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一年生の二学期
第四話 日焼け止め
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誰もが待ちに待ったお昼ごはん。生徒たちの一部は、少なからず一階にある食堂で昼食をとっていたが、多くの生徒は教室でそれぞれ仲のよいグループに分かれ、思い思いにお弁当箱をはして啄む。学校生活の中で一番楽しい時間の一つだ。だが、ムクドリの大群に占拠されたかのような騒がしい教室の中で、奈緒はいつも一人ぽつんと後ろの床に座ってごはんを食べていた。
憂鬱な授業を終えてようやく迎えたお昼の時間だったが、奈緒にとっては到底心が休まる時間ではない。チャイムが鳴って、ごはんが食べられる、と頬をほころばせるのだが、お弁当を広げると、いつも悪戦苦闘して、遅々としてごはんは口に運ばれない。
「はぁ、はぁーあー、はぁ。だめだぁ、う ま く い か な い なぁ」
何度やっても上手にスプーンに乗らないウインナーを前にして、この子がいつものように呟いた。
「ねぇ、そのため息やめてくれる?」女子の声が空気をつんざく。
窓際最後尾の加藤雅とご飯を食べていた孫凛[Son lin]が、男子の列越しに苛ついた声をかけてきたので、菜緒は、
「あ、ごめん」
と、とっさに謝って、お弁当に向き直る。
「はぁーあー、だめだぁ、もう」
「だからため息やめてって」諭すようにやさしく言った孫凛は、「すごいストレスなの。聞くたびにとても萎えるの。ネガティブ発言多すぎ、妙に吐き気がする」とまくしたてた。
「ごめんなさい。はぁーぁー」
文句をつけてきた二人が頭を抱える。
「だから、やめてって。それにごはん、たくさんこぼしてるし」
孫凛がなじると、みんなが鼻で笑う。
「掃除するの、わたしたちなんですけど」誰かが言った。
「あ~、あ~」
おろおろする奈緒を見かねた杏奈が、立ち上がる。
「成瀬さん、一緒に食べよう」
すると、一緒に食べていた平家葵が、間髪入れずに囁く。
((え、やめよう……あれ見ながらごはんたべられないし、ねぇ……))
「うん……」隣の布袋美幸が頷く。
それを聞いて、奈緒の瞳に出た色味が一瞬で消えた。
「分かった」
杏奈はしぶしぶ腰を下ろそうとして、すぐに立ち上がって続けて言った。
「でもほら、わたし、クラスの和を作る責任もあるし」
ちらりと視線を向ける先には、ランチクロスで包んだお弁当箱を持った務が、奈緒の元へと向かっていく。
「屋上行こう」
務は、緊張した面持ちでしゃがんでそう言って、奈緒のティッシュで食べこぼしを集めた。
「そうだね、屋上の端っこなら、気にせず食べられるね」
杏奈がそばによって務を手伝いながら、奈緒に微笑みかける。
「あ、じゃあ、わたしも行く」
みんなが振り返る先には、南がいた。
「つっちーが行くなら、俺も」
務と食べていた春樹もお弁当をかたし始める。
転がした雪玉が大きくなるように人数が増えて、杏奈は呆然と見渡した。
憂鬱な授業を終えてようやく迎えたお昼の時間だったが、奈緒にとっては到底心が休まる時間ではない。チャイムが鳴って、ごはんが食べられる、と頬をほころばせるのだが、お弁当を広げると、いつも悪戦苦闘して、遅々としてごはんは口に運ばれない。
「はぁ、はぁーあー、はぁ。だめだぁ、う ま く い か な い なぁ」
何度やっても上手にスプーンに乗らないウインナーを前にして、この子がいつものように呟いた。
「ねぇ、そのため息やめてくれる?」女子の声が空気をつんざく。
窓際最後尾の加藤雅とご飯を食べていた孫凛[Son lin]が、男子の列越しに苛ついた声をかけてきたので、菜緒は、
「あ、ごめん」
と、とっさに謝って、お弁当に向き直る。
「はぁーあー、だめだぁ、もう」
「だからため息やめてって」諭すようにやさしく言った孫凛は、「すごいストレスなの。聞くたびにとても萎えるの。ネガティブ発言多すぎ、妙に吐き気がする」とまくしたてた。
「ごめんなさい。はぁーぁー」
文句をつけてきた二人が頭を抱える。
「だから、やめてって。それにごはん、たくさんこぼしてるし」
孫凛がなじると、みんなが鼻で笑う。
「掃除するの、わたしたちなんですけど」誰かが言った。
「あ~、あ~」
おろおろする奈緒を見かねた杏奈が、立ち上がる。
「成瀬さん、一緒に食べよう」
すると、一緒に食べていた平家葵が、間髪入れずに囁く。
((え、やめよう……あれ見ながらごはんたべられないし、ねぇ……))
「うん……」隣の布袋美幸が頷く。
それを聞いて、奈緒の瞳に出た色味が一瞬で消えた。
「分かった」
杏奈はしぶしぶ腰を下ろそうとして、すぐに立ち上がって続けて言った。
「でもほら、わたし、クラスの和を作る責任もあるし」
ちらりと視線を向ける先には、ランチクロスで包んだお弁当箱を持った務が、奈緒の元へと向かっていく。
「屋上行こう」
務は、緊張した面持ちでしゃがんでそう言って、奈緒のティッシュで食べこぼしを集めた。
「そうだね、屋上の端っこなら、気にせず食べられるね」
杏奈がそばによって務を手伝いながら、奈緒に微笑みかける。
「あ、じゃあ、わたしも行く」
みんなが振り返る先には、南がいた。
「つっちーが行くなら、俺も」
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転がした雪玉が大きくなるように人数が増えて、杏奈は呆然と見渡した。
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