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一年生の二学期
🐿️
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「成瀬さんも学校に来るのとても楽しく思えるようになったでしょ」
「え?」奈緒は困った顔をして、「うん。杏奈 ちゃんの おかげで、“いよう”も一日楽しいよ。ありがとう」と続けた。
「そう言ってくれると、頑張ったかいがあるよ」
杏奈の言葉に奈緒が笑みを浮かべて頷き、続けて何か答えようとする。
それを遮って、務が見透かすように言った。
「そうかな、潜在化しただけのように思えてならない」
空気が遠のいて、サークルを作ったみんなの内側が真空になる。
彼が続けた。
「いじめって、結構見えないところで細かく繰り返されていたりするんじゃないかな。接し方がみんなと違うとか、なにも教えてあげないとか。気がつかないふりするとか。生活の中では、やられた本人以外、誰も気に留めないような些細なことがいじめだったりする。僕が小三の頃、トイレを我慢できなくて、下校中に大きいほうを漏らしてしまった男子がいたんだけど、そいつ次の日からぶりっちなんていう不名誉なあだ名で呼ばれ始めて、それが卒業まで定着してたんだ。僕と彼はクラスが一緒にならなかったから接点はなかったけど、当時彼がぶりっちって呼ばれていることに違和感は覚えなかったし、もしかしたら僕も、ぶりっちって呼んだことがあったかもしれない。少なくとも友達は誰も可哀想だとは思っていなかっただろうし、先生もそう呼んでいたから、誰も悪いことだとは認識していなかったように思う。僕もそうだった」
「言われていた彼は、どう思っていたんだろ」春樹が質問を投げかける。
「分からない。彼はいつも笑って答えていたし、登校拒否にもならなかった。無視されるとか暴力振るわれるとか、なにか隠されるとか、よくあるいじめは受けていなかったんじゃないかと思うけど、内心は分からない」
「案外大丈夫だったりするけどね」
「ひどいな、南」春樹がつっこんだ。
「わたし、中学の時に横綱つな子ってあだ名の女子がいたけど、楽しくやっていたよ」
杏奈が驚く。
「女子に横綱つな子だなんてひどい」
「でも、彼女もそれを利用して女子とも男子とも仲良くしている感じだったかな」
「え?」奈緒は困った顔をして、「うん。杏奈 ちゃんの おかげで、“いよう”も一日楽しいよ。ありがとう」と続けた。
「そう言ってくれると、頑張ったかいがあるよ」
杏奈の言葉に奈緒が笑みを浮かべて頷き、続けて何か答えようとする。
それを遮って、務が見透かすように言った。
「そうかな、潜在化しただけのように思えてならない」
空気が遠のいて、サークルを作ったみんなの内側が真空になる。
彼が続けた。
「いじめって、結構見えないところで細かく繰り返されていたりするんじゃないかな。接し方がみんなと違うとか、なにも教えてあげないとか。気がつかないふりするとか。生活の中では、やられた本人以外、誰も気に留めないような些細なことがいじめだったりする。僕が小三の頃、トイレを我慢できなくて、下校中に大きいほうを漏らしてしまった男子がいたんだけど、そいつ次の日からぶりっちなんていう不名誉なあだ名で呼ばれ始めて、それが卒業まで定着してたんだ。僕と彼はクラスが一緒にならなかったから接点はなかったけど、当時彼がぶりっちって呼ばれていることに違和感は覚えなかったし、もしかしたら僕も、ぶりっちって呼んだことがあったかもしれない。少なくとも友達は誰も可哀想だとは思っていなかっただろうし、先生もそう呼んでいたから、誰も悪いことだとは認識していなかったように思う。僕もそうだった」
「言われていた彼は、どう思っていたんだろ」春樹が質問を投げかける。
「分からない。彼はいつも笑って答えていたし、登校拒否にもならなかった。無視されるとか暴力振るわれるとか、なにか隠されるとか、よくあるいじめは受けていなかったんじゃないかと思うけど、内心は分からない」
「案外大丈夫だったりするけどね」
「ひどいな、南」春樹がつっこんだ。
「わたし、中学の時に横綱つな子ってあだ名の女子がいたけど、楽しくやっていたよ」
杏奈が驚く。
「女子に横綱つな子だなんてひどい」
「でも、彼女もそれを利用して女子とも男子とも仲良くしている感じだったかな」
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