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緒方宗谷

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一年生の三学期

🐿️

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 交差点の右の信号が青に変わるのを待っている最中に、春樹がスマホで地図アプリを見ながら作戦を練る。
「たぶんあの二人は、平塚公園に行ったんだな。俺たちはとりあえず、一番近い中延公園から見に行こう」
 奈緒の歩速に合わせて歩む春樹はいやな顔一つせず、走っても時速五キロ程度のこの子とともに公園を目指す。そして、バスケ部で鍛えられた彼の俊足ならば、この周辺の公園をいくつも回れる時間を経て、ようやく一つ目の公園に辿り着いた。
 敷地に入ると、打ち守ってくれていた春樹は奈緒から目を離し、タイルと土の境目まで行って全体を遠望する。
「人っ子一人いないな」
「ここじゃないかも。前はみ たらい さんちの近くの公園。あと、道」
「うん。御手洗さんが誰だか分かんねーし、道って、そこらじゅう道」
「ええー、じゃあ分からないよ。どうするー?」
「とりあえず、公園回ろう」
「わたし知らない。ここも初めてだから、もう迷子だ。どうしよう、帰れない」
「地図アプリがあるから心配すんな。次行こう」
 春樹にそう促されて、一緒にスマホをのぞき込んだ奈緒が顎に指を添える。
「じゃあ今度は、こうきてこうきてこうきて…しようかな? ちがうかな?」顔を上げて提案し、首を傾げた。
 すると、お守役の彼が「いいよそれで」と適当にあしらって、たいそうな荷物を抱えながら先導開始。軽快なデニムワイシャツ姿の涼しそうな奈緒が、弾むように走り出す。
 空が急速に茜色へと染まり始める。暦の上ではすでに春であるとはいえ、二月の初旬はまだ日没が早い。焦りばかりが募る中、二人は次に、西中延公園へと走る。
 道に迷いながらも奈緒の知る道を見つけて、ようやく目的地にたどり着いた。
「前は 外の道に いたの。バイクに乗ってておしゃべり してた」
「そういえば、どんな女子だったの?」
「なんか、鬼のような二人。一人は“ぱんつパーマ”で、腐ったような十円玉の色した髪してた。もう 一人は、妖怪みたいに髪長くして、とがったナイフみたいなや つ。いろんなもの傷つけてきたんだよきっと、人 生 で」
 奈緒は真剣なまなざしで伝えるが、春樹は話を聞いて吹き出す。
「なんだよそれ、なんかの歌みたいだな」
「二人ともスケバンだった」
「現実にいんのか? そんなやつ」
「うん、いた。この目で見たもん」




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