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花言葉は偽りなき真実の愛、慎み深き清純の恋
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バラは、姫のためなら自らを犠牲にする事が出来ました。そして、姫もバラのためなら自らを犠牲に出来ました。お互いが全身全霊を以て愛を注ぎ、全身全霊を以て、相手の愛を受け入れました。
城がイバラに閉ざされてから数千年が経ちました。スズもハルもバラに会うことはありませんでしたが、バラがとても幸せなのだということは知っています。
バラの精霊と花の姫が城を閉じると、バラの神気は日増しに強くなっていました。弱々しかったツルは太くなり、本性の根元は木の幹の様に変化したのです。
城を覆う茨には、赤、白、黄、黒、ピンク色、剣弁、半剣弁、丸弁、一重咲き、八重咲き、様々な花弁を持つ無数のバラが咲いていきました。小さな花しか咲かせることの出来なかったバラは、長い年月をかけて、色鮮やかな花を咲かせるようになっていったのです。
とても良い香りが城の敷地に充満し、うっとりとせざるを得ない空間を演出しています。全ての花に蜜が溢れています。このバラ1輪1輪が、バラと姫の子供達なのでした。毎年1種類ずつ増えていくバラの花を見つけるのが、スズとハルの楽しみでした。
花の主神は、幾多のバラが咲き誇るその光景を見て、城の中で姫が幸せに暮らしている事を知ることが出来ます。それに、城を取り囲むお堀には、水面が見えないほどに睡蓮が咲いています。
バラは気が付きました。自分のイバラのトゲは、みんなを傷つけるためあるのではなく、自分を好きでいてくれる姫と、イバラの中に住む友達を守るためにあったんだと。
人の世に、幾万もの種類のバラがあるのは何故でしょうか。人が愛を語る時に、バラを贈るのは何故でしょうか。それは、バラの主神と花の姫が一途に愛し合っているからなのです。
いつしか城は、高貴のバラと呼ばれるようになりました。眩い神気を発して輝き、その美しさと香りに当てられた精霊達は、城を見上げる度に愛を賛美しないではいられません。
城を覆うイバラに新しいバラが咲くたびに、地上でも新しいバラが生まれました。
霊的に力のあった人は、人間界にやってきた神や精霊からバラの神話を聞いて、人々に伝えました。そして、バラにまつわる物語が次々と編み出され、色々な形に姿を変えた2人の愛情深い物語を聞いて感動しました。
バラが姫に捧げる愛は、地上を飾るバラにも満ち満ちており、その香気や色彩を通して人々の愛にも影響していました。ですから人は、バラの花言葉を『愛』にしたのです。
そして睡蓮の花もまた同じように人々の間で親しまれました。その美しく可憐な花は『慎み深い恋心』を表し、『乙女を象徴する純粋さ』と、『淑女たる強さ』を兼ね備えています。
幼い頃より彼女が示してきたバラへの愛情は、まさに花言葉の通りでした。当然です。姫がお伝えになられた御心と御手の示した行動が、花言葉になったのですから。
おしまい
城がイバラに閉ざされてから数千年が経ちました。スズもハルもバラに会うことはありませんでしたが、バラがとても幸せなのだということは知っています。
バラの精霊と花の姫が城を閉じると、バラの神気は日増しに強くなっていました。弱々しかったツルは太くなり、本性の根元は木の幹の様に変化したのです。
城を覆う茨には、赤、白、黄、黒、ピンク色、剣弁、半剣弁、丸弁、一重咲き、八重咲き、様々な花弁を持つ無数のバラが咲いていきました。小さな花しか咲かせることの出来なかったバラは、長い年月をかけて、色鮮やかな花を咲かせるようになっていったのです。
とても良い香りが城の敷地に充満し、うっとりとせざるを得ない空間を演出しています。全ての花に蜜が溢れています。このバラ1輪1輪が、バラと姫の子供達なのでした。毎年1種類ずつ増えていくバラの花を見つけるのが、スズとハルの楽しみでした。
花の主神は、幾多のバラが咲き誇るその光景を見て、城の中で姫が幸せに暮らしている事を知ることが出来ます。それに、城を取り囲むお堀には、水面が見えないほどに睡蓮が咲いています。
バラは気が付きました。自分のイバラのトゲは、みんなを傷つけるためあるのではなく、自分を好きでいてくれる姫と、イバラの中に住む友達を守るためにあったんだと。
人の世に、幾万もの種類のバラがあるのは何故でしょうか。人が愛を語る時に、バラを贈るのは何故でしょうか。それは、バラの主神と花の姫が一途に愛し合っているからなのです。
いつしか城は、高貴のバラと呼ばれるようになりました。眩い神気を発して輝き、その美しさと香りに当てられた精霊達は、城を見上げる度に愛を賛美しないではいられません。
城を覆うイバラに新しいバラが咲くたびに、地上でも新しいバラが生まれました。
霊的に力のあった人は、人間界にやってきた神や精霊からバラの神話を聞いて、人々に伝えました。そして、バラにまつわる物語が次々と編み出され、色々な形に姿を変えた2人の愛情深い物語を聞いて感動しました。
バラが姫に捧げる愛は、地上を飾るバラにも満ち満ちており、その香気や色彩を通して人々の愛にも影響していました。ですから人は、バラの花言葉を『愛』にしたのです。
そして睡蓮の花もまた同じように人々の間で親しまれました。その美しく可憐な花は『慎み深い恋心』を表し、『乙女を象徴する純粋さ』と、『淑女たる強さ』を兼ね備えています。
幼い頃より彼女が示してきたバラへの愛情は、まさに花言葉の通りでした。当然です。姫がお伝えになられた御心と御手の示した行動が、花言葉になったのですから。
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