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一年生の三学期
第九十一話 荏原区最強と品川区最強
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奈緒は、美味しさを分かち合いたい気持ちが溢れたような笑顔で、さくらのピーナッツをみんなにも振る舞う。
「美味しい」三人が口をそろえた。
続いて、杏奈が言葉を紡ぐ。
「ほんのちょっと塩味が利いていて、桜の花の味がするわね」
その仄かな香りと風味は、みんなの心に少なからずお花見を味合わせてくれたようだったが、しばらくして食べ終わると奈緒がため息をついて、雰囲気を壊した。
「ちょっと足んないから、フレンチドックの出番だ」そう言って包みを開ける。
「うーん、バケットがカリカリしてておい しい。ソーセージがちょっとスパ イス。でもレンチンしたい」
フレンチドックを食べ終わると奈緒は、南に持たせておいたさくらのピーナッツのプラスチックカップを受け取って掲げると、四分の一くらいが残っていることを確認するようにして揺らしながら、横から中をのぞいて微笑んだ。
ふたを閉じてテープで止めなおそうとしているこの子に、杏奈が言った。
「さっきのドック、しっかりとした食べ応えで腹持ちがよさそうだったから、よかったね」
「たんない」
「だろうね、ちっちゃい菓子パンばかり買うから。一個残すし」
南がチクリと一言ちょいの言葉で小突いたのもお構いなしにこの子は、羨ましそうに彼女のツナのおにぎりを見やって、唇を捩じる。
「ほんと。違うフレンチドックがあったから、迷わず買えばよかった」
「やんないよ」
南が聞かれる前に断ると、奈緒の関心をそらせようとするかのように、心愛へと別の話題を振る。
「でも、積年のライバルっていうわりに、不動高校って荏原地区の大会に出てこないよね。けっこうオリジナルの細かいのが開かれているのにさ」
「不動は荏原地区じゃないもの」
首を傾げた奈緒が口を開いた。そして、
「なんで荏原地区? ウケる。荏原地区って 狭いんじゃ ないの?」と言って「ぷぷぷ」と笑う。
欄外:この作品は作者の創作です。
「美味しい」三人が口をそろえた。
続いて、杏奈が言葉を紡ぐ。
「ほんのちょっと塩味が利いていて、桜の花の味がするわね」
その仄かな香りと風味は、みんなの心に少なからずお花見を味合わせてくれたようだったが、しばらくして食べ終わると奈緒がため息をついて、雰囲気を壊した。
「ちょっと足んないから、フレンチドックの出番だ」そう言って包みを開ける。
「うーん、バケットがカリカリしてておい しい。ソーセージがちょっとスパ イス。でもレンチンしたい」
フレンチドックを食べ終わると奈緒は、南に持たせておいたさくらのピーナッツのプラスチックカップを受け取って掲げると、四分の一くらいが残っていることを確認するようにして揺らしながら、横から中をのぞいて微笑んだ。
ふたを閉じてテープで止めなおそうとしているこの子に、杏奈が言った。
「さっきのドック、しっかりとした食べ応えで腹持ちがよさそうだったから、よかったね」
「たんない」
「だろうね、ちっちゃい菓子パンばかり買うから。一個残すし」
南がチクリと一言ちょいの言葉で小突いたのもお構いなしにこの子は、羨ましそうに彼女のツナのおにぎりを見やって、唇を捩じる。
「ほんと。違うフレンチドックがあったから、迷わず買えばよかった」
「やんないよ」
南が聞かれる前に断ると、奈緒の関心をそらせようとするかのように、心愛へと別の話題を振る。
「でも、積年のライバルっていうわりに、不動高校って荏原地区の大会に出てこないよね。けっこうオリジナルの細かいのが開かれているのにさ」
「不動は荏原地区じゃないもの」
首を傾げた奈緒が口を開いた。そして、
「なんで荏原地区? ウケる。荏原地区って 狭いんじゃ ないの?」と言って「ぷぷぷ」と笑う。
欄外:この作品は作者の創作です。
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