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一年生の二学期
第三話 最初の友達
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学校の敷地の中は、溢れんばかりに生徒たちの声が木霊していた。友達とお喋りする楽しげな声。部活に励む掛け声などが入り乱れて、無秩序ながらも活気のある放課後の風景だ。
そんな中で奈緒は、異様に目立つ存在だった。右足が動かないので、常に片足を引いていて、ぴょこぴょこと跳ねるように進んでいく。
そんな彼女を遠目で見つけて、一直線に近寄ってくる女子生徒がいた。声をかけられて奈緒が不器用に振り返るが、分からない。顔を更に右に向けて左目に声の主を入れると、急に頬が綻ぶ。眼前にいたのは、朝教室でかばってくれた廣飯杏奈だった。
「一緒に帰ろう」
杏奈にそう声をかけられて、奈緒はおずおずと「うん」と答える。
その後、しばらく何も会話を交わすこと無く二人は歩いていたが、正門を前にして、杏奈が言った。
「仲良し三人組の席取っちゃったんだからしょうがないよね」
開口一番そう言われた奈緒はぎょっとするが、困った顔をしながらも、なんとか「そうだね」と答える。
杏奈が続けた。
「あの席にいたかおりって子いるでしょ。小学校の時からナナと友達だったんだって。それですっごい仲いいの。少しとっつきにくいかもしれないけれどいい子だよ、クールって言うのかな。別になにかされたわけじゃないでしょ? ふたえだけど切れ長だから睨まれているように思うかもしれないけれど、そんなことないよ。だから気にしないで」
杏奈は、ほんの少し奈緒の回答を待つが、首を傾げるだけの姿を見てキューピッドラインを引き上げる。
「小沢さんは、いじめだって言っていたけど、そんなことないよね? もしそうならわたしに言って。先生に言ってあげるから」そして笑みを投げる。
奈緒が何かを言おうと口を開くのを知ってか知らずか、彼女が言葉でこの子の口を塞いだ。
「でもさぁ、小沢さんもみんなの前でひどいよね。のーののこといじめ扱いしてさ。ナナと話していただけでしょ。そりゃあ成瀬さんのこと話していたのかもしれないけど、内容的にはナナのことねぎらってのことだっただろうし」
「うん」ようやく答えた奈緒が困惑の笑みを浮かべ、うっすらと悲しそうに道路へと視線を下げる。「わたしが わるい。だって よだれを たらしてしまうから。わたしもだめ だなって 思うから」
そんな中で奈緒は、異様に目立つ存在だった。右足が動かないので、常に片足を引いていて、ぴょこぴょこと跳ねるように進んでいく。
そんな彼女を遠目で見つけて、一直線に近寄ってくる女子生徒がいた。声をかけられて奈緒が不器用に振り返るが、分からない。顔を更に右に向けて左目に声の主を入れると、急に頬が綻ぶ。眼前にいたのは、朝教室でかばってくれた廣飯杏奈だった。
「一緒に帰ろう」
杏奈にそう声をかけられて、奈緒はおずおずと「うん」と答える。
その後、しばらく何も会話を交わすこと無く二人は歩いていたが、正門を前にして、杏奈が言った。
「仲良し三人組の席取っちゃったんだからしょうがないよね」
開口一番そう言われた奈緒はぎょっとするが、困った顔をしながらも、なんとか「そうだね」と答える。
杏奈が続けた。
「あの席にいたかおりって子いるでしょ。小学校の時からナナと友達だったんだって。それですっごい仲いいの。少しとっつきにくいかもしれないけれどいい子だよ、クールって言うのかな。別になにかされたわけじゃないでしょ? ふたえだけど切れ長だから睨まれているように思うかもしれないけれど、そんなことないよ。だから気にしないで」
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「小沢さんは、いじめだって言っていたけど、そんなことないよね? もしそうならわたしに言って。先生に言ってあげるから」そして笑みを投げる。
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「でもさぁ、小沢さんもみんなの前でひどいよね。のーののこといじめ扱いしてさ。ナナと話していただけでしょ。そりゃあ成瀬さんのこと話していたのかもしれないけど、内容的にはナナのことねぎらってのことだっただろうし」
「うん」ようやく答えた奈緒が困惑の笑みを浮かべ、うっすらと悲しそうに道路へと視線を下げる。「わたしが わるい。だって よだれを たらしてしまうから。わたしもだめ だなって 思うから」
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