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一年生の二学期
第五話 バレーボール
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体育の授業は、奈緒にとって憂鬱な時間だった。はじめはみんなの足を引っ張ってしまうのが嫌で、右半身不随を理由に体育を見学していたこの子だったが、ここ最近は頑張って参加するようになっていた。それというのも、なぜかみんなが優しげに「一緒にやろうよ」と誘ってくるようになったからだ。
十月最初の体育となったこの日、奈緒は、断りたい様子を見せながらも、授業への参加を承諾して、「うんとこしょーのどっこいしょー」と、紺色の体操着に着替えている真っ最中だった。今までにないクラスメイトの反応の変化に驚きつつ杏奈を見ると、彼女は手を振ってくる。
友達になったあの日から、視線に応えて必ず手を振ってくれるようになったクラス委員長に向かって、固い決意を帯びた表面の菜緒がアイメッセージを送るように深く頷く。そしてそばにいた花と由紀と共に二階の端にある更衣室を出て、三階の昇降口へと向かう。
芝生の校庭に出て、みんなが支柱を立てたりネットを張っているのを目の当たりにしたこの子は、不安げな面持ちで後ろを振り向いて、杏奈に言った。
「バレーボールするの?」
「うん、今日は男女に分かれて試合するんだって」
「えぇ~、わ た し 右手が使えないのに どお しましょう」
「あはは、大丈夫だよ、立っているだけで。みんなやさしくしてくれるし」
「わたしがいるチームは、必ず負けると思う」
「勝ち負けは関係ないよ。負けたって誰も気にしないから、楽しくやれればいいの。ね」
チーム分けはじゃんけんで決めることになったが、それに先んじて杏奈が挙手をして、みんなを見渡す。
「わたし、成瀬さんのそばにいたいから一緒にさせて」
誰ともなく「いいよ」と聞こえてきそうな空気が漂うと、彼女が提案する。
「バレー部は別れようね。わたしとかおりと葵」
「人数足りないよね、三人見学だから」平家葵が人差し指で数える。
「足りないところは、その時見学のチームから出る人を、じゃんけんして決めよう。わたしとかおりと葵でじゃんけんして、勝った順にメンバーを取る」
杏奈がそう言い終えてグーを上げると、それが合図になってじゃんけんが始まる。
Aチームは、杏奈・奈緒・暖乃・るみ・花・明日香。Bチームは、かおり・魚子・道子・美紀・孫凛・雅。そしてCチームは、葵・美幸・由紀に決まった。
十月最初の体育となったこの日、奈緒は、断りたい様子を見せながらも、授業への参加を承諾して、「うんとこしょーのどっこいしょー」と、紺色の体操着に着替えている真っ最中だった。今までにないクラスメイトの反応の変化に驚きつつ杏奈を見ると、彼女は手を振ってくる。
友達になったあの日から、視線に応えて必ず手を振ってくれるようになったクラス委員長に向かって、固い決意を帯びた表面の菜緒がアイメッセージを送るように深く頷く。そしてそばにいた花と由紀と共に二階の端にある更衣室を出て、三階の昇降口へと向かう。
芝生の校庭に出て、みんなが支柱を立てたりネットを張っているのを目の当たりにしたこの子は、不安げな面持ちで後ろを振り向いて、杏奈に言った。
「バレーボールするの?」
「うん、今日は男女に分かれて試合するんだって」
「えぇ~、わ た し 右手が使えないのに どお しましょう」
「あはは、大丈夫だよ、立っているだけで。みんなやさしくしてくれるし」
「わたしがいるチームは、必ず負けると思う」
「勝ち負けは関係ないよ。負けたって誰も気にしないから、楽しくやれればいいの。ね」
チーム分けはじゃんけんで決めることになったが、それに先んじて杏奈が挙手をして、みんなを見渡す。
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誰ともなく「いいよ」と聞こえてきそうな空気が漂うと、彼女が提案する。
「バレー部は別れようね。わたしとかおりと葵」
「人数足りないよね、三人見学だから」平家葵が人差し指で数える。
「足りないところは、その時見学のチームから出る人を、じゃんけんして決めよう。わたしとかおりと葵でじゃんけんして、勝った順にメンバーを取る」
杏奈がそう言い終えてグーを上げると、それが合図になってじゃんけんが始まる。
Aチームは、杏奈・奈緒・暖乃・るみ・花・明日香。Bチームは、かおり・魚子・道子・美紀・孫凛・雅。そしてCチームは、葵・美幸・由紀に決まった。
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