FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の三学期

🎀

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「意外」と、南が驚く。
「でも行ったことある。子供の頃。倒れてからはない。荏原中延だけで 満喫だから。でも、ぴゅっとやって、よいよいってしてぽんしたら、どうかな? 春樹君なら遠くからぽんだよ。そしたら簡単に点とれるよ」
 首を傾げる杏奈に気がついて見やった奈緒の後頭部に、南が言葉をぶつける。
「話バスケにすげ変わってる?」
「うん」奈緒が再び南に顔を向けた。
「どうだろうね。でも、今年のひだまり強いらしいし、三年のチームでレギュラーに選ばれるほどの高木がいるんだから、大量得点間違いなしだね」
「でも、パン屋のお姉さんが、武蔵小山がすてきですよって教えてくれたから、ここも素敵かもしんない。すてきって言うのも変だけれども」
「商店街の話に戻ってる? 会話も内容も浮気性だなぁ」
 呆れる南に、奈緒が満面の笑みを返した。
「いいよね。だって、こうやって、お友達と楽しくお しゃ べ り しながら、春樹君を応援して、パン 食べられるんだもの」
「ああ、まだ食べちゃダメだよ。お昼にしな」
 取り出したパンを南にエコバックに押し戻されて、奈緒が驚愕した。
「ええー⁉ なんでぇ? わたし幸せなんだよ。いっぱい春樹君応援して、パンとカフェラテ食べて、ケーキ食べて帰るの。楽しかったねってお話し し な が ら。ね、杏奈ちゃん」
 左の令嬢は苦笑いするばかりで、返答しない。
 奈緒が不安に駆られてぼやいた。
「あら~、わたし、なにか間違ったこと言いました?」
 慰めるように南、続けて杏奈が答える。
「ううん、大丈夫だよ」
「幸せだからいいもんね、でもお昼ごはんはお昼に食べましょうね」
 奈緒は、喜びに満ちた様子で表情を明るくし、エコバックに手を入れる。
「それじゃあ、パンはやめる。おやつのバナナ食べる」
 南が呆れた。
「最初におやつ食べるってどういうこと? しかもケーキは?」
「あれはデザートです」
 そう豪語して、奈緒がバナナを頬張った。
 いつの間にか、それぞれのコートサイドに試合をするチームが集まっている。手前のコートは男子の試合が行われ、奥のコートでは女子の試合が行われるようだ。三人がそれに気がついてから間もなく、ホイッスルの音が鳴り響いて、すぐに試合が始まった。






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