛から視線を外した春樹が、杏奈に言った。
「お、珍しく来てくれたんだな。この一年で応援しに来んの初めてなんじゃね?」
「うん、今日暇だったし、成瀬さんたちがどうしてもっていうから。噂通りやっぱり強いんだね。最初の試合の相手って、いつもベスト4に食い込んでくるような強いチームでしょ。なのに倍以上の点差つけて勝つなんてすごい」
「ああ、88対36。((大きな声じゃ言えないけど、あいつら大したことないよ))。敵はやっぱり不動だけ。俺らと優勝争いするのは絶対あいつらだ。それより、つっちーのやつに杏奈の爪の垢煎じてのませてやりたいよな。なんであいつあっちに行くかなぁ、普段部活に顔出さないくせして」
「まあ、仕方ないよ。中学からの友達が向こうにいるもん。行かないわけにはいかないでしょ」
 一つにまとまれなかった水滴のように孤立して佇む心愛を見やって、奈緒が手を絡ませた。
「心愛ちゃんがバスケに興味あるって。わたしもぽんぽんってして、えいやってしたいから、今度 一緒に 教えてね」
「ああ、いいよ。二人ともバスケ部入んなよ」春樹が答える。
「ううん、入んない。美術部あるし。体動かすと、絵を描くたしになるから。ね、心愛ちゃん」
「うん。スポーツする人って素敵だよね。なんか躍動する姿がかっこいい。女子も男子も」



🏀高木春樹🏀
🍪星野梨花🏀
作画:緒方宗谷
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