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一年生の二学期
第四十七話 地域交流会
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「成瀬、その恰好」
魚子の少し驚いたような声が、体育館裏に響いた。
暖乃とかおりが、奈緒の格好を凝視する。
「おはよう」と声をかけてウィップスのもとにやって来たこの子は、プルオーバーのパーカー姿で、エメラルドグリーンの背中には、有名なブレイクダンスクルーの名前がグラフィティで書かれている。ドロップショルダーで腰がすっぽり覆われていて、馬子にも衣裳というか、少しだらしなく見える可愛い姿。ピンクベージュのボトムスは、七分丈でワイドなカーゴパンツ。
魚子は、表情筋が崩れるのをぐっと堪えるように顔をしかめた。
「似合わねーよ」
そう言って、切れ長の瞳で睨みつけてそっぽを向いて、着ていた黒いロングのベンチコートを脱ぐ。
そんな返答、予期していなかったかのように、一瞬固まる奈緒の表情から色が消えて、マネキンのようになった。瞳にはうっすらと氷が張って、感情を鎮める。形は笑顔なのに無表情に見える。
それから、なんとか気を取り直して言った。
「あらー? ナナちゃん髪型変えた? 金髪が、ち ら ほ ら。ちーらーほーら」
「ああ、昨日ね。それよりその服装どうしたの」
「はらじゅくに行って、地下で買った。迷子になって、荷物の人に訊いたら、連れて くれた。助かった」
「はっ」
「ななちゃん、あらった」
「はぁ? なにを?」あからさまに苛立ち、眉間にしわを寄せる。
「ななちゃんは、あははとあらった」
「あははと笑った」暖乃が無表情で修正を加える。
「あははと あらった」
自分の発音に疑問を感じたのか、首を傾げる。
「あははと、笑った」暖乃がもう一度言った。
「あははと、わらった」
やっと言えた。奈緒は満足げに笑顔をこぼした。
一件落着したところに南が来て、開口一番言い放つ。
「わ、網タイツ。あんた女子高生じゃないだろ」
魚子が眉をしかめ、「女子高生だよ。あんた、年上」つっけんどんに答える。
魚子の少し驚いたような声が、体育館裏に響いた。
暖乃とかおりが、奈緒の格好を凝視する。
「おはよう」と声をかけてウィップスのもとにやって来たこの子は、プルオーバーのパーカー姿で、エメラルドグリーンの背中には、有名なブレイクダンスクルーの名前がグラフィティで書かれている。ドロップショルダーで腰がすっぽり覆われていて、馬子にも衣裳というか、少しだらしなく見える可愛い姿。ピンクベージュのボトムスは、七分丈でワイドなカーゴパンツ。
魚子は、表情筋が崩れるのをぐっと堪えるように顔をしかめた。
「似合わねーよ」
そう言って、切れ長の瞳で睨みつけてそっぽを向いて、着ていた黒いロングのベンチコートを脱ぐ。
そんな返答、予期していなかったかのように、一瞬固まる奈緒の表情から色が消えて、マネキンのようになった。瞳にはうっすらと氷が張って、感情を鎮める。形は笑顔なのに無表情に見える。
それから、なんとか気を取り直して言った。
「あらー? ナナちゃん髪型変えた? 金髪が、ち ら ほ ら。ちーらーほーら」
「ああ、昨日ね。それよりその服装どうしたの」
「はらじゅくに行って、地下で買った。迷子になって、荷物の人に訊いたら、連れて くれた。助かった」
「はっ」
「ななちゃん、あらった」
「はぁ? なにを?」あからさまに苛立ち、眉間にしわを寄せる。
「ななちゃんは、あははとあらった」
「あははと笑った」暖乃が無表情で修正を加える。
「あははと あらった」
自分の発音に疑問を感じたのか、首を傾げる。
「あははと、笑った」暖乃がもう一度言った。
「あははと、わらった」
やっと言えた。奈緒は満足げに笑顔をこぼした。
一件落着したところに南が来て、開口一番言い放つ。
「わ、網タイツ。あんた女子高生じゃないだろ」
魚子が眉をしかめ、「女子高生だよ。あんた、年上」つっけんどんに答える。
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