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56.思考の進化
1.SOGI
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冬休みに入って、有紀子はしばらくぶりに性属性についての随筆書を何冊か読んだ。難しくて良く分からない。けれど、加奈子は自分の属性が周りと違うと悩んでいるというより、SOGIで悩んでいるというように有紀子には思える。
加奈子はLなのかBなのかTなのか定まっていない。だが有紀子にカミングアウトしてから、少し楽になったと言う。期限があるわけでも無い。加奈子は、今は属性がはっきりしなくても良い、と思うようになっているようだ。
服を選ぶようにゆっくりと楽しみながら、自分に一番良く合う属性を定められたらと思うようになった、と有紀子に語った。
有紀子は、そういえば、と陸の手紙を思い出した。中学時代に陸がヒロちゃんに宛てた手紙のことだ。ヒロちゃんが有紀子たちのために、わざわざコピーを東京に送って来てくれた。悲惨なカミングアウトの後に、ひとえを通して陸からもらったものらしい。
『俺、ヒロちゃんのことすごくカッコイイと思うよ。俺とてもあまのじゃくだからかもしれないけど、人と違うという一点でとても特別に思うんだ。新鋭的というか、特殊なセンスがあるというか。
だってすごくない? 同姓を好きになれるって俺には無い感覚だし、男や女と違った視点があるって武器だと思ったよ。
ヒロちゃんがイジメられているのを見てから、ああ俺はなんて浅はかだったんだろうって思うようになって。だから、ヒロちゃんを助けてあげたいって思ったんだ。
みんな仲間だよ。特に女子。守ってくれるよ。ヒロちゃんをイジメるやつなんか、女子総出でリンチすると思う。女こえーから。
なんかあったら俺にも言えよ。
P.S 俺達友達な。あと彼女いるから俺のこと襲うなよ(笑)
陸より』
陸の部屋で、有紀子と加奈子と陸の3人で、この手紙を読んだ時、陸は興味津々で手紙を覗き込んだ。
「へぇ、僕こんなこと思ってたんだ。なんか面白い」
「ゲームみたいな感じ?」
加奈子がそう言って、キョトンと自分を見る陸に説明した。
「ほら、職業を選んだりするやつ。ファンタジーだとエルフとかドラゴンと人間のハーフとか、特殊な力があり過ぎて差別されちゃうキャラ。そういえば、わたしもそういうのに憧れた」
陸はビックリした。加奈子がセクシャリティで悩んでいることを陸は知らない。特撮のダークヒーローに憧れる男の子のようだと勘違いした。
加奈子は、それに対して深く言及しなかった。だが、自分のことを陸に言ったとしても優しく受け入れてくれるだろう。この確信に曇りは微塵もない。心からそう思えて嬉しかった、と後に有紀子に語った。
有紀子はそのやり取りを思い出して、加奈子の心の負担が少しでも軽くなることを願った。
加奈子はLなのかBなのかTなのか定まっていない。だが有紀子にカミングアウトしてから、少し楽になったと言う。期限があるわけでも無い。加奈子は、今は属性がはっきりしなくても良い、と思うようになっているようだ。
服を選ぶようにゆっくりと楽しみながら、自分に一番良く合う属性を定められたらと思うようになった、と有紀子に語った。
有紀子は、そういえば、と陸の手紙を思い出した。中学時代に陸がヒロちゃんに宛てた手紙のことだ。ヒロちゃんが有紀子たちのために、わざわざコピーを東京に送って来てくれた。悲惨なカミングアウトの後に、ひとえを通して陸からもらったものらしい。
『俺、ヒロちゃんのことすごくカッコイイと思うよ。俺とてもあまのじゃくだからかもしれないけど、人と違うという一点でとても特別に思うんだ。新鋭的というか、特殊なセンスがあるというか。
だってすごくない? 同姓を好きになれるって俺には無い感覚だし、男や女と違った視点があるって武器だと思ったよ。
ヒロちゃんがイジメられているのを見てから、ああ俺はなんて浅はかだったんだろうって思うようになって。だから、ヒロちゃんを助けてあげたいって思ったんだ。
みんな仲間だよ。特に女子。守ってくれるよ。ヒロちゃんをイジメるやつなんか、女子総出でリンチすると思う。女こえーから。
なんかあったら俺にも言えよ。
P.S 俺達友達な。あと彼女いるから俺のこと襲うなよ(笑)
陸より』
陸の部屋で、有紀子と加奈子と陸の3人で、この手紙を読んだ時、陸は興味津々で手紙を覗き込んだ。
「へぇ、僕こんなこと思ってたんだ。なんか面白い」
「ゲームみたいな感じ?」
加奈子がそう言って、キョトンと自分を見る陸に説明した。
「ほら、職業を選んだりするやつ。ファンタジーだとエルフとかドラゴンと人間のハーフとか、特殊な力があり過ぎて差別されちゃうキャラ。そういえば、わたしもそういうのに憧れた」
陸はビックリした。加奈子がセクシャリティで悩んでいることを陸は知らない。特撮のダークヒーローに憧れる男の子のようだと勘違いした。
加奈子は、それに対して深く言及しなかった。だが、自分のことを陸に言ったとしても優しく受け入れてくれるだろう。この確信に曇りは微塵もない。心からそう思えて嬉しかった、と後に有紀子に語った。
有紀子はそのやり取りを思い出して、加奈子の心の負担が少しでも軽くなることを願った。
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