FRIENDS

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
153 / 477
一年生の二学期

🍭

しおりを挟む
 急に奈緒がひょうきんな声で言って会場に笑みを送ると、ところどころから笑いが起こった。気をよくした様子で話を続ける。
「しいて 言う ならば、ほとんど毎日補習を しています。先生は授業を行って大変なのに、いつも 放課後 勉強を 教えて ください ま す。とても感謝して おります。校長先生も  教頭先生も、わたしの名前を憶えてくれていて、時々 話しかけて くれます。でもわたしは、校長先生と 教頭先生の名前を 憶えていません。ごめんなさい。覚えても すぐに 忘れてしまうので、頑張って また覚えます。先生も お友 達も とてもよくしてくださるので、だんだんと思い描いていた 学園生活が 送れるようになって い ま す。感謝しても しきれません。
 これをお友達に読んで聞かせたら、書けと言われたんでしょう? と 笑われ ました けれど、本当のことですから、いいんです。ありがとうございました。おわり」
 つっかえながらもテキストを見ずに、朗々たる声で朗読をし終えて、深々とお辞儀をする。
 静寂が一転して拍手の渦にのまれてやまなくなった。そんな中で、二人の実行委員がやって来て、一人がマイクをかたし、もう一人が奈緒に無線のヘッドセットマイクを装着させる。それと同時にウィップスが姿を現した。
 三人は、体育館裏にいた時とは違うコーディネート。大人びたさっきまでの印象とは打って変わって、だいぶ幼い感じに見える。
 魚子は、溶けたジュエリーで描かれたようなカラフルなヒップホップ文字が背中にプリントされた、だぶっとした赤いスウェットに灰色のナイロン製ロングパンツで、黒色のスピンキャプ。暖乃は、袖が七分丈でストーンベージュのベースボールシャツに水色のデニムパンツをはいて、黒いフラットキャップ。かおりは、パンダ柄でフルジッパーのパーカーを着て、スウェットでロングのトレーニングパンツを穿いた、上下ボア素材のいでたちで、卵くらいの雪玉みたいな白いシュシュをつけたツインテール。三人とも普段とはだいぶ異なる印象だ。
 イントロが流れ始めると、この三人を従えた奈緒は、満面の笑みで自信たっぷりにバウンズを開始した。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

コロッケを待ちながら

先川(あくと)
青春
放課後の女子高生。 精肉店でコロッケを買い食いする。 コロッケが揚がる間に交わされる何気ない会話から青春は加速していく。

乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ
青春
 見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。 小説家になろうは現在休止中。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

B型の、B型による、B型に困っている人の為の説明書

メカ
エッセイ・ノンフィクション
「あいつB型っしょ、まじ分からん。」 「やっぱ!?B型でしょ?だと思った。」 「あぁ~、B型ね。」 いやいや、ちょっと待ってくださいよ。 何でもB型で片付けるなよ!? だが、あえて言おう!B型であると!!

GIVEN〜与えられた者〜

菅田刈乃
青春
囲碁棋士になった女の子が『どこでもドア』を作るまでの話。

タカラジェンヌへの軌跡

赤井ちひろ
青春
私立桜城下高校に通う高校一年生、南條さくら 夢はでっかく宝塚! 中学時代は演劇コンクールで助演女優賞もとるほどの力を持っている。 でも彼女には決定的な欠陥が 受験期間高校三年までの残ります三年。必死にレッスンに励むさくらに運命の女神は微笑むのか。 限られた時間の中で夢を追う少女たちを書いた青春小説。 脇を囲む教師たちと高校生の物語。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...