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一年生の三学期
第七十四話 対決
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入り口には、少年課と書いてあった。
十五分程度寝入っていた奈緒が意識を取り戻してから通された部屋はとても広くて、職員室のように机が並んだ殺風景な場所だった。
取り巻いていた制服姿の警察官はいなくなって、代わりにワイシャツと薄い黄土色のスラックス姿の七三分けをした中年が、四人を案内する。
「おう。で、なんなの?」男が唸る。
通された席に座っていた彼は、膨らんだ腹に両手をのせて背もたれに寄りかかってこちらを見ていた。威圧的なその態度に、一同黙り込む。
男は、ごぼうの種のような形をしたひとえの目を瞬きもさせずに返答を待つが、すぐに業を煮やした様子で声を荒げる。
「忙しいんだよ、こっちはね。聴取だってまだ終わっていないし、いろいろと確認したり取り調べなきゃならんことがあるんだよ」
淡々とした口ぶりだが、一句一句に凄みが感じられる。
奈緒が勇気を振り絞るように胸を張って、睨み返すような双眸で口を開いた。
「南ちゃんに会わせてください」すぐに目をそらす。
「彼女はね、原付を盗んだ容疑がかかってんの。おいそれと会わせらんないよ」
「でも、違うって言ってました。それなのに無理やり逮捕して。それじゃあ警察に言いますよ」
面食らった様子の小太り警官は、案内してきた細身の中年警官を見やってから鼻で笑う。そして、薄くなった頭頂部をぽりぽりかいて言った。
「証拠はあんのか? それともないのかい? こんなところまで来て、証拠もなく仕事の邪魔しているっていうんなら、とてもじゃないが許せないよ。君らだって叩けば埃が落ちるんだろう。窃盗犯の仲間なんだからな。調べてもいいんだぞ」
言い終わってねめつけてきた。
四人は縮こまって反論できない。
それを見やって、また鼻で笑った小太り警官は、席を立って背を向けると、少し離れた机に向かう。
すると、白髪の細身警官が口を開く。
「まあ、なんだね、いいもんだね、友達想いっていうのは。みんなやったことは後悔しているんだよ。でもだからといって、無罪放免ってわけにもいかないじゃん? きっちり反省して、罪を償って、もとの生活に戻れるようにしてやらないと。ねぇ」
十五分程度寝入っていた奈緒が意識を取り戻してから通された部屋はとても広くて、職員室のように机が並んだ殺風景な場所だった。
取り巻いていた制服姿の警察官はいなくなって、代わりにワイシャツと薄い黄土色のスラックス姿の七三分けをした中年が、四人を案内する。
「おう。で、なんなの?」男が唸る。
通された席に座っていた彼は、膨らんだ腹に両手をのせて背もたれに寄りかかってこちらを見ていた。威圧的なその態度に、一同黙り込む。
男は、ごぼうの種のような形をしたひとえの目を瞬きもさせずに返答を待つが、すぐに業を煮やした様子で声を荒げる。
「忙しいんだよ、こっちはね。聴取だってまだ終わっていないし、いろいろと確認したり取り調べなきゃならんことがあるんだよ」
淡々とした口ぶりだが、一句一句に凄みが感じられる。
奈緒が勇気を振り絞るように胸を張って、睨み返すような双眸で口を開いた。
「南ちゃんに会わせてください」すぐに目をそらす。
「彼女はね、原付を盗んだ容疑がかかってんの。おいそれと会わせらんないよ」
「でも、違うって言ってました。それなのに無理やり逮捕して。それじゃあ警察に言いますよ」
面食らった様子の小太り警官は、案内してきた細身の中年警官を見やってから鼻で笑う。そして、薄くなった頭頂部をぽりぽりかいて言った。
「証拠はあんのか? それともないのかい? こんなところまで来て、証拠もなく仕事の邪魔しているっていうんなら、とてもじゃないが許せないよ。君らだって叩けば埃が落ちるんだろう。窃盗犯の仲間なんだからな。調べてもいいんだぞ」
言い終わってねめつけてきた。
四人は縮こまって反論できない。
それを見やって、また鼻で笑った小太り警官は、席を立って背を向けると、少し離れた机に向かう。
すると、白髪の細身警官が口を開く。
「まあ、なんだね、いいもんだね、友達想いっていうのは。みんなやったことは後悔しているんだよ。でもだからといって、無罪放免ってわけにもいかないじゃん? きっちり反省して、罪を償って、もとの生活に戻れるようにしてやらないと。ねぇ」
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