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一年生の二学期
🎄
しおりを挟む箱を眺める奈緒に、南が釘を刺す。
「今開けちゃだめだよ」
「分かってる。食べたらクリスマスのお菓子食べ られ ないじゃない。クッキーとかみんな手作りだよ。“ペイパー”さんたちが“ぼろんてあ”で作ったの。昨日わたしも手伝って焼いたんだよ。去年は、わたしも ケーキを一緒に作った けど、学校に行っていない時だから、“リハリビ”の 一環で。
「なんだ、言ってくれれば、昨日手伝ったのに」南が笑顔で言った。
「あ、忘れてた。エビピラフとからあげあったんだ。それだったら鱈と玉ねぎ食べなくてよかったのに。やだなぁ、お母さん教えて くれないんだもん。わざとだよたぶん。美味しいものは秘密にして、嫌いなものばかり勧めてく る の」
「今度は言いなよ、ちゃんと手伝うから。わたし部外者なのに手伝いもせずお相伴にあずかるなんて、身が引けちゃう」
「ううん。サプライズだから。内緒 でした。鴨志田さんもみんなもいいですよって言ってた か ら 大 丈夫。ほんとは、杏奈ちゃんたちも呼びたかった け ど、塾だって。務君は部活。一月に大会があるって言ってた。ウィップスは、ダンスパーティーだって。いいな、ちょっとうらやましい。だけど、いいんだもんね、こっちはクリスマス会だから、とっても、とっても 楽しいもんねー☆」
「なるほどそれで。わたしが一番暇でよかった。奈緒と過ごせるのは楽しいし」
「あらやだ。わたしはトロトロとしていてのろま だし、言 葉 も 上手く な い の で、一緒に いるのは 大変 でしょう? な の に、あ り が と う」
「そんなふうに思ってないよ。時間に追われない生き方ができていい」
「んーん、そんなことぜんぜーん、もう、あらーって。準備に時間がかかるし、いつも遅刻。でもそんな時は、身体 障がい者だから ご め ん な さいっと謝るの。そ う し た ら 許してくれる。みんなやさしいから。そこがだめなんだねぇ、わたし。ナナちゃんたちに怒られる」
「あの子たちがあほなんだよ。わたしもだけど、障がいのある状況を理解できないから、健常者と同じことを求めちゃう。もっと知るべきなのにね。分かってて調べないわたしもあれだけど」
「でも大変だと思う。障がい者って言っても、いろいろちがうところがだめ だから、わたしも 障害が あるけど、他の人のことは 分から ない。でも何個入ってるん だろう ね。そうだ、どら焼き半分こね。あとで帰りに分けようね」
「話、どら焼きに変わっているのね」
「うん」
奈緒は、もともとの話を忘れている様子で頷く。
クリスマス会は、それぞれがグループになって出し物をしたり、みんなで定番のクリスマスソングを歌ったりして、終始和やかに進んだ。この子は、南たちに内緒で練習していたハンドベルをみんなと一緒に披露し、それに加えて、学校で開催された地域交流会で歌った五曲とダンスを披露した。
学校では見せないほどのはしゃぎようで、親友が向ける視線にも気がつかない様子で、手品や演劇、人形芝居を大いに楽しんだ。
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