FRIENDS

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
234 / 473
一年生の三学期

🍭

しおりを挟む
 どうも信じられない様子の春樹の袖を引っ張って、奈緒は公園を出る。それから彼の指示を待って、中二さくらひろば、うるおい公園を見て回った。

 □□□

 一段落して、図書館の前に横たわる文化通りに面した小さな公園のベンチで、奈緒は休んでいた。その横には、背もたれに右腕を引っかけて両足を大の字に放り出し、白、赭、鳩羽の三色からなるレンガがモザイク状に敷き詰められた小さくてまあるい公園の全容をぼんやりと見つめながら、スマホで務と話す春樹にが座っている。
「ああ、奈緒が最初に見たっていう公園に行ってみたけどいなかった。他に不良がいたっていう場所から近い公園に行って、いま――なんだここ、うるおい公園ってところにいる。奈緒が言うには、なんか近くに図書館があるらしい。
 ――うん。うん。手掛かりなし。そっちは?――だな。そのパピポンってのが、なに言ってるか分かれば、またヒントになるかも知んねーけど。……うん、分かった」
 春樹が電話を切って、奈緒に黒星を向ける。
「これから来るって。向こうも手掛かりなし。こんな住宅街のど真ん中にある公園じゃ、奈緒の言うようなあからさまな不良がいたら目立つだろうな。原付盗むような奴らなら、もうバックレてんじゃね?」
 奈緒は変な目で春樹を見る。
「そのパピポンってなに? パピポンじゃないよ。わたしパピポンって言ったけど、そんなんじゃないから。もう、わたしが言ったことなんて あてにしているから 見つからないのよ。春樹君なんて変なやつ。 ぷんだ」
「すげー言いようだな、ほんと。部長思い出した。ほんと気の毒。てかお前、よく今まで生きてこられたな。倒れる前がどんなだったか知りてーよ」
「こんだだわよーだ。いーだ」
 奈緒は、春樹がそばのななまーとで買ってきたアクアスウェット[スポーツ飲料]のペットボトルを渡されて、パピポンのことを忘れるまで、延々とぷんすか怒り続けた。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

家政婦さんは同級生のメイド女子高生

coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。

ながしょー
青春
 ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。  このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

タカラジェンヌへの軌跡

赤井ちひろ
青春
私立桜城下高校に通う高校一年生、南條さくら 夢はでっかく宝塚! 中学時代は演劇コンクールで助演女優賞もとるほどの力を持っている。 でも彼女には決定的な欠陥が 受験期間高校三年までの残ります三年。必死にレッスンに励むさくらに運命の女神は微笑むのか。 限られた時間の中で夢を追う少女たちを書いた青春小説。 脇を囲む教師たちと高校生の物語。

処理中です...