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緒方宗谷

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一年生の二学期

第五十八話 打ち上げ

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 まず初めに、人数分のサラダが運ばれてきた。だがすでに会話が盛り上がっていて、誰も手を付けないままお喋りが続く。それからしばらくすると、ビートの速いラップが流れる中、その曲と同様にとめどなく続く会話にブレイクを与えるがごとく、ランチが運ばれてきた。
 最初に出てきたのは、オムライスだ。
「わっ、なにこのお皿」務が驚く。「形面白い。縁の幅ふと過ぎない? 全体の三分の一くらいあるよ。年輪みたいなラインがあって壮大だな」
「黒曜石みたいできれいね。中央は深皿なんだ」杏奈が付け加える。
 奈緒がうきうきした様子でのぞき込み、口端を引いた。
「こんな絵が描けたらいいなぁって思う。ここがこうこうこうって、こんなになったところを表現できたら、すごい」
 そう言いながら、大地から横溢したばかりのマグマみたいに盛られたオムライスを指でさし示す。
「麦わら帽子をひっくり返したみたいで面白いし、黒いのに黄色と赤に輝いていて 太 陽みたい」
 白く明澄に輝く薄黄色い半熟スクランブルエッグの凹凸に絡むケチャップの赤々としたそのさまが妙に艶々しく、みんなは、食欲をそそられたように見入る。
 続いてカレーが置かれると、春樹が訊いた。
「奈緒は、ここの料理でなにが一番美味しいと思うの?」
「分かんない。オムライスしか食べないから。ケーキは、ショートケーキがい ち ば ん 好き で す」
「意外」と南。「奈緒のことだから、全種類食べているのかと思った。でも考えると、極度な偏食なんだから、当たり前か」
 言いながら、視線を務と春樹の前に落とす。
「カレーライスの器も面白いね。涙型というか、尾のない彗星みたいなかたちしてる。普通に楕円とか丸いお皿とかになりそうなものだけど」
 杏奈が言葉を添える。
「テーブルの大きさも考慮してるのかも。窓際と真ん中の二人席は小さいじゃない? よこながのほうが、お互い邪魔しあわないし、ちょうどいいくらいの窮屈さで団らん感が出るし」
「ああ、居酒屋みたいな?」南が笑った。
「行ったことないから、分からないけど」
「のんべぇだから」奈緒が割り込むと、「だまらっしゃい」と南が返す。
 杏奈は聞き流して続けた。
「でも、このくらいのテーブルって距離感がいいよね。大きいほうがゆったりしていていいこともあるだろうけれど、少人数の仲間内だけでお食事するには、このくらいのほうがいい。あーあ、ナナたちもくればよかったのに。そしたら、ここ貸し切り状態だよ。ついでに雪でも降ってくれたら、クリームシチューのCMみたいなあったかい雰囲気の中のランチが楽しめたのに」
 みんなは、「それ最高」と口をそろえる。
 最後に、杏奈の魚介とトマトのスープパスタと、南のグラタンが運ばれてきた。













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