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一年生の二学期
第十一話 隠伏したいじめ
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ある日の放課後、奈緒が三階にあるシューズロッカーの前で外履きに履き替えていると、久しぶりに「一緒に帰ろう」、と杏奈が声をかけてきた。
正門へと続く階段を下りている途中で、奈緒が訊く。
「杏奈ちゃん、部活はいいの?」
「わたし? わたしは籍を置いているだけだから。塾があって普段は出ていないの。今日遅くまで残っていたのは、学年生徒会があったから」
「大変だね」
「あら、成瀬さんのほうが大変でしょう? 補習でもう六時近いじゃない。七時間目が三時半に終わって二時間以上していたんでしょう?」
「わ た し は バカ だ か ら。それに やっても 卒業できるか 分からない から」
急に奈緒がしょんぼりしたので、杏奈が話題を変える。
「この間のクラス対抗、どうして出なかったの? 木曜日の体育の時間まで、あんなに楽しみにしていたのに」
「うん……急に頭が痛くなっちゃったの。それで 休んだ」奈緒がしょぼくれた笑顔を零す。
「ふーん、無理はしないほうがいいと思うけど……」
合点がいかない様子の杏奈に、奈緒が唇を向ける。
「試合は 残念だったね。 わたしは 一生懸命 応援 したの だけれど、A組は 三位 で し た」
「まあ、仕方がないよね。優勝のC組には一年のレギュラーが四人も集まっているし、二位のG組には、バレー部が多いから」
「試合を見て い た ら、あの方のバレーが 上手かったね。あの 方……分からないけど。杏奈ちゃんと仲良し男子」
「務君?」
「そう、つつむ君」
「つとむ君ね。苗字は土屋君だよ」
杏奈が返答を待つ。やや間を置いてからもう一度「土屋君だよ」、と言った。
「つ ち や くん」奈緒が丁寧に返す。
満足した様子の杏奈が笑った。
「務君も一応バレー部だからね、わたしと同じで出ていないけど。コンビニでバイトしているんだって。中学からの友達に一緒に入ろうって言われて入部しちゃったんだってさ。おっとりしているし、友達想いだから、なんの気なしに入っちゃったんだろうね。普段論理的なくせに、後になってバイトとかぶるって気がついて慌てていたんだよ。おかしいの」
嬉しそうに話す言葉が止まない。
「それなのに部活やめないのよ。結構頑固なの。よせばいいのに無理して両立させようとしちゃうのね。引き受けたら投げ出さないところはいいところだけど。生徒会もあるんだから、三足のわらじでしょう、心配しちゃう」困ったような笑顔で首を傾げた。
正門へと続く階段を下りている途中で、奈緒が訊く。
「杏奈ちゃん、部活はいいの?」
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「大変だね」
「あら、成瀬さんのほうが大変でしょう? 補習でもう六時近いじゃない。七時間目が三時半に終わって二時間以上していたんでしょう?」
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急に奈緒がしょんぼりしたので、杏奈が話題を変える。
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「うん……急に頭が痛くなっちゃったの。それで 休んだ」奈緒がしょぼくれた笑顔を零す。
「ふーん、無理はしないほうがいいと思うけど……」
合点がいかない様子の杏奈に、奈緒が唇を向ける。
「試合は 残念だったね。 わたしは 一生懸命 応援 したの だけれど、A組は 三位 で し た」
「まあ、仕方がないよね。優勝のC組には一年のレギュラーが四人も集まっているし、二位のG組には、バレー部が多いから」
「試合を見て い た ら、あの方のバレーが 上手かったね。あの 方……分からないけど。杏奈ちゃんと仲良し男子」
「務君?」
「そう、つつむ君」
「つとむ君ね。苗字は土屋君だよ」
杏奈が返答を待つ。やや間を置いてからもう一度「土屋君だよ」、と言った。
「つ ち や くん」奈緒が丁寧に返す。
満足した様子の杏奈が笑った。
「務君も一応バレー部だからね、わたしと同じで出ていないけど。コンビニでバイトしているんだって。中学からの友達に一緒に入ろうって言われて入部しちゃったんだってさ。おっとりしているし、友達想いだから、なんの気なしに入っちゃったんだろうね。普段論理的なくせに、後になってバイトとかぶるって気がついて慌てていたんだよ。おかしいの」
嬉しそうに話す言葉が止まない。
「それなのに部活やめないのよ。結構頑固なの。よせばいいのに無理して両立させようとしちゃうのね。引き受けたら投げ出さないところはいいところだけど。生徒会もあるんだから、三足のわらじでしょう、心配しちゃう」困ったような笑顔で首を傾げた。
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