FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

第十二話 根回し手腕

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 務の音頭で、一緒にお昼ごはんを食べることになった日から一か月が経過する十月の終わり頃、奈緒、安奈、南、務、春樹の五人で屋上に集まるのは、お昼の日課になっていた。
 しかし本来、杏奈には杏奈のグループがあるし、南にも南が属するグループがある。当然、務と春樹が属するグループもあったので、奈緒は他の休み時間をこの四人と共に活動することができず、いつも一人でいた。
 授業中は、後ろの魚子と暖乃、左に座る男子の寺田雄太郎と藤山正虎で六人の班が形成される。一人取り残されることはない利点があるものの、人を選ぶことができないから、この子にとってはよい環境とはいえなかった。この五人は、比較的奈緒を快く思っていない側の人間に属していたからだ。
 学園生活の中でお昼休みの時間は、奈緒の表情が一番明るい時間であった。教室での様子とは打って変わって、性格が変わったかのようによく話す。
 この日も、途切れ途切れ訥々しながらものべつ幕なしに、一人ニコニコしながら話していた。
「き の お、スーパーに行ったら、おもろ。おもろ。おもろって変だけど、おもろがあったの。あらあらあら~って思って、もう おもろの 季節 なのねぇって 思っちゃった。やきもろ食べたくて、探して 回った けれど、おもろ~おもろ~、の、おもろ~はなくて残念だった」
 黙って聞いていた四人の中から、南が声を上げる。
「おもろってなに?」
「おもろ。違うかな? やきおもろ」
「焼きいもじゃない?」杏奈が口を開く。
「そう。やきおもろ。なんて言った、わたし?」
「やきおもろ」みんなが声をそろえる。
「なんだっけ?」
「焼きいも」再び声をそろえる。
「そうか、やきおもろ」
「や、き、い、も」もう一度、みんなが声をそろえた。今度は語気を強く。
「や、き、も、も」
 奈緒は丁寧に発音する。言い終わってみんなの顔を見て、満足げに頷いた。



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