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53.闇サイト
4.それぞれの受け止め方
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最終的に、陸には彼女がいるからゲイではないが酷いヤツだという噂が残った。初めはとても悪意のある噂として広まったが、結果的には陸の評判を傷つけるものにはならなかった。
そもそも広めたのは、以前シャーペン事件でボコボコにされた男子3人(土下座した1人は、噂を広めるのには消極的だった)だったからだ。陸を恨んで嫌がらせのために噂を広めただけなのだ。
裏サイトの映像は、高知のナヨナヨした男子と陸が仲が良い(良すぎる)、と言うだけの映像だった。悪意を持って見れば、只ならぬ関係をはらんでいるようにも見えなくない。だが、それだけだ。決定的な映像を含んでいるわけではなかった。
それでも、黒髪の今とは違って顎にかかるほど前髪の長い茶髪姿(新しい10円玉色)。ヘッドロック(実際は肩を組んでいるだけだが、奇異の目で閲覧した生徒にはそう映った)をかけている映像や、「オネエオネエ」と連呼する様子は、一部の生徒に影響を残した。
仲が良いように見せかけたイジメだと考える生徒もいたのだ。楽しんでいるのは陸だけで、相手はつらかっただろう、と言う。
陸がどの様なセクシュアリティかは分からない。でも加奈子は強い不信感をいだいた。とても憤っていた。自分は普通じゃない、と悩んでいたから尚更だ。
加奈子が、有紀子のもとに椅子を持ってきて腰掛け、言った。
「陸君のやつ、人の気持ちが分からないやつだったなんて知らなかった。有紀、あんなやつやめちゃいなよ」
「うーん、でも映像だけじゃ、その場の雰囲気は分からないよね。変な噂が流れた後だから、そういう先入観で見ているだけかも」
加奈子の気持ちは良く分かる、と有紀子は思った。加奈子は自分が性のことでとても悩んでいる。あの動画の相手は自分なのだ。
実際、加奈子は有紀子が考えていた通りのことで憤っていた。だが、それは大元になっただけで、全く別のことを考えていた。
一目ぼれだったのだ。初めて会った時から、加奈子は有紀子のことが好きだった。実際にはドキドキした程度のものだから、一目ぼれというほどかは分からないが、そう信じている。
それに加えて、陸に対しても一種の憧れをいだいていた。加奈子は、陸にいだくこの気持ちが何なのか、いつも考えていた。もしこれが好きの種なのならば、私は異性愛者だ。有紀子への想いは勘違いだ。一般常識の中に入れる、と期待していた。
だが同時に、陸への憧れは『好き』という意味を含んでいるわけではなく、陸になりたいという気持ちのようにも思えた。結局加奈子は、ますます自分の性が分からなくなっていた。
頭が重い。左右のこめかみの奥がジンジンする。自分の性が定まらない今の状況を変えたかった。そのためには、2つの手段がある、と加奈子は考えていた。
1つは陸に抱かれることだ。だか、それは有紀子の手前出来ない。だからもう1つの方を考えていた。
もう1つとは、有紀子を陸とくっつけることによって、有紀子を諦めることだった。
だが、あんなやつに有紀子をわたしたくない。加奈子は、そのジレンマに苛まれていたのだ。
そもそも広めたのは、以前シャーペン事件でボコボコにされた男子3人(土下座した1人は、噂を広めるのには消極的だった)だったからだ。陸を恨んで嫌がらせのために噂を広めただけなのだ。
裏サイトの映像は、高知のナヨナヨした男子と陸が仲が良い(良すぎる)、と言うだけの映像だった。悪意を持って見れば、只ならぬ関係をはらんでいるようにも見えなくない。だが、それだけだ。決定的な映像を含んでいるわけではなかった。
それでも、黒髪の今とは違って顎にかかるほど前髪の長い茶髪姿(新しい10円玉色)。ヘッドロック(実際は肩を組んでいるだけだが、奇異の目で閲覧した生徒にはそう映った)をかけている映像や、「オネエオネエ」と連呼する様子は、一部の生徒に影響を残した。
仲が良いように見せかけたイジメだと考える生徒もいたのだ。楽しんでいるのは陸だけで、相手はつらかっただろう、と言う。
陸がどの様なセクシュアリティかは分からない。でも加奈子は強い不信感をいだいた。とても憤っていた。自分は普通じゃない、と悩んでいたから尚更だ。
加奈子が、有紀子のもとに椅子を持ってきて腰掛け、言った。
「陸君のやつ、人の気持ちが分からないやつだったなんて知らなかった。有紀、あんなやつやめちゃいなよ」
「うーん、でも映像だけじゃ、その場の雰囲気は分からないよね。変な噂が流れた後だから、そういう先入観で見ているだけかも」
加奈子の気持ちは良く分かる、と有紀子は思った。加奈子は自分が性のことでとても悩んでいる。あの動画の相手は自分なのだ。
実際、加奈子は有紀子が考えていた通りのことで憤っていた。だが、それは大元になっただけで、全く別のことを考えていた。
一目ぼれだったのだ。初めて会った時から、加奈子は有紀子のことが好きだった。実際にはドキドキした程度のものだから、一目ぼれというほどかは分からないが、そう信じている。
それに加えて、陸に対しても一種の憧れをいだいていた。加奈子は、陸にいだくこの気持ちが何なのか、いつも考えていた。もしこれが好きの種なのならば、私は異性愛者だ。有紀子への想いは勘違いだ。一般常識の中に入れる、と期待していた。
だが同時に、陸への憧れは『好き』という意味を含んでいるわけではなく、陸になりたいという気持ちのようにも思えた。結局加奈子は、ますます自分の性が分からなくなっていた。
頭が重い。左右のこめかみの奥がジンジンする。自分の性が定まらない今の状況を変えたかった。そのためには、2つの手段がある、と加奈子は考えていた。
1つは陸に抱かれることだ。だか、それは有紀子の手前出来ない。だからもう1つの方を考えていた。
もう1つとは、有紀子を陸とくっつけることによって、有紀子を諦めることだった。
だが、あんなやつに有紀子をわたしたくない。加奈子は、そのジレンマに苛まれていたのだ。
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