35 / 407
一年生の二学期
第十二話 根回し手腕
しおりを挟む
務の音頭で、一緒にお昼ごはんを食べることになった日から一か月が経過する十月の終わり頃、奈緒、安奈、南、務、春樹の五人で屋上に集まるのは、お昼の日課になっていた。
しかし本来、杏奈には杏奈のグループがあるし、南にも南が属するグループがある。当然、務と春樹が属するグループもあったので、奈緒は他の休み時間をこの四人と共に活動することができず、いつも一人でいた。
授業中は、後ろの魚子と暖乃、左に座る男子の寺田雄太郎と藤山正虎で六人の班が形成される。一人取り残されることはない利点があるものの、人を選ぶことができないから、この子にとってはよい環境とはいえなかった。この五人は、比較的奈緒を快く思っていない側の人間に属していたからだ。
学園生活の中でお昼休みの時間は、奈緒の表情が一番明るい時間であった。教室での様子とは打って変わって、性格が変わったかのようによく話す。
この日も、途切れ途切れ訥々しながらものべつ幕なしに、一人ニコニコしながら話していた。
「き の お、スーパーに行ったら、おもろ。おもろ。おもろって変だけど、おもろがあったの。あらあらあら~って思って、もう おもろの 季節 なのねぇって 思っちゃった。やきもろ食べたくて、探して 回った けれど、おもろ~おもろ~、の、おもろ~はなくて残念だった」
黙って聞いていた四人の中から、南が声を上げる。
「おもろってなに?」
「おもろ。違うかな? やきおもろ」
「焼きいもじゃない?」杏奈が口を開く。
「そう。やきおもろ。なんて言った、わたし?」
「やきおもろ」みんなが声をそろえる。
「なんだっけ?」
「焼きいも」再び声をそろえる。
「そうか、やきおもろ」
「や、き、い、も」もう一度、みんなが声をそろえた。今度は語気を強く。
「や、き、も、も」
奈緒は丁寧に発音する。言い終わってみんなの顔を見て、満足げに頷いた。
しかし本来、杏奈には杏奈のグループがあるし、南にも南が属するグループがある。当然、務と春樹が属するグループもあったので、奈緒は他の休み時間をこの四人と共に活動することができず、いつも一人でいた。
授業中は、後ろの魚子と暖乃、左に座る男子の寺田雄太郎と藤山正虎で六人の班が形成される。一人取り残されることはない利点があるものの、人を選ぶことができないから、この子にとってはよい環境とはいえなかった。この五人は、比較的奈緒を快く思っていない側の人間に属していたからだ。
学園生活の中でお昼休みの時間は、奈緒の表情が一番明るい時間であった。教室での様子とは打って変わって、性格が変わったかのようによく話す。
この日も、途切れ途切れ訥々しながらものべつ幕なしに、一人ニコニコしながら話していた。
「き の お、スーパーに行ったら、おもろ。おもろ。おもろって変だけど、おもろがあったの。あらあらあら~って思って、もう おもろの 季節 なのねぇって 思っちゃった。やきもろ食べたくて、探して 回った けれど、おもろ~おもろ~、の、おもろ~はなくて残念だった」
黙って聞いていた四人の中から、南が声を上げる。
「おもろってなに?」
「おもろ。違うかな? やきおもろ」
「焼きいもじゃない?」杏奈が口を開く。
「そう。やきおもろ。なんて言った、わたし?」
「やきおもろ」みんなが声をそろえる。
「なんだっけ?」
「焼きいも」再び声をそろえる。
「そうか、やきおもろ」
「や、き、い、も」もう一度、みんなが声をそろえた。今度は語気を強く。
「や、き、も、も」
奈緒は丁寧に発音する。言い終わってみんなの顔を見て、満足げに頷いた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
優秀賞受賞作【スプリンターズ】少女達の駆ける理由
棚丘えりん
青春
(2022/8/31)アルファポリス・第13回ドリーム小説大賞で優秀賞受賞、読者投票2位。
(2022/7/28)エブリスタ新作セレクション(編集部からオススメ作品をご紹介!)に掲載。
女子短距離界に突如として現れた、孤独な天才スプリンター瑠那。
彼女への大敗を切っ掛けに陸上競技を捨てた陽子。
高校入学により偶然再会した二人を中心に、物語は動き出す。
「一人で走るのは寂しいな」
「本気で走るから。本気で追いかけるからさ。勝負しよう」
孤独な中学時代を過ごし、仲間とリレーを知らない瑠那のため。
そして儚くも美しい瑠那の走りを間近で感じるため。
陽子は挫折を乗り越え、再び心を燃やして走り出す。
待ち受けるのは個性豊かなスプリンターズ(短距離選手達)。
彼女達にもまた『駆ける理由』がある。
想いと想いをスピードの世界でぶつけ合う、女子高生達のリレーを中心とした陸上競技の物語。
陸上部って結構メジャーな部活だし(プロスポーツとしてはマイナーだけど)昔やってたよ~って人も多そうですよね。
それなのに何故! どうして!
陸上部、特に短距離を舞台にした小説はこんなにも少ないんでしょうか!
というか少ないどころじゃなく有名作は『一瞬の風になれ』しかないような状況。
嘘だろ~全国の陸上ファンは何を読めばいいんだ。うわーん。
ということで、書き始めました。
陸上競技って、なかなか結構、面白いんですよ。ということが伝われば嬉しいですね。
表紙は荒野羊仔先生(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/520209117)が描いてくれました。
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
黄昏は悲しき堕天使達のシュプール
Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・
黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に
儚くも露と消えていく』
ある朝、
目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。
小学校六年生に戻った俺を取り巻く
懐かしい顔ぶれ。
優しい先生。
いじめっ子のグループ。
クラスで一番美しい少女。
そして。
密かに想い続けていた初恋の少女。
この世界は嘘と欺瞞に満ちている。
愛を語るには幼過ぎる少女達と
愛を語るには汚れ過ぎた大人。
少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、
大人は平然と他人を騙す。
ある時、
俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。
そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。
夕日に少女の涙が落ちる時、
俺は彼女達の笑顔と
失われた真実を
取り戻すことができるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる