FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

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「行きましょう」と声が聞こえて杏奈が振り返ってきた。ここには喜びで瞳を輝かせながら、後ろの木製ロッカーを頼りに、のそのそと立ち上がろうとしている奈緒がいる。
「楽しみだね」南が、この子が立ち上がるのを待って声をかけると、不随の右半身を庇いながら「うん」と、弾んだ声で返す。
 杏奈は、菜緒を連れた三人の後ろを渋々ついてきた。
 七階の上にある屋上の片隅でお弁当を広げると、真っ先に南が口を開く。
「そもそも相沢が成瀬の席取っちゃってるからいけないんだよ」
 すると、杏奈が口を挟む。
「ナナとのーのがいるから」
「擁護しないでよ」
「成瀬さんのこと考えてあげるのも大切だけど、あの三人のことも考えなきゃ」
「相沢が成瀬の席使ってんなら、あいつん席使いなよ」
 南がそう言うと、奈緒は不安そうな眼をして俯く。
「“こあい”」
 それを見た春樹が、慰めるように笑う。
「まあ、なんかされるよな、たぶん」
 しょんぼりした様子の奈緒が答えた。
「わ た し は 利き手が 使え な い ので、ごめんな さい。だ か ら、机で……机で というのも 変だけれども、机で食べても、こぼすと 思う」
 務が奈緒の顔をのぞき込む。
「お弁当箱を床に置くのと机に置くのとじゃ距離が違うから、こぼれる量はだいぶ違うよ」
「かといって、かおりを強制的にどかすのもなんだかなぁ」
 春樹が呟くと、南がムスッとして見やる。
「でもはじめが肝心。ガツンとやらなきゃ」
「やめてよ、風紀乱すの」杏奈が慌てる。「クラスの雰囲気悪くなるし。学年生徒会でなにか言われるの、わたしなんだから」
「揉め事は避けたいよね。どうにか穏便に済ませたい」務がそう言ってみんなを見て、「でも、黙認するってことじゃないよ。改善はさせる」と言い添える。
「どうするか……」
 春樹は両手を後ろについて、青空を仰ぐ。
 不意に奈緒が口を開いた。
「ここじゃ 日焼けしちゃうから、次は日影が い い な」
 空には薄い網目みたいな雲が一朶あるだけ。みんなは全身に日光を浴びていた。
「今度、日焼け止めもってこようね」
 杏奈がそう言うと、奈緒が笑顔になった。
「わたし持ってるよ。あとで貸してあげる」
「うん、今塗らないと」
「なんで?」
 きょとんとする奈緒を見て、みんなは顔を見合わせた。
 怖々と南が口を開く。
「一瞬、わたしが間違えてるのかと思った」
 確認するようにみんなを見渡す。
 それでも奈緒は分からない様子だった。




✏️廣飯安奈🏐
作画:緒方宗谷&AIイラスト
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