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一年生の三学期
第七十二話 受付の壁
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三十分くらいして、初めに到着したのは、灰色のパーカーにカジュアルなジャケット姿の春樹だった。走って来たようなのに、全く息が上がっていない。
「お待たせ。なにがあった、南はどうした?」
「分から ない。でも いつまでも 出てこないから、この中にいると お も う。分からないけど」
いろいろと要領を得ない説明を繰り返しているところに、務と杏奈が駆けつける。二人は、いつも学校に着てくるダッフルコートを着ていた。
話が見えない様子の春樹が分かる範囲で説明すると、大体の事情を呑み込んでいた務が言った。
「理由は分からないけれど、小沢さんが警察に補導されて、今この警察署にいるみたいだね。成瀬さんは、ここに小沢さんがいる確証はないらしいけど、パトカーに乗せられて連れていかれたっていうんだから、ここで間違いないと思う。管轄とかあるし」
彼が建物を見上げると、杏奈が躊躇した様子で口を開く。
「え……、でもなにか悪いことしないと、そんなことにならないよね。少し様子見たほうがいいんじゃないの?」
「わたしやってないって言ってた」奈緒が反駁するように言う。
春樹がジャケットのポケットに両手を入れて、訊くように務を見る。
「まあ、どういう事情にしても、その内容を確認しないことには、手だてを考えようもないよな。ちょうどここまで来たんだから、訊くだけ訊いたほうがよくないか?」
「警察に?」杏奈が驚く。「それ、まずくない? わたしたちまで疑われたら大変だよ。高木君なんて、バスケ部どうするの? 変に大ごとになって大会とかにも影響出たらどうするの?」
「う……」春樹が口ごもる。
彼女が続けた。
「務君だってそうだよ。学校の内申が悪くなるし、大学の心象にだって影響出るよ」
務も言葉を返せず、表情から見る見る間に水気が失われ、萎れた朝顔のようにうなだれる。
全体の雰囲気が、帰ろうか、と言いたげに変わったのを感じ取ってか、奈緒が「ええ~、そんなぁ」と不平をこぼす。
「成瀬さんだって、学業に影響すると思う。ただでさえ、学校の勉強やテストで先生たちに協力してもらっているのに、変なことに関わっちゃったら、先生たちの協力を得られなくなっちゃうかもだよ。成瀬さんが頑張っているから、みんな協力してくれているのに、裏では悪いことしてたんだって思われたら、だれもかばってくれなくなっちゃう。小沢さんを思う気持ちは分かるし、わたしたちも同じ気持ちだけれど、今下手に動いて成瀬さんに迷惑が降りかかったら、小沢さんも傷つくと思うよ。そうだほら、わたしが小沢さんのご家族に頼んで、どういう状況か聞きだしてみる。そうしたら安心できるでしょ。成瀬さんの言う通り、小沢さんが無実なら、うちのお母さんが協力してくれると思うから」
「お待たせ。なにがあった、南はどうした?」
「分から ない。でも いつまでも 出てこないから、この中にいると お も う。分からないけど」
いろいろと要領を得ない説明を繰り返しているところに、務と杏奈が駆けつける。二人は、いつも学校に着てくるダッフルコートを着ていた。
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「理由は分からないけれど、小沢さんが警察に補導されて、今この警察署にいるみたいだね。成瀬さんは、ここに小沢さんがいる確証はないらしいけど、パトカーに乗せられて連れていかれたっていうんだから、ここで間違いないと思う。管轄とかあるし」
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「まあ、どういう事情にしても、その内容を確認しないことには、手だてを考えようもないよな。ちょうどここまで来たんだから、訊くだけ訊いたほうがよくないか?」
「警察に?」杏奈が驚く。「それ、まずくない? わたしたちまで疑われたら大変だよ。高木君なんて、バスケ部どうするの? 変に大ごとになって大会とかにも影響出たらどうするの?」
「う……」春樹が口ごもる。
彼女が続けた。
「務君だってそうだよ。学校の内申が悪くなるし、大学の心象にだって影響出るよ」
務も言葉を返せず、表情から見る見る間に水気が失われ、萎れた朝顔のようにうなだれる。
全体の雰囲気が、帰ろうか、と言いたげに変わったのを感じ取ってか、奈緒が「ええ~、そんなぁ」と不平をこぼす。
「成瀬さんだって、学業に影響すると思う。ただでさえ、学校の勉強やテストで先生たちに協力してもらっているのに、変なことに関わっちゃったら、先生たちの協力を得られなくなっちゃうかもだよ。成瀬さんが頑張っているから、みんな協力してくれているのに、裏では悪いことしてたんだって思われたら、だれもかばってくれなくなっちゃう。小沢さんを思う気持ちは分かるし、わたしたちも同じ気持ちだけれど、今下手に動いて成瀬さんに迷惑が降りかかったら、小沢さんも傷つくと思うよ。そうだほら、わたしが小沢さんのご家族に頼んで、どういう状況か聞きだしてみる。そうしたら安心できるでしょ。成瀬さんの言う通り、小沢さんが無実なら、うちのお母さんが協力してくれると思うから」
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