FRIENDS

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
8 / 388
一年生の二学期

第三話 最初の友達

しおりを挟む
 学校の敷地の中は、溢れんばかりに生徒たちの声が木霊していた。友達とお喋りする楽しげな声。部活に励む掛け声などが入り乱れて、無秩序ながらも活気のある放課後の風景だ。
 そんな中で奈緒は、異様に目立つ存在だった。右足が動かないので、常に片足を引いていて、ぴょこぴょこと跳ねるように進んでいく。
 そんな彼女を遠目で見つけて、一直線に近寄ってくる女子生徒がいた。声をかけられて奈緒が不器用に振り返るが、分からない。顔を更に右に向けて左目に声の主を入れると、急に頬が綻ぶ。眼前にいたのは、朝教室でかばってくれた廣飯杏奈だった。
「一緒に帰ろう」
 杏奈にそう声をかけられて、奈緒はおずおずと「うん」と答える。
 その後、しばらく何も会話を交わすこと無く二人は歩いていたが、正門を前にして、杏奈が言った。
「仲良し三人組の席取っちゃったんだからしょうがないよね」
 開口一番そう言われた奈緒はぎょっとするが、困った顔をしながらも、なんとか「そうだね」と答える。
 杏奈が続けた。
「あの席にいたかおりって子いるでしょ。小学校の時からナナと友達だったんだって。それですっごい仲いいの。少しとっつきにくいかもしれないけれどいい子だよ、クールって言うのかな。別になにかされたわけじゃないでしょ? ふたえだけど切れ長だから睨まれているように思うかもしれないけれど、そんなことないよ。だから気にしないで」
 杏奈は、ほんの少し奈緒の回答を待つが、首を傾げるだけの姿を見てキューピッドラインを引き上げる。
「小沢さんは、いじめだって言っていたけど、そんなことないよね? もしそうならわたしに言って。先生に言ってあげるから」そして笑みを投げる。
 奈緒が何かを言おうと口を開くのを知ってか知らずか、彼女が言葉でこの子の口を塞いだ。
「でもさぁ、小沢さんもみんなの前でひどいよね。のーののこといじめ扱いしてさ。ナナと話していただけでしょ。そりゃあ成瀬さんのこと話していたのかもしれないけど、内容的にはナナのことねぎらってのことだっただろうし」
「うん」ようやく答えた奈緒が困惑の笑みを浮かべ、うっすらと悲しそうに道路へと視線を下げる。「わたしが わるい。だって よだれを たらしてしまうから。わたしもだめ だなって 思うから」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

切り裂かれた髪、結ばれた絆

S.H.L
青春
高校の女子野球部のチームメートに嫉妬から髪を短く切られてしまう話

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

坊主女子:友情短編集

S.H.L
青春
短編集です

礼儀と決意:坊主少女の学び【シリーズ】

S.H.L
青春
男まさりでマナーを知らない女子高生の優花が成長する物語

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

Bグループの少年

櫻井春輝
青春
 クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?

雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香
青春
学校の帰り道に突如現れた謎の女 彼女は、遠い未来から来たと言った。 「甲子園に行くで」 そんなこと言っても、俺たち、初対面だよな? グラウンドに誘われ、彼女はマウンドに立つ。 ひらりとスカートが舞い、パンツが見えた。 しかしそれとは裏腹に、とんでもないボールを投げてきたんだ。

処理中です...