FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

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 少し考えてから頷く菜緒の姿を見て、魚子は満足げに大きく息を吸った。
「あたしらこんな性格じゃん。だから成瀬が身障か違うかで接し方変えないから、きつく当たってるように見えちゃうだけなんだと思うよ。でも、あんたが弱々しくするから、なんかあたしら悪いみたいに映るじゃん。それを口実にして自分を正当化するつもりなんだよね、きっと。そうすれば、あたしたち殴ったって許されるじゃん。あんたを守ることを口実にすればさ。正義の味方ぶっちゃって、実際は気に入らないあたしたちを黙らせたいだけ。だから、あたしらが厳しいからあいつを頼りたい気持ちは分かるけど、距離置いてくれないかな」
 悩む奈緒に向かって、暖乃の声がほとばしる。
「困っちゃうよねー、わたしたち不良じゃないのにさー。今日もそうだよ。わたし、レシーブが下手で成瀬のほうにいくのをいじめ扱いしてさ。きれいにパスしてあげたのだってあったんだよ。ていうかあんた、なぜ拾わないの? そのせいでわたしひどい目に遭ってるんだよ」
「ごめんなさいっ、それは、あ や ま り ま す」とても反射的な謝罪が口から飛び出る。
「謝れば許される問題でもないよ。今日の試合、あんたのせいで負けたんだからね。そうだ、こんど学校休んでよ。クラス対抗でバレーするじゃん、成瀬がいると絶対ビリ決定じゃん。だから、その日休んで。頭痛いとかなんとかいえば、休めるでしょ」
「そのまま来ないで」魚子が付け加える。「なにもここに来なくたっていいじゃん? 自分の状態にあった高校に入ったほうがいいよ。字だって書けないし、上手くしゃべれもしないし。今から転校しちゃいなよ。あたしら応援するからさ」
「そんなぁ……」奈緒は怖々と言った。そしてたどたどしい口調で続ける。
「わたしは、身 体 しょ う が い 者 だから うまく しゃべれ な い けれども、でも 一生懸命 しゃべります。 ん、ん、ん、 それではおねがい し ま す」
 そして、深々と丁寧にお辞儀をして、すがるようにリーダー格の長身な女子を見上げる。
「それがむかつくの」魚子がはねつけた。「ぶりっ子ぶって赤ちゃんみたいに喋らないでよ。普通に喋れるでしょ。なにも出来ないふりして姑息なんだから。下心が見え見えで腹立つ。障がいがあるって強調すれば、誰もかれも下手に出てくれるって思ってんでしょ」
 慌てた奈緒が口を開いた。
「それじゃあ、あれだよね、なにを?」そして目を見開いて魚子を見る。
「また言うの、これ? 一回言ったら理解できるでしょ。どうやって高校入ったのよ」
 奈緒は彼女の話の合間合間で、「もう一回」「あーあ、あーあ」「え? もう一回」と繰り返し、なんとか場を取り繕おうと必死だった。

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