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一年生の三学期
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反論されないのをいいことに、急にしたり顔になった父親が、にやけながら壁伝いに立ち会がり、一人の女子に迫る。
「それじゃあ、なにちゃんだったっけ?」
「な る せ な お です」
「南の友達だと見込んで、特別ミッションを与える。南を助けるための重要なことだから、心して聞くように」
「はいっ」
「とりあえず、警察に行くためには金が必要だ。だから千円くれ」
「はいっ」
「いや、はいじゃねーだろ、なんに使うんだよ」春樹がつっこんだ。
「わいろとかいろいろだよ」
奈緒が真剣に答えると、
父親が「そうだ」と言って、深々と頷く。
「ほら」
勢いづく奈緒に、春樹がつっけんどんに顎をしゃくる。
「ほらじゃねーよ。なに向こうの肩持ってんだよ。どうせ酒買うだけだろ。しかもくれってなんだよ、普通、貸せだろ」
慌てた父親が、春樹の言葉を遮る。
「ばかやろう。返さなきゃなんねーだろ。アルコール切れてんだよ、見れば分かるだろ早くしてくれ」
彼が奈緒の前に手のひらをずいと差し出すと、それを見た春樹が、反射的に割って入ってこの子を庇う。そして呆れた様子で言葉をこぼした。
「酒飲みてーだけじゃん、やめとけ奈緒」
「そうか、騙されるとこだった。危なかった」
とても不愉快そうな顔で、父親が春樹を熟視する。
「邪魔すんなよ、あと少しだったのに。しかも騙しただなんて人聞きわるい。警察だろ、素面じゃ行けねーだろ、あんなとこ」
杏奈が、信じられないと言いたげな表情を浮かべ、瞳を彼に残したまま顔を微かに背ける。
「娘さんが補導されたんですよ。今警察で怖い思いしているかもしれないのに」
「知るか、そんなこと。どうせ慣れっこだ、気にすんな」
「そんな……父親なのによくもそんなこと」
「それじゃあ、なにちゃんだったっけ?」
「な る せ な お です」
「南の友達だと見込んで、特別ミッションを与える。南を助けるための重要なことだから、心して聞くように」
「はいっ」
「とりあえず、警察に行くためには金が必要だ。だから千円くれ」
「はいっ」
「いや、はいじゃねーだろ、なんに使うんだよ」春樹がつっこんだ。
「わいろとかいろいろだよ」
奈緒が真剣に答えると、
父親が「そうだ」と言って、深々と頷く。
「ほら」
勢いづく奈緒に、春樹がつっけんどんに顎をしゃくる。
「ほらじゃねーよ。なに向こうの肩持ってんだよ。どうせ酒買うだけだろ。しかもくれってなんだよ、普通、貸せだろ」
慌てた父親が、春樹の言葉を遮る。
「ばかやろう。返さなきゃなんねーだろ。アルコール切れてんだよ、見れば分かるだろ早くしてくれ」
彼が奈緒の前に手のひらをずいと差し出すと、それを見た春樹が、反射的に割って入ってこの子を庇う。そして呆れた様子で言葉をこぼした。
「酒飲みてーだけじゃん、やめとけ奈緒」
「そうか、騙されるとこだった。危なかった」
とても不愉快そうな顔で、父親が春樹を熟視する。
「邪魔すんなよ、あと少しだったのに。しかも騙しただなんて人聞きわるい。警察だろ、素面じゃ行けねーだろ、あんなとこ」
杏奈が、信じられないと言いたげな表情を浮かべ、瞳を彼に残したまま顔を微かに背ける。
「娘さんが補導されたんですよ。今警察で怖い思いしているかもしれないのに」
「知るか、そんなこと。どうせ慣れっこだ、気にすんな」
「そんな……父親なのによくもそんなこと」
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