FRIENDS

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
142 / 189
一年生の二学期

🍭

しおりを挟む
 一瞬、痛みに強張る奈緒の仕草を真に受けて立ち上がろうとした南と務も席に座る。誰もかまってくれないことに気がついたのか、居た堪れない様子でバウンズを再開。しばらくして、雰囲気が常態に戻る。
「振り付けとかしないのかな?」務が言った。
 彼から話しかけられたのは南だったが、彼女が口を開く前に魚子が答える。
「しない。感性で踊る。創作ダンスうんぬんよりも、あくまでブレイクするの。バトルは基本即興だしね。みんなで振り揃えるとか、大人数でユニゾンするとか、フォーメーション見せつけるとか、そういうのはチアとかブラバンとか大人数でやったほうが醍醐味あるよ。それに成瀬は、体操クラブでそういうのやるでしょ。前に言わなかった? 誰に言ったんだっけ? まあいいや。加えて音楽だってDJ次第。どんな時でもどういう状況でも踊れなきゃ。そんな中でウィップスは自分だけのスタイルを確立していく。だからあたしらとやる以上、成瀬には成瀬のバウンズを見せてもらう」
 あひる座りをして、大将のカフェラテを飲んでいた奈緒が、いそいそと立ち上がると、片足を引いて駆けていって言った。
「わたし、あの曲がやりたい」
「なに? なんの曲?」南が訊く。
「わ か ら ない」
 魚子に「歌ってみたら?」と言われて、おもむろに歌い始める。
「おあうおうおおう……うーうーだんろおー」
「あはは、分かんないね」暖乃が笑う。
「でもどうしよっか。四曲だけだもんね」南が暖乃を見やった。
「なにかを削る」
 奈緒一言「あの歌」。
「なに?」暖乃が訊く。
「どれか」
 片手をあげて不毛なやり取りを静止した魚子が思考を巡らせる。
「いや待って。いいよ、削らなくて」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

悪役令嬢になりたいのにヒロイン扱いってどういうことですの!?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:347pt お気に入り:4,977

貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:207,342pt お気に入り:12,439

知らない異世界を生き抜く方法

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:63pt お気に入り:50

王妃となったアンゼリカ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:147,667pt お気に入り:8,141

業の果て

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:306pt お気に入り:0

わたしはお払い箱なのですね? でしたら好きにさせていただきます

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:20,174pt お気に入り:2,452

ロマンドール

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:540pt お気に入り:32

処理中です...