FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

🖼️

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 机を運ぶ魚子が口を開いた。
「ストリートダンスはもともとアメリカ発祥で、中でもブレイクダンスは暴力まみれだったギャングの抗争を平和的にダンスで決着つけようって発展してきたものだから、結構挑発するようなふりやポーズ取ったりするんだよ。かおりのダンススタイルは古典的なブレイクダンスだから、普段の身のこなしにもジャスチャーが出てしまうだけで、全然悪い子じゃない。実際あたしら入学して八ヵ月経つけど、素行が悪いなんて話聞かないでしょ。そこ理解してあげてよ、いちいち噛みついてこないでさ」
 暖乃が笑う。
「素行の悪さだったら、小沢だよね。わたしらどんだけからまれてんの? くそやん。狂犬病なんじゃない?」
 奈緒が笑うと、今度は無視せずに暖乃も「あはは」と声を上げた。
「とりあえずやんなよ」
 南が、ムスッとし様子で言うと、魚子が返す。
「やるよ。それより、いつまでいんの。早く帰ってほしいんだけど」
「最後までいるよ、今日暇だし」
「えー⁉」暖乃が叫ぶ。
「三人が奈緒いじめないように監視する」
 南の言葉を聞いて、魚子は小さく「くそっ」と呟いて教師用の机に向かっていって振り向き、奈緒に声をかける。
「動きをまず覚えて。アイソレーションっていって、体の部位ごとに別々に動かすの。ブレイクには、あんまり関係ないかもしれないけど、振り付けをダンスとしてやるために、リズムとれなきゃいけないから、バウンズして」
 そう言いながら、くねくねとした何かが走っていくように体の部分部分を動かす。それを見た奈緒は、感興した様子で真似をした。
 かすかに穂が揺れるようによろめいただけに見えるこの子の動きに、誰もがしらける。かおりはヘッドホンをつけて窓際のパイプ椅子に腰かけ直し、暖乃は、タイヤのついた縦長の鏡を引っ張ってきて、トゥエルとドラムの練習を始めた。
「あーやめやめ」魚子が叫ぶ。「とりあえず、気をつけして。膝少し曲げて。バウンズして。その時肘を曲げてこんなふうにこぶし持ち上げて」
 奈緒がそれを見ながら真似をすると、彼女が「続けて」と指示を飛ばして席に着く。
 この日は、一日それだけで終わった。



🎧️相沢かおり💿️
作画:緒方宗谷&AIイラスト



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