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1 忘失の悪魔と復讐の悪魔 ~すれ違いから生まれた隙間は、放置すると膿み腐る~
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キスをすると、バラは全身全霊を唇に傾け、これ以上ないくらい甘い極上の蜜を醸し出しました。濃厚でまったりとしていて、その美味しさに気持ち良く酔ってしまいそうです。黄金色に輝く蜜は、大変優雅な香りを発しており、広い部屋が満たされていきます。
バラの精霊は、朝になると必ず決まった時刻に姫のもとに朝ご飯を持って行きました。
「今日は、ミツスイの精が卵をくれましたよ。
だから、小さな小さな目玉焼きにしました」
「あら? あの子、もう卵を産めるまでに成長したのですね」
「まさか、まだ2000歳にもなっていません。
いつも、お友達の白ヘビの精のために、森に遊びに来ている小鳥に卵をもらっているのです。
昨日は、思いのほかたくさん卵が貰えたから、姫様に食べてほしいって、僕のところに持ってきたのです」
お着替えをした姫は、朝ご飯を待ちきれない様子で、小食堂に駆けて入ってきます。
2人で使うのが精一杯の丸テーブルには、焼き上がったばかりのきんぴらごぼうの惣菜パンと、わかめスープ、スズから献上された卵で作った目玉焼き、ハーブ野菜のサラダとフルーツジュースが並んでいます。
初めの内は、長方形の8人掛けのテーブルに、姫の分だけの朝食を用意していたバラでしたが、姫のご希望で、バラ自身の分も用意するようになりました。新婚生活に入って、2人はすぐに一緒に朝ご飯を食べるようになったのです。
思い返すと、とても楽しい日々でした。要塞には珍しく鎧戸でできたて大きな窓がある小食堂は、全ての開口部を開ければ、奥の壁まで朝日が差し込み、少量ですが光の粒が湧きあがる部屋です。
城がバラに閉ざされて以来、この窓も開かなくなってしまいましたが、姫は気にしません。窓のあった壁一面を覆うイバラに咲いた大輪の白バラが、朝日と見まがうほどに輝いていたからです。
2人は、毎日その日1日を一緒にどう過ごすかを話しながら、ご飯を食べました。
それなのに、今は見る影もありません。真っ暗闇に包まれた小食堂に寂しく置かれたテーブルとイスには、埃が溜まっています。姫は構わず座って、バラが朝食を持ってくるのを幾日も待ちました。
瞳を閉じると、とても美味しそうな湯気が上がるお膳を持ったバラが、ニコニコしながらやってきます。ですが、目を開けると孤独な闇が広がるばかり。
毎日毎日、朝小食堂にやって来ては、バラが用意してくれた朝ご飯の思い出を思い返しながら、しばらく座っていました。楽しかったあの日々の記憶を思い返すと、とても幸せな気分になれたからです。
しかし、思い出すたびに、思い出は1つずつ忘れ去られていきました。遂に用意された朝ご飯の思い出が尽きると、姫の脳裏には闇しか思い浮かびません。
思い出に浸る事ができなくなった姫は、じっと埃をかぶったテーブルの上を見つめるだけになって、小食堂に来なくなりました。そして、小食堂の存在も忘れました。
1人で闇の中をお散歩する姫は、自らが発する光で城の壁を照らし、神話の物語の彫刻を見て回りました。いつも2人でそうしていたからです。
いつかは2人の神話の彫刻をこの城に施したい、と語り合っていました。それを思い出すと、姫は幸せな気持ちになって笑みをこぼします。里の歴史を2人で学ぶのはとても楽しい思い出でした。
この彫刻を見た時はああ思ったとか、バラはこう言ったとか、色々と思い出して楽しんでいましたが、次第にそれも思い出さなくなっていきます。
広いお城ですから、いくら見て回っても見きれるものではありませんし、見学した思い出が尽きるはずがないのですが、いつの間にか思い出せなくなりました。
