愛するということ

緒方宗谷

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エピローグ

1.有紀子と陸の大学生活

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 なんだかんだ言って、高校を卒業すれば陸との関係は希薄になる、と有紀子は覚悟していた。今まで読んだ恋愛小説や漫画、見ていたドラマを思い返す。大抵最後は別れるのだ。
 卒業とかでこれといった事情もなく別れたり、物語の最後の方で急転直下の大事件が起きたりして、ヒロインの恋は終わりを告げる。
 有紀子と加奈子と陸、3人は別々の大学に進学した。
 不思議なことに、加奈子は都心の大学に進学したのに23区に引っ越さなかった。有紀子は練馬区に引っ越す予定だったので、それを知った加奈子はちょっと残念そうだった。 
 でも加奈子は、有紀子の家から大学に通えると、ちょっと嬉しげだ。加奈子にしてみれば、有紀子のそばにいるために引っ越さなかったのだから、逆に好都合。通学距離は短い方が良い。通学距離短縮を口実にお泊りできる。
 それを聞いた有紀子は、加奈子に家賃代わりにご飯をおごらせよう、と密かに考えていた。
 陸は、有紀子と同じ大学に入りたかったが、学力が足りなくて断念した。もともと頭は良いのだが、記憶が回復してしまったがために、今まで勉強したことを全て忘れてしまったのだ。
 日本語や英語は覚えているのに、なんで数学や歴史は忘れるんだと陸は嘆きながら、勉強に追われる毎日に高3の最後を潰した。それでも一度やったことだから、意外に飲みこみは早く、困難と思われた大学(記憶喪失時なら楽勝の)にギリギリ合格した。
 大学のある地区は、それぞれ違う。有紀子が練馬に住むことを知った陸は、西武線で大学に行けることもあって、同じ練馬に住むことにした。加奈子が有紀子の家に入り浸っているから、結局高校時代とあまり変わらない付き合いだった。
 その後も特別関係が壊れることなく、意外にも長く3人の関係は緩やかに続いている。
 有紀子と陸は、相変わらず一線を超えることは無かった。ただお互いの家にお泊りしたりする関係だ。そのイチャイチャぶりは見ている方が恥ずかしくなるほどだった。
 有紀子としては、いい加減抱いてほしい、と少しムスッとした感がある。でも陸はしないことが愛情の示し方だと考えているらしい。それはそれで自分を大切にしてくれている、と有紀子は嬉しく思うが、「「「女にだって性欲はあるんだよー‼‼‼‼」」」と叫びたい気分でいっぱいだ。
 陸が不能者でないことは、彼の朝の生理現象から明らかだった。それなのに、陸はあまり性に対して積極的ではない。なのに大学で女性から好意を持たれれば、やっぱりふらふら~、となびいてしまう。大学でも結構モテるようだから、有紀子は気が気ではない。
 随分と矛盾した陸の心理だったが、陸は気にも留めていないように思える。
 有紀子も昔の脳波の乱れの話は聞いていたから、もしかしたら何か脳に損傷が残っているのかもしれない、と思った。だから温かく見守る(箱入り彼氏)ことにした。
 陸は、どことなく他の男性とは違う雰囲気を醸し出している。感情の波が緩やかで、ふんわかした(人によってはドライと言うが)した感じだ。
 関係は高校の時と変わらなかったけれど、可もなく不可もない。どちらかといえば楽しい日々が連なって日常となっていた。


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