FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

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 なかなか座らない南に、奈緒が言った。
「面白い壁でしょ、天井までつながってるの。つながってるって おか しい けど、あれがなくてつるりとつながってる」
「うん、角がない。なんか斬新。夜はお酒もやってるのかな、レジの向こうの棚に、ほら、お酒が並んでる。カフェバーって、高校に入ってから久々に入った。なんかドキドキする」
 黄土色の木板を見上げていた南が、奈緒をキラキラした目で見て、にっこり笑う。
 それに微笑み返したこの子は、上を見上げた。そして、彼女が見上げるのを待ってから言った。
「まーるい縁に四匹のすすだんごがいる。名前 知らない けど、黒いお団子 み た いな 姿の かわいい妖怪が、大きな目玉でこっち見て、なにやらごしょごしょ お は なし している みたいで しょう」と笑う。
「黒ころりんだよ。有名じゃん。奈緒の上の棚にも人形が飾られてるね。はじめは大人のカフェっぽくて緊張したけど、よくよく見るとほんわかあったかくなるお店だね」
「うん、かっこかわいい。ばかぼん、ばぼーん……違うね、ばぼぼん? ばんぼん? みたいな“つおい”お酒が並んでいる から、わいるどな感じだけれど、飾ってある小物がかわいいし、さっぱり。だから、いい心地。ちょっぴり背伸びした子供のおうちみたい」
 黒い壁紙が張られた壁を指さして続ける。
「見て、ストラップにほしい。この小さなぬいぐるみ。ぶらさがってるやつ」
「壁の面積に対して数少ないのが、手作りしました、この飾りつけ、って感じ満載で、とってもいいね。なんとなく心和むよ。気がつかなければ誰もがスルーして済ますところなのに、奈緒はよく気がついてすごいよ」
「えへへ、わたし来ると、いつも見上げてほほ笑むの」
 箱を積み上げたような棚の上にいる黒猫の置物を南が見る。
「自分へのお土産に買っていけそうな、クッキーなんかも並んでいるんだね。しかも結構豊富。あ、すごいよ、ワインセラーまである」
「しかも上見て」
 奈緒は満を持して続ける。
「日本のどこかに住んでるかもしんない、なんか 表情のない“よーかい”、あと、大きなダンゴムシ、赤い目のと青い目のやつ。あと へんなやつ」
 と言って、青と緑の玉虫色に輝くガラスでできた槍先のような三角錐の置物を指さす。
「人類による自然破壊と一週間燃やされた中で生まれたようなやつね」
 納得した感じで返してきた南の言葉を聞いた奈緒は、満足した様子で、メニューを取った。
「ほいじゃ、注文しよう」
 小さなメニューを横に向けて、正面に座る相手にも見やすいように広げた。それを二人でのぞき込む。


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