FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

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「マジ? 萌音に理沙じゃん。信じらんない。ほんと、久しぶりしゃん」
 南も声を上げると、スクーターにまたがっていた新しい十円玉色した髪の女の子が振り向いて、びっくりした様子で青いスカジャンに包まれた左腕を大きく振る。
「やだ、なに、南? 久しぶりー! てか、なんかハゲてるー」
「ハゲってゆーなよ。ベリーショートだよ」
「えー? そんでなにやってんの? 今」
「女子高生」
「まじー? 入ったんだ高校、制服似合うー」
「遅ればせながら、だけどね。それより変わんないね、背中の闘魚かっこいいじゃん」
「うん。このベタ、気に入っちゃって、今でも着てんの」
 自慢げににんまりすると、顎にかかる昔ながらのソバージュを揺らしながら、背中に施された美しく揺らめくひれを広げて襲い掛からんとする青いベタの刺繍を見せる。続けて、
「南はどうしたの、ダッフルなんて来ちゃって。昇り龍の黒いスカジャンは?」
「うん、とってあるよ。うちにしまってる」
「ふーん、真面目してる」理沙は、少し寂しそうに言った。
 南が、バージンベージュの車体に差し込まれたキーを見やる。そこには、赤いカナダの国旗がプリントされた透明で四角いキーホルダーと、フェルトの塊みたいな小さな緑の怪獣のぬいぐるみがついていた。
 視線を戻すと同時に、ソバージュ少女に語り掛ける。
「それにしても理沙、髪やばいよ。脱色しすぎでしょ。すごい細いよ、乾燥しきっちゃってるし、クモの糸みたいに細いのもあんじゃん。しかも表面ばっかり」
「うるさいなぁ、これがいいんじゃん。いい加減学んでよ。ていうか、南金髪じゃないじゃん、そっちこそどうしたの、その頭」
 理沙が、オン眉ショートバングを持ち上げるように黒目を上げて指摘した。
「ん、ああ、更生した。わたし今まっとうなの」
「ほんと、見た目はまっとうだね。はじめ分からなかったよ。声聞いてもしやって思えた」
 もう一人がそう言って、瞼にかかるフルバング越しに南を品定めするように上から下までなめるように見る。
 そんな彼女の髪に手を伸ばして指の甲で撫でた南が、懐かしさと親しみの混じった微笑を浮かべた。
「それに比べて、萌音のこの髪、本当感動的だよね。なにこのしっとり感。もはや女神じゃん。この艶やかさ、男じゃなくても惚れちゃうよ」
「ほんと」理沙も褒める。「いつもお手入れ余念がないもん」
 キャッキャ、キャッキャ、と飛び跳ねるように騒ぐ三人は、まるで小学生のようだ。南の会話によると、茶髪でソバージュのほうが理沙。しっとり黒髪セミロングのほうが萌音という名前らしい。
 奈緒が恐る恐る見ると、二人とも暗濃紺のセーラー服を着ている。南との仲の良さを考えると、中学の時の同級生で、今は高校生なのだろう。


🛵伊奈波理沙🦋


🪡柏木萌音🦋

作画:緒方宗谷
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