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一年生の二学期
第二十八話 変化
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おやつ会議を経てからの奈緒は、性格が変わったかのように明るくなった。特にお昼休みのはしゃぎようは尋常じゃなく、遊園地を訪れた子供のようだ。夏が終わって乾き始めた空には、ほうきで掃いたような雲が散見されるのみで、青々としている。
そんなある日の学校の廊下に、可愛い歌というか、旋律のついた言葉が聞こえていた。
「るんるんるん、たのしいな。とってもとってもいいもんねー」
歌いながら、上半身を揺らしたり出来ないスキップをぎこちなく踏んだりして先頭を行く奈緒が、屋上まで上がっていつもの場所へ到着すると、振り返ってしゃがみこみながらおしりに手を添えて言った。
「パンツ 見えないように気を つけなくっちゃ」
「体操着穿いてるじゃん。そもそも、スカートよりズボンの方が楽だって言ってなかったっけ? ジャージでよくない?」と春樹。
「よくない。だってダサい。わたしはおしゃれさんだから。学ランにジャージ穿ける春樹とは違うの」
「呼び捨てかよ、傷つくなぁ」
「あはははは」
つられて笑った南が、相づちを打つ。
「実際ダサいよね」
「うん」杏奈が頷いて「ダサいと思う。務君は?」と振ると、
彼は神妙な面持ちで、まさにそんな恰好をしている春樹を見やった。
「うん……ずっと思ってた、ダサいって」ふり絞るように答える。
「つっちーまで言う。お前、高校入りたての頃、学ランにジャージじゃあなかった?」
「はじめはね。杏奈に言われてやめた」
「裏切り者ー」
みんなはげらげら笑った。
杏奈が口を開く。
「本当楽しいね。ついこの間まで重々しくいろいろ考えていたのが嘘みたい。うちでおやつ会議開いた時は、結局なにも話し合わずに終わっちゃったけれど、あれでよかったのかも」
厚焼き玉子を飲み込んで、南が続く。
「このみんなでグループ作る? わたし、これまでこのみんなと接点なかったし、正直、特にこの二人[杏奈と務]とは合わないと思ってたんだよね、頭いいから。でも、今回の奈緒を守ってあげたいって想いは一緒なんだから、この部分で仲良くできる気がするんだよ」
「俺を無視すんなよ。お前よか頭いいぞ」春樹がぼやく。
それの発言を素通りして、杏奈が南に言った。
「うーん、でもそれだと、ほかのグループの子と接点なくなるよね。表向きは仲良くやっているように見えて、グループ間での交流ってほとんどないし。裏でいがみ合ってるって子たちもいるから、わたしたち以外と付き合わないとなると、成瀬さん、他では孤立するかも」
「それじゃあ、日替わりでいろいろなグループに混ぜてもらう」南が、箸の先をくちばしみたく上げる。
「難しいんじゃないかしら。どちらも大変だよね。グループ替えるって、健常者でも精神すり減るよ。それなのに障害があるんじゃ――」
そんなある日の学校の廊下に、可愛い歌というか、旋律のついた言葉が聞こえていた。
「るんるんるん、たのしいな。とってもとってもいいもんねー」
歌いながら、上半身を揺らしたり出来ないスキップをぎこちなく踏んだりして先頭を行く奈緒が、屋上まで上がっていつもの場所へ到着すると、振り返ってしゃがみこみながらおしりに手を添えて言った。
「パンツ 見えないように気を つけなくっちゃ」
「体操着穿いてるじゃん。そもそも、スカートよりズボンの方が楽だって言ってなかったっけ? ジャージでよくない?」と春樹。
「よくない。だってダサい。わたしはおしゃれさんだから。学ランにジャージ穿ける春樹とは違うの」
「呼び捨てかよ、傷つくなぁ」
「あはははは」
つられて笑った南が、相づちを打つ。
「実際ダサいよね」
「うん」杏奈が頷いて「ダサいと思う。務君は?」と振ると、
彼は神妙な面持ちで、まさにそんな恰好をしている春樹を見やった。
「うん……ずっと思ってた、ダサいって」ふり絞るように答える。
「つっちーまで言う。お前、高校入りたての頃、学ランにジャージじゃあなかった?」
「はじめはね。杏奈に言われてやめた」
「裏切り者ー」
みんなはげらげら笑った。
杏奈が口を開く。
「本当楽しいね。ついこの間まで重々しくいろいろ考えていたのが嘘みたい。うちでおやつ会議開いた時は、結局なにも話し合わずに終わっちゃったけれど、あれでよかったのかも」
厚焼き玉子を飲み込んで、南が続く。
「このみんなでグループ作る? わたし、これまでこのみんなと接点なかったし、正直、特にこの二人[杏奈と務]とは合わないと思ってたんだよね、頭いいから。でも、今回の奈緒を守ってあげたいって想いは一緒なんだから、この部分で仲良くできる気がするんだよ」
「俺を無視すんなよ。お前よか頭いいぞ」春樹がぼやく。
それの発言を素通りして、杏奈が南に言った。
「うーん、でもそれだと、ほかのグループの子と接点なくなるよね。表向きは仲良くやっているように見えて、グループ間での交流ってほとんどないし。裏でいがみ合ってるって子たちもいるから、わたしたち以外と付き合わないとなると、成瀬さん、他では孤立するかも」
「それじゃあ、日替わりでいろいろなグループに混ぜてもらう」南が、箸の先をくちばしみたく上げる。
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