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54.高知
2.気分は観光
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「わ! 見て椰子だよ、椰子! 南国って感じがする」
朝8時。加奈子のはしゃぎようは尋常ではない。駅にあったパンフレットをいくつも胸に抱えて叫ぶ。
駅前の道路はとても広く、路面電車が走っている。パンフレットに掲載された地図を見ると、縦横無尽に線路が引かれ、しかも沢山のバスの路線もある。
「まさか、私達の地元より発展してるんじゃ……」
加奈子ががに股で愕然とする。
高知の人には悪いが、2人は東京の方が発展していると思い込んでいた。「ごめんなさい。私達の地元は畑しかないです」と2人で謝る。まだ朝早くて人のいない駅前でゲラゲラ笑った。
「ごめんなさーい‼」
びっくりするほど大きい声で加奈子が叫ぶ。大通りの向こうから路面電車が来たので2人は乗ったが、加奈子の思わぬ一言ですぐ隣の駅で降りた。
「これ見て、ここで降りてまっすぐ行くとお城があるよ、見に行こうよ」
「えぇ⁉ 大葉君に会いに行くんじゃないの?」
「大丈夫大丈夫、こう行ってこう行けばまた大通りだから、そこでまた電車に乗ろう」
お城の中には入らなかったが、椰子の木が並ぶ道路からお城を眺めた。2人は、通行人に天守閣をバックに写真を撮ってもらって、完全に観光気分。結局そばにあった大きな神社でお参りをして、坂本龍馬生誕の地を見てから、大葉の家を目指した。
龍馬生誕の地の前の大通りでバスを待っている時間、不意に加奈子がため息を漏らす。
「うーん、ひもじい。高知まで来てコンビニぱんとは、我ながら情けないのう」
「文句言わないの、私のおごりなんだから」
コンビニのななまーとにあるATMでお金を下ろした有紀子は、菓子パン2つと、サラダチキン2つ、ペットボトルの紅茶2本を買った。
「でも、本当南国って感じだね」加奈子が仕切り直す。
「加奈子はもっと南国に行ったことあるでしょ? 沖縄とか」
「うん、まあそうなんだけど、沖縄って足立区だよ」
「意味分かんない」
有紀子は爆笑した。沖縄と言えば、シーザーが出迎える平屋の家屋、水牛の牛車とサンゴの塀。新しい建物と言えば、青色がアクセントの白い壁のマンションとかだ。テレビで見るTHE沖縄といったイメージしかない。
到着直前、バスの中で2人は、終始ご飯の話をしていた。お昼か夜はちゃんと食べたい。観光目的ではないとはいえ、さすがに四国まで来たのだ。2人は土佐の郷土料理が食べたかった。日帰り(0泊3日)だからゆっくり観光は出来ない。その代り領土料理はちゃんと食べよう、ということになった。
「もちろん、ゆっこちゃんのおごりでね♡」
加奈子が、ケーキ屋さんの可愛いマスコットの女の子の様に舌を出し、頬をすくめてにっこりと微笑んだ。有紀子の耳に、なんか「うふっ😘😋🥰💘」と幻聴が聞こえてくるほどの笑顔で。
深夜バス代を出してもらっている手前なにも言えない有紀子は、「しょうがないなー」とわざとしかめてみせた。
朝8時。加奈子のはしゃぎようは尋常ではない。駅にあったパンフレットをいくつも胸に抱えて叫ぶ。
駅前の道路はとても広く、路面電車が走っている。パンフレットに掲載された地図を見ると、縦横無尽に線路が引かれ、しかも沢山のバスの路線もある。
「まさか、私達の地元より発展してるんじゃ……」
加奈子ががに股で愕然とする。
高知の人には悪いが、2人は東京の方が発展していると思い込んでいた。「ごめんなさい。私達の地元は畑しかないです」と2人で謝る。まだ朝早くて人のいない駅前でゲラゲラ笑った。
「ごめんなさーい‼」
びっくりするほど大きい声で加奈子が叫ぶ。大通りの向こうから路面電車が来たので2人は乗ったが、加奈子の思わぬ一言ですぐ隣の駅で降りた。
「これ見て、ここで降りてまっすぐ行くとお城があるよ、見に行こうよ」
「えぇ⁉ 大葉君に会いに行くんじゃないの?」
「大丈夫大丈夫、こう行ってこう行けばまた大通りだから、そこでまた電車に乗ろう」
お城の中には入らなかったが、椰子の木が並ぶ道路からお城を眺めた。2人は、通行人に天守閣をバックに写真を撮ってもらって、完全に観光気分。結局そばにあった大きな神社でお参りをして、坂本龍馬生誕の地を見てから、大葉の家を目指した。
龍馬生誕の地の前の大通りでバスを待っている時間、不意に加奈子がため息を漏らす。
「うーん、ひもじい。高知まで来てコンビニぱんとは、我ながら情けないのう」
「文句言わないの、私のおごりなんだから」
コンビニのななまーとにあるATMでお金を下ろした有紀子は、菓子パン2つと、サラダチキン2つ、ペットボトルの紅茶2本を買った。
「でも、本当南国って感じだね」加奈子が仕切り直す。
「加奈子はもっと南国に行ったことあるでしょ? 沖縄とか」
「うん、まあそうなんだけど、沖縄って足立区だよ」
「意味分かんない」
有紀子は爆笑した。沖縄と言えば、シーザーが出迎える平屋の家屋、水牛の牛車とサンゴの塀。新しい建物と言えば、青色がアクセントの白い壁のマンションとかだ。テレビで見るTHE沖縄といったイメージしかない。
到着直前、バスの中で2人は、終始ご飯の話をしていた。お昼か夜はちゃんと食べたい。観光目的ではないとはいえ、さすがに四国まで来たのだ。2人は土佐の郷土料理が食べたかった。日帰り(0泊3日)だからゆっくり観光は出来ない。その代り領土料理はちゃんと食べよう、ということになった。
「もちろん、ゆっこちゃんのおごりでね♡」
加奈子が、ケーキ屋さんの可愛いマスコットの女の子の様に舌を出し、頬をすくめてにっこりと微笑んだ。有紀子の耳に、なんか「うふっ😘😋🥰💘」と幻聴が聞こえてくるほどの笑顔で。
深夜バス代を出してもらっている手前なにも言えない有紀子は、「しょうがないなー」とわざとしかめてみせた。
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