FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

第二十五話 花より団子

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 仕方なさそうに敷地内へとみんなを招き入れる杏奈がほんの少し振り向き、目尻に三人の姿を収める。
「悪く思わないでね、うちの母親が区議会議員で印象にうるさいの。わたしもどっちかって言うと、小沢さんみたいな恰好がいいんだけど、いろいろ言われるから、しょうがなくこんな服装なのよ」
 春樹が口を開く。
「お父さんも確か弁護士だって聞いたな。いつか国政に打って出るんじゃないか?」
「マジ?」南が驚く。「わたし、どうしよう。こんな格好じゃ怒られちゃうかも」
「いまさら? お母さんが選挙に落ちたら、小沢さんのせいだからね」
 杏奈がチクリと答え、絶句したいがぐりを見やって続ける。
「じょうだん。落ちても弁護士だから大丈夫だと思う。区政か民間かの差があるだけで、やりたいことはほぼ同じように見えるし」
「玄関まで遠いな。六、七…十メートルはある? レンガの目地に躓くなよ」
 春樹はそう言って、奈緒を見やる。頷くのを見届けてから視線をみんなに戻し、緊張した面持ちで建物を見上げた。
「前もって心の準備してこれればよかった。俺と南は言葉遣い気をつけなきゃな。逆に奈緒はラッキーかも。区議会議員から見れば確実に守るべき対象だしな」
 緊張した様子で「うん」と頷く南に、金色のノブに手をかけた杏奈が振り返る。
「でも本当いいのよ、ちょっと話すだけだから。こんなに人数いても仕方ないでしょ。学校でお弁当食べながら結果を伝えれば済むと思うし。だからなにも小沢さんと高木君まで無理して来なくても、わたしと務君と成瀬さんだけでいいよ」
 そうつっけんどんに言って彫刻の施されたフロントドアを開ける。
 中に入った南が、玄関で黒いスニーカーを脱ぎながら、なだめるように笑って言葉を零す。
「まあまあ、かたいこと言わない。人数は多いほうが楽しいじゃん」
「おやつかいぎ」奈緒が南に微笑む。
「成瀬も乗り気」
「うん」
 栗色の廊下を先導されながら、南が納得のいかない様子の杏奈に小声で呼びかけた。
((親御さん厳しいなら、ポイント稼ぎになるんじゃない? いじめられっ子を救うんだからさ。それに、うちらの会話が聞こえたら、なにか助けになってくれるかもしれないし。さすがに学校も教育委員会も議員の意向を無視できないでしょ))
 杏奈は務をちらっと見てから、諦めた様子の表情を浮かべる。
「うーん……仕方がない。区議会議員レベルで影響できないと思うけど、最後の切り札になるかもしれないのは確かね」
 務は、2人のやり取りを和やかに笑って見ていた。

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