神話の先の話がえがかれた先の壁を見ると、闇の中に消えています。振り返ると、やはり闇の中に消えています。過去も未来も闇の中にのまれた姫は、今立っている場所すら分からなくなって、孤独が全てだと思うようになりました。
「バラ・・・、わたしの物であったはずのバラ、もし貴方が望むのであれば、我が玉座を差し上げても構いません。
この城の主となって、ゆくゆくは里の主神になる野望をいだいても構いません。
わたしはそれに付き従い、全力で支えましょう。
ですから、わたしを1番の眷属として、そばにおいてください」
いつまでたっても、姫はバラへの想いを失いませんでしたが、絶望の淵にいる苦しみから、段々とバラの愛を懇願するようになりました。
本来、バラの神は姫の眷属で、立場上姫が上に立っていましたが、実際はお互いが愛し合って対等の関係にありました。
1つの優しさをもらったら、1つの優しさで返し、1つの喜びをもらったら、1つの喜びで返します。
その様な関係は、1人置き去りにされた日から揺らぎ始め、今は姫が一方的にバラの愛を渇望するようになっていました。全てを差し出して、それに見合わない小さな対価を望むようになっていたのです。
バラの眷属の1人でも良い。もしわたしをそばに置いてくれるのであれば、謀反にも加担する、と言っているようなものです。
高位神である自らを、下位の精であるミツスイと白ヘビと同等に並べたばかりでなく、幼い2人と競って、1番にしてほしい、と望んだのです。
姫は、謁見の間の中央に座り込んで、階段の上にある玉座の方を見上げました。闇の中ですから、美しく壮言な彫刻を施した木製の玉座は見えません。でもバラが降臨してそこに座り、この広い謁見の間を明るく照らし出してくれる、と信じたからです。
ですが、闇は途切れることはありません。そんな中、姫の心に声が響きました。
「バラの神は、わたしを裏切って、他の女神のところへ行ったのね。
わたしは許さないわ、わたしを捨てて去ったバラを」
姫はビックリしました。この様な陰湿な言葉を考えた事など無かったからです。孤独に苛まれて、気が病んできたのだと思いました。
もうこの様な邪なことは考えない様にしようと思いましたが、孤独でいる事に耐えられなくなると、姫はバラに対して恨みに似た感情をいだくようになりました。そうすることで、胸の苦しみや、吐き気が緩和されたのです。
バラへの憎しみを込めた言葉を毎日反芻するようになってしまいました。そのような感情をいだき、そのような言葉を考えている事すら気が付きません。
しかし、時折思い出すバラとの幸せな思い出のかけらが、心に滲みます。その度に、姫は自らが堕天しかけていることに気が付いて、絶望しました。
ですが姫は諦めませんでした。なんとかして、自らの本性が闇に沈まないようにしなければ、と考えたのです。
「そんな事をしても無駄よ、バラの神は帰っては来ないわ。
それよりも、他の男神を探してすがりましょう。
バラの神よりも強ければ、魔王でも良いわ」
そう聞こえてくる度にそれを否定して、姫は声に出して言いました。
「バラは決してわたしを裏切ったりしないわ。
バラに悪心があると思うのは、わたしの孤独に生まれた闇に住みついた悪魔の仕業なのでしょう。
どんなに病める時ですら、一緒にいようと誓ったのです。
そう…孤独は偽り。バラは今正にわたしに寄りそっているはずです」
姫は、バラが裏切ったのではなく、自らが裏切ろうとしていたのだと気が付きました。
「こんな苦しい思いをして、バラを想い続けて何になるっていうの?
わたしがバラを捨てさえすれば、この城は、イバラの封印を許してはおかないでしょう?
そうなれば、すぐにでもここから出て、バラに復讐できるのよ」
「何故わたしは、バラがわたしを騙して我が物にして捨てたと思うの? 何故それ以外の可能性を否定して、考えようともしないの?
