FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の三学期

🐿️

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 しばらく二人でああでもないこうでもないと言いあったのち、ようやくぬいぐるみであることが伝わる。
 その会話を聞いていた杏奈が、南を見て言った。
「そういえば、わたしたちもお昼ごはん買っていかないとね。不動高校のそばに食べられるところあるか分からないし」
「そうだね。地図見ると学校の近くにハイソンがあるから、おにぎりとか買っていこうか」
「ツナ食べたい」奈緒が即座に答える。
「奈緒は、たくさんパン買ったんでしょ。炭水化物はもうおあずけ」
 この子は、あからさまにいやな顔をして、「え~?」と不満そうにぶうたれた。
 南がスマホを頼りに、奈緒が来たほうとは逆の道を向く。歩み始めて五分後。健常者の足でなら、ものの一、二分たらずの距離を進んだところで、南が、画面に示された駅と目的地の間に伸びる青い導線を見ながら言った。
「この近くだね」
 言い終わった直後に、桜の花びらが一片[ひとひら]スマホの画面の上に落ちて、思わず三人が顔を上げる。
「て、目の前じゃん不動もハイソンも。灯台下暗しだね」
 驚く南に向かって、杏奈が弱り顔で微笑む。
「なんか違う気もするけど、まあいいっか。それにしても、初めて来る街なのに画面見ながら歩いてきて、桜にも気がつかないなんて、なんか悲しい青春ね」
「そんなことないよ」
 奈緒が、蘭の花が店先に飾らせたガラス張りのお店に目を見張りながら叫ぶ。不動高校の門のわきに植わる、ちらほらと花が咲く二本の桜の木の立ち姿を見やっていた二人が、振り返って視線を向けてきたところに、この子は輝かせた瞳を向け、
「見て、ケーキ屋さん。あとで 入 ろう ね、入 ろう ね」と甘え声でねだる。
「試合が終わって帰る時ね」
 南がそっけなく答えると、そのまま逆トの字のT字路を左折して、ハイソンへと歩を進めた。








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