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一年生の三学期
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寝ぐせ大爆発でうまいことウルフカットみたくなった後頭部に手を回してそこを撫で、首筋に置いてさすりながら、目の色に後悔らしきものを浮かべて、父親が続ける。
「心配してないわけじゃねーよ。そりゃ行くよ、行きますよ。でも飲むもん飲まねーといけねーだろ? 普通。助けに行くのはやぶさかではないですよ、俺だって。酒さえ買ってきてくれれば、すぐにだって行きますよ」
奈緒が、ほっぺを膨らませる。
「今すぐいかないと、えいえいって 怒るよ。ぱんすか叩いて、こうこうって、こうってやって連れて行き ますよ」
縄でぐるぐるにするジェスチャーを見せると、おじけづいた様子の父親が、言い訳をするように愚痴をこぼした。
「そもそも、南が悪いんだろ、補導されたのは」
すぐに務が答える。
「南さんは、自分は無実だと言っているんですよ」
「そうじゃないよ。あいつ、家の金全部隠しやがった。この間、密かに買っておいた一升瓶も隠しちまいやがってさぁ。いろいろ探したんだけど、どこにもねーでやんの」
「ちゃんと探して! きっとあるからっ」奈緒が励ます。
「探した探した。トイレのタンクも押し入れの中も天井裏も。畳だって全部ひっくり返して探したんだぞ」
「へそくりじゃないんだから、ばかじゃん」わざとではないのだろうが、奈緒が変なイントネーションでつっこむ。
「いや、床下収納があるかもしれないだろ?」
顔をしかめていた奈緒が、なるほどという顔に表情を変え、
「ほんとだ。頭いい」
「だろ」父ちょっと照れる。
務が、申し訳なさそうに申し出た。
「こんなに古いアパートの二階の、しかも畳の下に床下収納なんてありませんよ」
父親は否定せず、「今思うとな、確かにそうだ」腕を組んで二度も頷く。そして、恨み顔で続けた。
「あの野郎ー。南のやつ早く帰って来いよ。通帳とかカードとかどこ隠してんだよ。もうしょうがねーよ、助けに行かない。二、三日豚箱入って、頭冷やせってんだ」
寝ぐせが神業のごとく決まった無造作ヘアをぼりぼりかきながら吐き捨てた。そして、四人に向かって、「しっしっ」と手のひらをぶらつかせて、怫然とした様子で言い放つ。
「さあ、帰った帰った。酒も金も出さないやつに用はねぇよ。俺は酒探しで忙しいんだ。もう帰れ、邪魔してくれんな」
言い終わると、肩が縮こまるほど大きな音を立ててドアを閉める。
四人は、受けた衝撃から生ずる動揺を隠しもしない表情で、その場に立ち尽くして閉ざされたドアを見つめていた。
「心配してないわけじゃねーよ。そりゃ行くよ、行きますよ。でも飲むもん飲まねーといけねーだろ? 普通。助けに行くのはやぶさかではないですよ、俺だって。酒さえ買ってきてくれれば、すぐにだって行きますよ」
奈緒が、ほっぺを膨らませる。
「今すぐいかないと、えいえいって 怒るよ。ぱんすか叩いて、こうこうって、こうってやって連れて行き ますよ」
縄でぐるぐるにするジェスチャーを見せると、おじけづいた様子の父親が、言い訳をするように愚痴をこぼした。
「そもそも、南が悪いんだろ、補導されたのは」
すぐに務が答える。
「南さんは、自分は無実だと言っているんですよ」
「そうじゃないよ。あいつ、家の金全部隠しやがった。この間、密かに買っておいた一升瓶も隠しちまいやがってさぁ。いろいろ探したんだけど、どこにもねーでやんの」
「ちゃんと探して! きっとあるからっ」奈緒が励ます。
「探した探した。トイレのタンクも押し入れの中も天井裏も。畳だって全部ひっくり返して探したんだぞ」
「へそくりじゃないんだから、ばかじゃん」わざとではないのだろうが、奈緒が変なイントネーションでつっこむ。
「いや、床下収納があるかもしれないだろ?」
顔をしかめていた奈緒が、なるほどという顔に表情を変え、
「ほんとだ。頭いい」
「だろ」父ちょっと照れる。
務が、申し訳なさそうに申し出た。
「こんなに古いアパートの二階の、しかも畳の下に床下収納なんてありませんよ」
父親は否定せず、「今思うとな、確かにそうだ」腕を組んで二度も頷く。そして、恨み顔で続けた。
「あの野郎ー。南のやつ早く帰って来いよ。通帳とかカードとかどこ隠してんだよ。もうしょうがねーよ、助けに行かない。二、三日豚箱入って、頭冷やせってんだ」
寝ぐせが神業のごとく決まった無造作ヘアをぼりぼりかきながら吐き捨てた。そして、四人に向かって、「しっしっ」と手のひらをぶらつかせて、怫然とした様子で言い放つ。
「さあ、帰った帰った。酒も金も出さないやつに用はねぇよ。俺は酒探しで忙しいんだ。もう帰れ、邪魔してくれんな」
言い終わると、肩が縮こまるほど大きな音を立ててドアを閉める。
四人は、受けた衝撃から生ずる動揺を隠しもしない表情で、その場に立ち尽くして閉ざされたドアを見つめていた。
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