もしかしたら、やむにやまれぬ事情があって、わたしのもとに来られないだけかもしれないでしょう? 例えば、宮殿に呼ばれて修業しているとか」
姫は、バラのローブやシャツ、下着までもをかき集めて寝室に持って来て、ベッドの上に広げました。
洗濯した綺麗な衣服ですが、バラの神気はとても強いので、香水をつけたかのように高貴な香りを放っています。
ベッドの上で、姫はバラのローブを抱きしめて顔を埋め、胸いっぱいに香りを吸い込みました。そのまま横になって、シーツに移ったバラの残り香を探しました。そうすることで、忘れてしまったバラとの思い出を、なんとか思い出そうとしたのです。
バラの精霊は、朝になると必ず決まった時刻に姫のもとに朝ご飯を持って行きました。
「今日は、ミツスイの精が卵をくれましたよ。
だから、小さな小さな目玉焼きにしました」
「あら? あの子、もう卵を産めるまでに成長したのですね」
「まさか、まだ2000歳にもなっていません。
いつも、お友達の白ヘビの精のために、森に遊びに来ている小鳥に卵をもらっているのです。
昨日は、思いのほかたくさん卵が貰えたから、姫様に食べてほしいって、僕のところに持ってきたのです」
お着替えをした姫は、朝ご飯を待ちきれない様子で、小食堂に駆けて入ってきます。
2人で使うのが精一杯の丸テーブルには、焼き上がったばかりのきんぴらごぼうの惣菜パンと、わかめスープ、スズから献上された卵で作った目玉焼き、ハーブ野菜のサラダとフルーツジュースが並んでいます。
初めの内は、長方形の8人掛けのテーブルに、姫の分だけの朝食を用意していたバラでしたが、姫のご希望で、バラ自身の分も用意するようになりました。新婚生活に入って、2人はすぐに一緒に朝ご飯を食べるようになったのです。
思い返すと、とても楽しい日々でした。要塞には珍しく鎧戸でできたて大きな窓がある小食堂は、全ての開口部を開ければ、奥の壁まで朝日が差し込み、少量ですが光の粒が湧きあがる部屋です。
城がバラに閉ざされて以来、この窓も開かなくなってしまいましたが、姫は気にしません。窓のあった壁一面を覆うイバラに咲いた大輪の白バラが、朝日と見まがうほどに輝いていたからです。
2人は、毎日その日1日を一緒にどう過ごすかを話しながら、ご飯を食べました。
それなのに、今は見る影もありません。真っ暗闇に包まれた小食堂に寂しく置かれたテーブルとイスには、埃が溜まっています。姫は構わず座って、バラが朝食を持ってくるのを幾日も待ちました。
瞳を閉じると、とても美味しそうな湯気が上がるお膳を持ったバラが、ニコニコしながらやってきます。ですが、目を開けると孤独な闇が広がるばかり。
毎日毎日、朝小食堂にやって来ては、バラが用意してくれた朝ご飯の思い出を思い返しながら、しばらく座っていました。楽しかったあの日々の記憶を思い返すと、とても幸せな気分になれたからです。
しかし、思い出すたびに、思い出は1つずつ忘れ去られていきました。遂に用意された朝ご飯の思い出が尽きると、姫の脳裏には闇しか思い浮かびません。
思い出に浸る事ができなくなった姫は、じっと埃をかぶったテーブルの上を見つめるだけになって、小食堂に来なくなりました。そして、小食堂の存在も忘れました。
1人で闇の中をお散歩する姫は、自らが発する光で城の壁を照らし、神話の物語の彫刻を見て回りました。いつも2人でそうしていたからです。
いつかは2人の神話の彫刻をこの城に施したい、と語り合っていました。それを思い出すと、姫は幸せな気持ちになって笑みをこぼします。里の歴史を2人で学ぶのはとても楽しい思い出でした。
この彫刻を見た時はああ思ったとか、バラはこう言ったとか、色々と思い出して楽しんでいましたが、次第にそれも思い出さなくなっていきます。
広いお城ですから、いくら見て回っても見きれるものではありませんし、見学した思い出が尽きるはずがないのですが、いつの間にか思い出せなくなりました。
神話の先の話がえがかれた先の壁を見ると、闇の中に消えています。振り返ると、やはり闇の中に消えています。過去も未来も闇の中にのまれた姫は、今立っている場所すら分からなくなって、孤独が全てだと思うようになりました。
「バラ・・・、わたしの物であったはずのバラ、もし貴方が望むのであれば、我が玉座を差し上げても構いません。
この城の主となって、ゆくゆくは里の主神になる野望をいだいても構いません。
わたしはそれに付き従い、全力で支えましょう。
ですから、わたしを1番の眷属として、そばにおいてください」
いつまでたっても、姫はバラへの想いを失いませんでしたが、絶望の淵にいる苦しみから、段々とバラの愛を懇願するようになりました。
本来、バラの神は姫の眷属で、立場上姫が上に立っていましたが、実際はお互いが愛し合って対等の関係にありました。
1つの優しさをもらったら、1つの優しさで返し、1つの喜びをもらったら、1つの喜びで返します。
その様な関係は、1人置き去りにされた日から揺らぎ始め、今は姫が一方的にバラの愛を渇望するようになっていました。全てを差し出して、それに見合わない小さな対価を望むようになっていたのです。
バラの眷属の1人でも良い。もしわたしをそばに置いてくれるのであれば、謀反にも加担する、と言っているようなものです。
高位神である自らを、下位の精であるミツスイと白ヘビと同等に並べたばかりでなく、幼い2人と競って、1番にしてほしい、と望んだのです。
姫は、謁見の間の中央に座り込んで、階段の上にある玉座の方を見上げました。闇の中ですから、美しく壮言な彫刻を施した木製の玉座は見えません。でもバラが降臨してそこに座り、この広い謁見の間を明るく照らし出してくれる、と信じたからです。
ですが、闇は途切れることはありません。そんな中、姫の心に声が響きました。
「バラの神は、わたしを裏切って、他の女神のところへ行ったのね。
わたしは許さないわ、わたしを捨てて去ったバラを」
姫はビックリしました。この様な陰湿な言葉を考えた事など無かったからです。孤独に苛まれて、気が病んできたのだと思いました。
もうこの様な邪なことは考えない様にしようと思いましたが、孤独でいる事に耐えられなくなると、姫はバラに対して恨みに似た感情をいだくようになりました。そうすることで、胸の苦しみや、吐き気が緩和されたのです。
バラへの憎しみを込めた言葉を毎日反芻するようになってしまいました。そのような感情をいだき、そのような言葉を考えている事すら気が付きません。
しかし、時折思い出すバラとの幸せな思い出のかけらが、心に滲みます。その度に、姫は自らが堕天しかけていることに気が付いて、絶望しました。
ですが姫は諦めませんでした。なんとかして、自らの本性が闇に沈まないようにしなければ、と考えたのです。
「そんな事をしても無駄よ、バラの神は帰っては来ないわ。
それよりも、他の男神を探してすがりましょう。
バラの神よりも強ければ、魔王でも良いわ」
そう聞こえてくる度にそれを否定して、姫は声に出して言いました。
「バラは決してわたしを裏切ったりしないわ。
バラに悪心があると思うのは、わたしの孤独に生まれた闇に住みついた悪魔の仕業なのでしょう。
どんなに病める時ですら、一緒にいようと誓ったのです。
そう…孤独は偽り。バラは今正にわたしに寄りそっているはずです」
姫は、バラが裏切ったのではなく、自らが裏切ろうとしていたのだと気が付きました。
「こんな苦しい思いをして、バラを想い続けて何になるっていうの?
わたしがバラを捨てさえすれば、この城は、イバラの封印を許してはおかないでしょう?
そうなれば、すぐにでもここから出て、バラに復讐できるのよ」
「何故わたしは、バラがわたしを騙して我が物にして捨てたと思うの? 何故それ以外の可能性を否定して、考えようともしないの?
もしかしたら、やむにやまれぬ事情があって、わたしのもとに来られないだけかもしれないでしょう? 例えば、宮殿に呼ばれて修業しているとか」
姫は、バラのローブやシャツ、下着までもをかき集めて寝室に持って来て、ベッドの上に広げました。
洗濯した綺麗な衣服ですが、バラの神気はとても強いので、香水をつけたかのように高貴な香りを放っています。
ベッドの上で、姫はバラのローブを抱きしめて顔を埋め、胸いっぱいに香りを吸い込みました。そのまま横になって、シーツに移ったバラの残り香を探しました。そうすることで、忘れてしまったバラとの思い出を、なんとか思い出そうとしたのです。
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