FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

🍭

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 続く魚子の声に、少し攻撃性が滲む。
「そうだよ。先生の言う理由なら、別にわたしらウィップスじゃなくても」
「理由もある」
 岡野先生が、雪崩のように押し寄せる魚子と暖乃の非難をせき止めた。
「お前らダンスうまいだろ。なんでやらんのか分からないけど、ダンス部作らないじゃん。でも職員室では、ここ最近の風潮でダンス部作ろうって話にもなっているのは、お前ら知っているだろ。指導要綱でも、男子は柔道、女子はダンスって書いてあるし。そこでやっぱりお前らの出番。見せつけてやるんだよ。お前らの実力を。ウィップスは存在をアピールできるし、みんなには、ダンスやったらお前らみたくうまくなれるって目標を持たせることもできるし、学校は障がい者福祉にも力を注いているって見せられて、成瀬も青春を謳歌できる。四方良しだろ?」
 誰も損しない提案に、魚子と暖乃は黙るしかなく、頬杖をついていたかおりは外を見た。
 岡野先生は、してやったりと笑って続ける。
「『生きているって素晴らしい』と、『虹色』と、『世界』と、『スズちゃんハルちゃん 推参の歌』をやることにする」
その瞬間、「「「えー?」」」と多くの生徒が一斉に騒ぎ出し、颶風のようなブーイングが起こった。
「なにそれ。全部童謡じゃん」粂川が脂肪に埋もれた首で頭を持ち上げて訊く。
「最後の違うんじゃない?」右隣りの勢野明日香がつっこむ。
 岡野先生が何度も頷いた。
「うん。うちの娘が好きなんだよ、このアニメ」
「アニソンかよ」
 粂川がつっこんで、みんながゲラゲラ笑う中、先生は開き直り気味に言った。
「客の半分は子供なんだから、ちょうどいいだろ」
「誰選曲?」粂川が更に訊く。
「俺選曲」
「いつ決めたの」
「今決めたの」
 この身勝手な教師はそう言って、「童謡なめちゃだめだよ。日本独自の文化で、世界に類をみない――って聞いた気がしないでもない文化だよ」
「うる覚えじゃん。しかも信ぴょう性薄いしー」と、道子。鼻で笑うその声が喧騒を呼ぶ。
「まあ聞け」
 岡野先生は低い声で唸る。その直後、教卓をノートでパシン、と叩いて顔を上げた。
 いつになく真剣なまなざしに、生徒はみんな静まり返った。
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