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一年生の二学期
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「だからね、成瀬さんが困った時は、小沢さんを頼ったりしないで、わたしを頼って」
「わたし頼ってないよ」
「うん、でもナナに絡まれた時、よく小沢さんを見るでしょ。だから助けに来るんだよ」
「助けてくれる小沢 さんは いい人だと思う けれど、なぜさけ ないと いけ ないの?」
「さけなくていいの。仲良くしていいの。でも暴力に発展しちゃうと、せっかく助けてくれた小沢さんのためにもならないし、みんなにも迷惑かけてしまうでしょう? だからわたしや務君か高木君……」
杏奈の語気が弱まると、奈緒が唇を開いた。
「高木君は役に立たない。へらへらしてる」
それを聞いて、「ぷっ」と彼女が吹き出す。
「そうだよね、友達想いでいいやつなんだけど、こういう時なんか役に立たなさそう」
笑い終わると、奈緒が訊く。
「それで わたしは どうすれば い い ですか?」
「小沢さんがナナに絡み始めたら、成瀬さんは、わたしは大丈夫だからって言ってあげて」
「うん……でも、大丈夫、じゃない」
「わたしが助けに入るから。それにすぐにじゃなくても、だんだんと弱まってくると思う。今、成瀬さんのこと可哀想だって言ってくれている人、男子でも女子でも増えているから」
「ほんとう?」奈緒の瞳に希望が射して、杏奈を見る。
「うん、そうだよ。もうすぐ、花の高校生活満開だよ」
言い終わって、視線を後方に向けた。校庭のほうにはもう人はおらず、クラスメイトはこの二人だけのようだ。
「そうだ」杏奈が突然、高い声で叫ぶ。
「どうしたの?」
「わたし、先生の所に行かなきゃいけなかったんだ」
彼女はボールを円筒形の柵かごの中に入れると、申し訳なさそうな笑みを浮かべて、花唇の前で手のひらを合わせる。
「ごめんね、成瀬さん。わたし先に行くね。その扉閉めておいて。カギは先生がかけるから開けたままでいいよ」
「うん、分かった」
奈緒は急いでボールをかごに入れて、杏奈へと向き直り、送られてきた笑顔に笑顔を返す。すると、更に笑みを深めて手を振りながら、杏奈は校舎へと走って行く。この子は、その後ろ姿が一番近い裏口の一つに入るまで、左手を振って見送った。
「わたし頼ってないよ」
「うん、でもナナに絡まれた時、よく小沢さんを見るでしょ。だから助けに来るんだよ」
「助けてくれる小沢 さんは いい人だと思う けれど、なぜさけ ないと いけ ないの?」
「さけなくていいの。仲良くしていいの。でも暴力に発展しちゃうと、せっかく助けてくれた小沢さんのためにもならないし、みんなにも迷惑かけてしまうでしょう? だからわたしや務君か高木君……」
杏奈の語気が弱まると、奈緒が唇を開いた。
「高木君は役に立たない。へらへらしてる」
それを聞いて、「ぷっ」と彼女が吹き出す。
「そうだよね、友達想いでいいやつなんだけど、こういう時なんか役に立たなさそう」
笑い終わると、奈緒が訊く。
「それで わたしは どうすれば い い ですか?」
「小沢さんがナナに絡み始めたら、成瀬さんは、わたしは大丈夫だからって言ってあげて」
「うん……でも、大丈夫、じゃない」
「わたしが助けに入るから。それにすぐにじゃなくても、だんだんと弱まってくると思う。今、成瀬さんのこと可哀想だって言ってくれている人、男子でも女子でも増えているから」
「ほんとう?」奈緒の瞳に希望が射して、杏奈を見る。
「うん、そうだよ。もうすぐ、花の高校生活満開だよ」
言い終わって、視線を後方に向けた。校庭のほうにはもう人はおらず、クラスメイトはこの二人だけのようだ。
「そうだ」杏奈が突然、高い声で叫ぶ。
「どうしたの?」
「わたし、先生の所に行かなきゃいけなかったんだ」
彼女はボールを円筒形の柵かごの中に入れると、申し訳なさそうな笑みを浮かべて、花唇の前で手のひらを合わせる。
「ごめんね、成瀬さん。わたし先に行くね。その扉閉めておいて。カギは先生がかけるから開けたままでいいよ」
「うん、分かった」
奈緒は急いでボールをかごに入れて、杏奈へと向き直り、送られてきた笑顔に笑顔を返す。すると、更に笑みを深めて手を振りながら、杏奈は校舎へと走って行く。この子は、その後ろ姿が一番近い裏口の一つに入るまで、左手を振って見送った。
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