愛するということ

緒方宗谷

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56.思考の進化

2.連邦軍の話

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 加奈子が有紀子のベッドに寝そべって、クスクスと思い出し笑いをした。「どうしたの?」と有紀子が訊くと、加奈子は側臥して有紀子に話し始めた。
「体と心が一致していない感じはする。一時はそれが不安で仕方なかったけれど、今はそんな感じはしないの。どうしてだと思う?」
「??? 分かんない」
 生理が始まった当初は、とても思い悩んだ加奈子だった。それでもネットで見るセクシャリティで悩む人の話や、ヒロちゃんの様な体験は無い。どちらかといえば幸せな人生を歩んでいる。
 加奈子が、想いを馳せるような視線を宙に浮かべて、ほんの少し間を置いてから話し始めた。
「前に、ファンタジーのキャラに憧れたって話したことあるでしょ? あんな感じの感覚を昔感じて、今も感じてるの。
 小6の時の男子の友達がロボットのゲームに熱中していて、私もハマッたことがあるんだよね。その時に思ったの。ああ、私は女という体に乗り込んだんだなって。
 私は、女子と呼称された体に乗り込んだ村上加奈子というパイロットなんだって。そう思ったら、急に楽しくなったことを覚えてる。
 今もそうだけど、私が何者なのか私自身が分かっていないじゃない? もしかしたらパンセクシャルかもしれないし」
「オプションみたいなもの? 髪型を変えたり二重にしたりして自分を表現するみたいに、自分を表せられる属性に変えられるの?」
「うん、私の場合、まだセクシャリティが定まっていないから出来るんだと思うけど。
 ステージや敵に合わせて装備を変えるように、女の子女の子してみたり、男の子っぽくしてみたり」
 確かに、男子と遊んでいる時と女子と遊んでいる時で、加奈子の雰囲気は違う。すごい演技派だと有紀子は感心した。
 少し考え込む有紀子に微笑みを送って、加奈子が続ける。
「でも、有紀か陸君といると、一番自分らしく感じる。ああ、これが普通な自分なんだなって。面白いよね、相手が女子と男子で真逆なのに、私は同じ自分なんだよ。そう思うと私が何だか分からないよ、女子って何? 男子って何? って感じ。
 でもそれでいいの、有紀は私を嫌わないでくれるし、多分陸君も嫌わないでくれる」
 複雑に考えると、自分は男子の体になりたい気もするし、女子の体のままでいたい気もする。心も女子である気もするし男子だと思う時もある。男子に恋愛感情をいだいたことは無いけれど、どちらに対しても性への憧れはあるように思えた。
 自分でも理解できていないことを有紀子に話しても混乱するだけだろう、と思った加奈子は、複雑な胸のうちを事細かに説明しない。
 それを心に秘めたまま、加奈子は笑って言った。
「陸君のあの手紙面白いね。あんな考え方あるんだね。アーティスティックな感覚の持ち主みたい。陸君そっちだったりして」
「もしそうならバイセクシャルでお願いします。そうでないとわたし出る幕無くなっちゃう」
 有紀子は笑って受け答えた。

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