206 / 407
一年生の三学期
第六十六話 祭りのあと
しおりを挟む
一月十日の月曜日、奈緒は学校に来るなり、少し遅めの新年のあいさつをみんなと交わした。だが、昨年打ち解けたはずのクラスメイトが帯びていたたこ焼きフィーバーはすでに冷めていて、奈緒に対してそっけなかった。それに加えて、午前中に行われた始業式が終わって教室に戻ると、新年最初の共同作業、席替えが始まったので、後ろの席にいた魚子や暖乃とも離れて、会話の無い関係に逆戻りとなった。
「成瀬さん、これからよろしくね」後ろの席に来た杏奈が言った。
「よろしく お願い し ま す。わ た し は 引き続き、この席でした。杏奈ちゃんは、あみだくじじゃなくて、そばに来てくれて よかった」
「うん。委員長としての職務もあるし、なにかと便利でしょ」
杏奈が席替え前に提案した奈緒のそばに座ると言う申し出が通ったおかげで、この子は孤立しないで済んだ。
お昼を迎えると、すぐに奈緒が後ろを振り返って杏奈に言った。
「一緒にご飯食べてください。おねがいします」
「うん、いいよ。でもさすがに一月は寒いから、屋上はやめようね。どうしようっか。書道教室はもう使えないし」
二人が悩んでいるところに、お弁当と椅子を持ってきた務が助言した。
「ここでいいと思うよ。二人の席合わせれば、飲み物置くくらいはできるだろうし」
そこに、杏奈の後ろの席にいた花が、机を使っていいと申し出てくれた。
「わたし、華道部の部室でいつも食べてるから。これからいつもどうぞ」
そう言うと、迎えに来た別のクラスの華道部部員とともに、教室をあとにした。
その背中にお礼を言った南が、花の椅子を借りて座る。
「渡りに船だね。三席あればじゅうぶん余裕あるよ」
そして気がついて、この子が手にしたキルトの袋をのぞき込む。
「あれ、奈緒のお弁当、サンドイッチじゃないんだ」
「うん。サンドイッチ飽きた」
「だろうね、毎日散々食べ続けたもん。コンビニ変えたって、結局あんまり変わんないから。そばのパン屋さんは、登校時間に開店してないし、ここいら辺に変わり種出すサンドイッチカフェとかもないしね」
「あーあ、杏奈ちゃんちのパン屋さんのそばに学校があればよかったのに」奈緒が嘆く。
「それじゃあ、菓子パンばかりになっちゃうでしょ。どうせ総菜パンは選ばないんだろうし」
「成瀬さん、これからよろしくね」後ろの席に来た杏奈が言った。
「よろしく お願い し ま す。わ た し は 引き続き、この席でした。杏奈ちゃんは、あみだくじじゃなくて、そばに来てくれて よかった」
「うん。委員長としての職務もあるし、なにかと便利でしょ」
杏奈が席替え前に提案した奈緒のそばに座ると言う申し出が通ったおかげで、この子は孤立しないで済んだ。
お昼を迎えると、すぐに奈緒が後ろを振り返って杏奈に言った。
「一緒にご飯食べてください。おねがいします」
「うん、いいよ。でもさすがに一月は寒いから、屋上はやめようね。どうしようっか。書道教室はもう使えないし」
二人が悩んでいるところに、お弁当と椅子を持ってきた務が助言した。
「ここでいいと思うよ。二人の席合わせれば、飲み物置くくらいはできるだろうし」
そこに、杏奈の後ろの席にいた花が、机を使っていいと申し出てくれた。
「わたし、華道部の部室でいつも食べてるから。これからいつもどうぞ」
そう言うと、迎えに来た別のクラスの華道部部員とともに、教室をあとにした。
その背中にお礼を言った南が、花の椅子を借りて座る。
「渡りに船だね。三席あればじゅうぶん余裕あるよ」
そして気がついて、この子が手にしたキルトの袋をのぞき込む。
「あれ、奈緒のお弁当、サンドイッチじゃないんだ」
「うん。サンドイッチ飽きた」
「だろうね、毎日散々食べ続けたもん。コンビニ変えたって、結局あんまり変わんないから。そばのパン屋さんは、登校時間に開店してないし、ここいら辺に変わり種出すサンドイッチカフェとかもないしね」
「あーあ、杏奈ちゃんちのパン屋さんのそばに学校があればよかったのに」奈緒が嘆く。
「それじゃあ、菓子パンばかりになっちゃうでしょ。どうせ総菜パンは選ばないんだろうし」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
優秀賞受賞作【スプリンターズ】少女達の駆ける理由
棚丘えりん
青春
(2022/8/31)アルファポリス・第13回ドリーム小説大賞で優秀賞受賞、読者投票2位。
(2022/7/28)エブリスタ新作セレクション(編集部からオススメ作品をご紹介!)に掲載。
女子短距離界に突如として現れた、孤独な天才スプリンター瑠那。
彼女への大敗を切っ掛けに陸上競技を捨てた陽子。
高校入学により偶然再会した二人を中心に、物語は動き出す。
「一人で走るのは寂しいな」
「本気で走るから。本気で追いかけるからさ。勝負しよう」
孤独な中学時代を過ごし、仲間とリレーを知らない瑠那のため。
そして儚くも美しい瑠那の走りを間近で感じるため。
陽子は挫折を乗り越え、再び心を燃やして走り出す。
待ち受けるのは個性豊かなスプリンターズ(短距離選手達)。
彼女達にもまた『駆ける理由』がある。
想いと想いをスピードの世界でぶつけ合う、女子高生達のリレーを中心とした陸上競技の物語。
陸上部って結構メジャーな部活だし(プロスポーツとしてはマイナーだけど)昔やってたよ~って人も多そうですよね。
それなのに何故! どうして!
陸上部、特に短距離を舞台にした小説はこんなにも少ないんでしょうか!
というか少ないどころじゃなく有名作は『一瞬の風になれ』しかないような状況。
嘘だろ~全国の陸上ファンは何を読めばいいんだ。うわーん。
ということで、書き始めました。
陸上競技って、なかなか結構、面白いんですよ。ということが伝われば嬉しいですね。
表紙は荒野羊仔先生(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/520209117)が描いてくれました。
Bグループの少年
櫻井春輝
青春
クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル
諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします!
6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします!
間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。
グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。
グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。
書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。
一例 チーム『スペクター』
↓
チーム『マサムネ』
※イラスト頂きました。夕凪様より。
http://15452.mitemin.net/i192768/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる