133 / 487
一年生の二学期
🌻
しおりを挟む
「違う!」奈緒がムキになって叫んだ。「なんでそんなこと言うのよ、頑張ってやっていたらくるくる回れるようになれると思ったのに、あーあ、そんなことになっちゃった。あーあー、がっかりだわよ。わたしやりたかったのに、ナナちゃんみたいに逆立ちしたり、ノンちゃんみたくグッてしたり、かおりちゃんみたく、じぇいむすぶらうんしたかったのに、本当にショックで息が止まりそうなんだから、んー、んー。もう、むきーってやって、こうしてやる!」
言い終えるや否や、熊みたいに襲い掛かって、五本の爪で薄い小麦色の肌をむしろうとする。
その手のひらをはたき落としながら、魚子が叫ぶ。
「なんだよ、いきなり。やめて、なによ、そんなふうに思ってたの? あんた」
意外にも力負けして押し倒されそうだ。
たたみかけるように奈緒が叫喚した。
「そうよ! わたしはっ こういうふうに やって い た か ら こうなのっ。こんなわたしだけれど、これがわたしの個性 なんですから、それが分からないなんて、どこ見てるんですかねぇー。この 個性を 評価できないなんてバカ“ばったり”‼」
パンチを出したり手刀を切ったりして不器用に腕を振り回しながら地団駄を踏んで、更に続ける。
「どうして 分からない の? そうやって こうだから こうなんだ からっ。ぷんだっ っっ」
暖乃とかおりは、あっけにとられてみているばかり。
「そうだよ、その意気」南が口角を引いて白い歯を見せる。
止めようともしないで見ていた彼女がそうけしかけて、真夏のひまわりのように笑った。
その瞬間、奈緒は強襲をやめて華光を見る。視界いっぱいの笑顔は正に、舌状花弁をいっぱいに広げた冠状花が光を放っているような満面の笑みだった。彼女が湛えたその笑顔は、奈緒にとてつもなく大きな勇気を与えたようだった。
言い終えるや否や、熊みたいに襲い掛かって、五本の爪で薄い小麦色の肌をむしろうとする。
その手のひらをはたき落としながら、魚子が叫ぶ。
「なんだよ、いきなり。やめて、なによ、そんなふうに思ってたの? あんた」
意外にも力負けして押し倒されそうだ。
たたみかけるように奈緒が叫喚した。
「そうよ! わたしはっ こういうふうに やって い た か ら こうなのっ。こんなわたしだけれど、これがわたしの個性 なんですから、それが分からないなんて、どこ見てるんですかねぇー。この 個性を 評価できないなんてバカ“ばったり”‼」
パンチを出したり手刀を切ったりして不器用に腕を振り回しながら地団駄を踏んで、更に続ける。
「どうして 分からない の? そうやって こうだから こうなんだ からっ。ぷんだっ っっ」
暖乃とかおりは、あっけにとられてみているばかり。
「そうだよ、その意気」南が口角を引いて白い歯を見せる。
止めようともしないで見ていた彼女がそうけしかけて、真夏のひまわりのように笑った。
その瞬間、奈緒は強襲をやめて華光を見る。視界いっぱいの笑顔は正に、舌状花弁をいっぱいに広げた冠状花が光を放っているような満面の笑みだった。彼女が湛えたその笑顔は、奈緒にとてつもなく大きな勇気を与えたようだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。


フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる