生んでくれてありがとう

緒方宗谷

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過去と未来を繋ぐために今がある

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 私達は、生まれてから死ぬまでに、色々な人と出会う。笑ったり泣いたりする。
 私の命は、交流した全ての人の心に記憶として残り、少なからず影響を与え、その影響を受けた人の命が、他の人に影響を与えていく。私を知る人がいなくなっても、その影響は、他の人の影響と混ざり合って、永遠に継がれていく。
 いつか誰かが言っていた。人は2度死ぬと。1度目は生命の死、2度目は忘れ去られることで起こる、記憶の死だ。
 何年かして、佳代は思うようになった。人は死なないと。肉体は滅んでも土に帰り、次の生命を育む。記憶も形を変え、他の記憶と交わり、変化して伝わっていく。
 今私がここにあるのは、お母さんが生んでくれたからだし、おばあちゃんや他のみんなが愛してくれたからだ。そのみんなも生んでくれた人がいて、育ててくれた人たちがいる。そうやって、延々と命は受け継がれてきたのだ。
 時には優しく、時には厳しいお父さんが、どの時代においても道を示してくれていた。私が望まない道であったこともあったし、父の望みと違う道を進んだこともあったが、前を見るといつもお父さんがいた。
 私が、今幸せな生活を送っているのは、今幸せだと思える心を育ててくれたからだ。
 私は、おばあちゃんや両親がしてくれたように、みんなにしてあげたい。千里や、雄太君や、啓太さん、北池の里に住むおじいちゃんおばあちゃん。そして、いつか赤ちゃんを産んで、全身全霊、愛情を注ぎたいと思う。最後のその瞬間に人生を振り返って、その全てが幸せだったと感じてくれる命を育んでいきたい。
 そして、お母さんに、お婆ちゃんに、私は言いたい。生んでくれてありがとうと。そしてみんなに言いたい。生まれてくれてありがとうと。

おわり
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