FRIENDS

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
205 / 378
一年生の二学期

🎄

しおりを挟む


 箱を眺める奈緒に、南が釘を刺す。
「今開けちゃだめだよ」
「分かってる。食べたらクリスマスのお菓子食べ られ ないじゃない。クッキーとかみんな手作りだよ。“ペイパー”さんたちが“ぼろんてあ”で作ったの。昨日わたしも手伝って焼いたんだよ。去年は、わたしも ケーキを一緒に作った けど、学校に行っていない時だから、“リハリビ”の 一環で。
「なんだ、言ってくれれば、昨日手伝ったのに」南が笑顔で言った。
「あ、忘れてた。エビピラフとからあげあったんだ。それだったら鱈と玉ねぎ食べなくてよかったのに。やだなぁ、お母さん教えて くれないんだもん。わざとだよたぶん。美味しいものは秘密にして、嫌いなものばかり勧めてく る の」
「今度は言いなよ、ちゃんと手伝うから。わたし部外者なのに手伝いもせずお相伴にあずかるなんて、身が引けちゃう」
「ううん。サプライズだから。内緒 でした。鴨志田さんもみんなもいいですよって言ってた か ら 大 丈夫。ほんとは、杏奈ちゃんたちも呼びたかった け ど、塾だって。務君は部活。一月に大会があるって言ってた。ウィップスは、ダンスパーティーだって。いいな、ちょっとうらやましい。だけど、いいんだもんね、こっちはクリスマス会だから、とっても、とっても 楽しいもんねー☆」
「なるほどそれで。わたしが一番暇でよかった。奈緒と過ごせるのは楽しいし」
「あらやだ。わたしはトロトロとしていてのろま だし、言 葉 も 上手く な い の で、一緒に いるのは 大変 でしょう? な の に、あ り が と う」
「そんなふうに思ってないよ。時間に追われない生き方ができていい」
「んーん、そんなことぜんぜーん、もう、あらーって。準備に時間がかかるし、いつも遅刻。でもそんな時は、身体 障がい者だから ご め ん な さいっと謝るの。そ う し た ら 許してくれる。みんなやさしいから。そこがだめなんだねぇ、わたし。ナナちゃんたちに怒られる」
「あの子たちがあほなんだよ。わたしもだけど、障がいのある状況を理解できないから、健常者と同じことを求めちゃう。もっと知るべきなのにね。分かってて調べないわたしもあれだけど」
「でも大変だと思う。障がい者って言っても、いろいろちがうところがだめ だから、わたしも 障害が あるけど、他の人のことは 分から ない。でも何個入ってるん だろう ね。そうだ、どら焼き半分こね。あとで帰りに分けようね」
「話、どら焼きに変わっているのね」
「うん」
 奈緒は、もともとの話を忘れている様子で頷く。
 クリスマス会は、それぞれがグループになって出し物をしたり、みんなで定番のクリスマスソングを歌ったりして、終始和やかに進んだ。この子は、南たちに内緒で練習していたハンドベルをみんなと一緒に披露し、それに加えて、学校で開催された地域交流会で歌った五曲とダンスを披露した。
 学校では見せないほどのはしゃぎようで、親友が向ける視線にも気がつかない様子で、手品や演劇、人形芝居を大いに楽しんだ。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

坊主頭の絆:学校を変えた一歩【シリーズ】

S.H.L
青春
高校生のあかりとユイは、学校を襲う謎の病に立ち向かうため、伝説に基づく古い儀式に従い、坊主頭になる決断をします。この一見小さな行動は、学校全体に大きな影響を与え、生徒や教職員の間で新しい絆と理解を生み出します。 物語は、あかりとユイが学校の秘密を解き明かし、新しい伝統を築く過程を追いながら、彼女たちの内面の成長と変革の旅を描きます。彼女たちの行動は、生徒たちにインスピレーションを与え、更には教師にも影響を及ぼし、伝統的な教育コミュニティに新たな風を吹き込みます。

夏の決意

S.H.L
青春
主人公の遥(はるか)は高校3年生の女子バスケットボール部のキャプテン。部員たちとともに全国大会出場を目指して練習に励んでいたが、ある日、突然のアクシデントによりチームは崩壊の危機に瀕する。そんな中、遥は自らの決意を示すため、坊主頭になることを決意する。この決意はチームを再び一つにまとめるきっかけとなり、仲間たちとの絆を深め、成長していく青春ストーリー。

ハーレムに憧れてたけど僕が欲しいのはヤンデレハーレムじゃない!

いーじーしっくす
青春
 赤坂拓真は漫画やアニメのハーレムという不健全なことに憧れる健全な普通の男子高校生。  しかし、ある日突然目の前に現れたクラスメイトから相談を受けた瞬間から、拓真の学園生活は予想もできない騒動に巻き込まれることになる。  その相談の理由は、【彼氏を女帝にNTRされたからその復讐を手伝って欲しい】とのこと。断ろうとしても断りきれない拓真は渋々手伝うことになったが、実はその女帝〘渡瀬彩音〙は拓真の想い人であった。そして拓真は「そんな訳が無い!」と手伝うふりをしながら彩音の潔白を証明しようとするが……。  証明しようとすればするほど増えていくNTR被害者の女の子達。  そしてなぜかその子達に付きまとわれる拓真の学園生活。 深まる彼女達の共通の【彼氏】の謎。  拓真の想いは届くのか? それとも……。 「ねぇ、拓真。好きって言って?」 「嫌だよ」 「お墓っていくらかしら?」 「なんで!?」  純粋で不純なほっこりラブコメ! ここに開幕!

礼儀と決意:坊主少女の学び【シリーズ】

S.H.L
青春
男まさりでマナーを知らない女子高生の優花が成長する物語

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ネットの友達に会いに行ったら、間違ってべつの美少女と仲良くなった俺のラブコメ

扇 多門丸
青春
 謳歌高校に通う高校2年生の天宮時雨は、高校1年生の3学期、学校をサボり続けたせいで留年しかけた生徒だった。  そんな彼の唯一無二の友人が、ネットの友達のブルームーン。ある日、いつも一緒にゲームをするけれど、顔の知らない友達だったブルームーンから「ちかくの喫茶店にいる」とチャットが来る。会いたいなら、喫茶店にいる人の中から自分を当てたら会ってやる。その提案に乗り、喫茶店へと走り、きれいな黒髪ストレートの美少女か?と聞いた。しかし、ブルームーンからは「違う」と否定され、すれ違ってしまった。  ブルームーンが黒髪の美少女だという推測を捨てきれずに過ごしていたとき、学校の使われていない音楽室でピアノを弾いている、そいつの姿を見つけた。

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

処理中です...