211 / 835
一年生の三学期
❄️
しおりを挟む
奈緒が声のする右のほうを向くと、そこには同じ学校のブレザーを着た女子がいた。耳が隠れるくらいのボブで黒髪に色白。ひとえでつぶらな瞳は黒目がち。線が細くておとなしい、まるですずらんのように可愛い子だ。
「えっと」奈緒が考える。
「わたし、小山内。小山内心愛、B組の」人見知りするような態度で弱々しい声を発する。まるで、虫の音のようだ。
「こ こ あちゃん、こん にちは。はじめ まして」
「うふふ、初めてじゃないけどね」
「ああ~、もうだめだぁ」
奈緒がへたれるのを見て、南が「まあ、なんとかなるよ」と励まし、続けて言った。
「そういえば、なんでわたしたち制服? 休みなのに学校に来るっていうと、なぜか制服着ちゃう」
「確かにそうだよね」と三人は笑う。
奈緒が自慢げに心愛に言った。
「わたしたちの ひ だ ま り 高 校が 赤で、きょく きょく、 、 、じ つ 学園が 青のユニフォーム」
「うん、知ってる」心愛が笑う。
「みんな知ってる」と南が言うと、奈緒は「なんで?」と訊いた。
「だって応援してるんだから」
「へー、そう」この子は正面を向いて不満そうに答える。
南と心愛は、この子の頭越しに顔を見合わせて苦笑いをした。
間もなく、東京都高校バスケ新人戦大会の五位から八位決定戦後半戦が始まる。きゃぴきゃぴはしゃぐ奈緒を見やって、南が疑問を呈する。
「さっきから思ってたんだけど、奈緒、ルール分かるの?」
「わかんない。南ちゃんは?」
「分かるよ、歩いちゃいけないの。あと、リングに玉入れんの」
「玉って……」心愛が呆れる。
「いなかもの」奈緒が笑う。
いがぐりの先がムスッとしたのが、鼻息で分かった。
そんなこんなで試合が始まる。
開始から早々、ひだまり高校の選手は、マンツーマンでがっちりとガードされ続けた。旭日学園は個人プレイが得意で、ひだまり選手が石のように固めたガードの合間を速やかに縫い進む。
「えっと」奈緒が考える。
「わたし、小山内。小山内心愛、B組の」人見知りするような態度で弱々しい声を発する。まるで、虫の音のようだ。
「こ こ あちゃん、こん にちは。はじめ まして」
「うふふ、初めてじゃないけどね」
「ああ~、もうだめだぁ」
奈緒がへたれるのを見て、南が「まあ、なんとかなるよ」と励まし、続けて言った。
「そういえば、なんでわたしたち制服? 休みなのに学校に来るっていうと、なぜか制服着ちゃう」
「確かにそうだよね」と三人は笑う。
奈緒が自慢げに心愛に言った。
「わたしたちの ひ だ ま り 高 校が 赤で、きょく きょく、 、 、じ つ 学園が 青のユニフォーム」
「うん、知ってる」心愛が笑う。
「みんな知ってる」と南が言うと、奈緒は「なんで?」と訊いた。
「だって応援してるんだから」
「へー、そう」この子は正面を向いて不満そうに答える。
南と心愛は、この子の頭越しに顔を見合わせて苦笑いをした。
間もなく、東京都高校バスケ新人戦大会の五位から八位決定戦後半戦が始まる。きゃぴきゃぴはしゃぐ奈緒を見やって、南が疑問を呈する。
「さっきから思ってたんだけど、奈緒、ルール分かるの?」
「わかんない。南ちゃんは?」
「分かるよ、歩いちゃいけないの。あと、リングに玉入れんの」
「玉って……」心愛が呆れる。
「いなかもの」奈緒が笑う。
いがぐりの先がムスッとしたのが、鼻息で分かった。
そんなこんなで試合が始まる。
開始から早々、ひだまり高校の選手は、マンツーマンでがっちりとガードされ続けた。旭日学園は個人プレイが得意で、ひだまり選手が石のように固めたガードの合間を速やかに縫い進む。
0
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
鷹鷲高校執事科
三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。
東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。
物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。
各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。
表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる