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53.闇サイト
2.属性と真偽
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噂はもう一つあった。陸がイジメていた男子生徒と関係があった、というものだ。実は陸もゲイで、男子の恋人がいた、という内容だった。
しかしその内容は、噂する生徒によって異なっている。1つ目は、普通にお付き合いしている、という内容。2つ目は、イジメて無理やり関係を受け入れさせた、という内容。この2つ目は2種類あって、1つは相手がマジョリティであるといったものと、もう一つはマイノリティである、というもの。
だが、陸のゲイ説は、その日の内にすぐに立ち消えた。知恵という彼女がいたからだ。2人が関係を持っていることはほとんどの人が知らないが、下校時の密着したイチャイチャぶりから、2人は結ばれているという話が、まことしやかに噂されていたことがある。みんなは、そちらの噂を信じた。
廊下を歩みながら教室の中を見やった里美が、「この噂の中、学校に来られるなんて、陸君は強いね」と柚奈と萌愛に言った。
「ざまぁみろです」と柚奈。
「柚奈は信じてるの?」と萌愛が訊くと、柚奈は「分かんない」、と答えて続けた。
「でも、闇サイトではオネエ系と仲良さそうだったし、なんかやだなぁって思った」
その返答を聞いた萌愛は、何も答えない。代わりに里美が話を引き継いで答えた。
「セクシャリティは男女だけじゃないよ。統計にもよるけど、100人に7人位は男女で分けられない性の人がいるから。
アメリカでは結構普通だったけど、日本じゃまだ認められていないよね」
「私が間違っているってこと?」
そう言った柚奈に、里美が考えを述べる。
「無知はヘイトに繋がる。私や柚奈が受けたヘイトは、無知が不安を呼んで、不安を解消するために、不安の対象である私達へ感情をぶつけようとする。そしてそれがヘイトへと発展する。それが、ヘイトの1つの構造じゃないかな」
柚奈は俯いて、一言「ごめん」と謝った。
アメリカ時代の里美には、レズビアンやゲイの友達が何人かいた。クラスメイトにゲイが2人いたが、2人共それを隠す様子は無くあけっぴろげていた。あけっぴろげていたといっても、日本のテレビに出てくるオネエ系のように、その属性をネタにした感じではない。
オネエ系タレントの人気は下火になったが、今たまに見るオネエ系タレントは、場に溶け込んでいるように思えた。昔人気があった時より、アメリカで見た人間関係に近い。
里美にとって、闇サイトの映像は何でもない。耐性のない生徒はびっくりしたのだろうが、アメリカで生活した経験のある里美にとって、陸の反応は普通である。
だから、日本育ちの陸が先進的(いや、それで普通だ。みんなが遅れているのだから)な思考の持ち主であることが、里美は嬉しかった。(さすが私が好きになった人だ)と思った。
みんなは、慣れていないことが突然起こったので、対応しきれていないでいるのだろう。このぎこちなさはすぐに解消される、と里美には分かっていた。里美は陸のそばに寄りそってあげたかったけれど、有紀子に遠慮してそれはしなかった。
しかしその内容は、噂する生徒によって異なっている。1つ目は、普通にお付き合いしている、という内容。2つ目は、イジメて無理やり関係を受け入れさせた、という内容。この2つ目は2種類あって、1つは相手がマジョリティであるといったものと、もう一つはマイノリティである、というもの。
だが、陸のゲイ説は、その日の内にすぐに立ち消えた。知恵という彼女がいたからだ。2人が関係を持っていることはほとんどの人が知らないが、下校時の密着したイチャイチャぶりから、2人は結ばれているという話が、まことしやかに噂されていたことがある。みんなは、そちらの噂を信じた。
廊下を歩みながら教室の中を見やった里美が、「この噂の中、学校に来られるなんて、陸君は強いね」と柚奈と萌愛に言った。
「ざまぁみろです」と柚奈。
「柚奈は信じてるの?」と萌愛が訊くと、柚奈は「分かんない」、と答えて続けた。
「でも、闇サイトではオネエ系と仲良さそうだったし、なんかやだなぁって思った」
その返答を聞いた萌愛は、何も答えない。代わりに里美が話を引き継いで答えた。
「セクシャリティは男女だけじゃないよ。統計にもよるけど、100人に7人位は男女で分けられない性の人がいるから。
アメリカでは結構普通だったけど、日本じゃまだ認められていないよね」
「私が間違っているってこと?」
そう言った柚奈に、里美が考えを述べる。
「無知はヘイトに繋がる。私や柚奈が受けたヘイトは、無知が不安を呼んで、不安を解消するために、不安の対象である私達へ感情をぶつけようとする。そしてそれがヘイトへと発展する。それが、ヘイトの1つの構造じゃないかな」
柚奈は俯いて、一言「ごめん」と謝った。
アメリカ時代の里美には、レズビアンやゲイの友達が何人かいた。クラスメイトにゲイが2人いたが、2人共それを隠す様子は無くあけっぴろげていた。あけっぴろげていたといっても、日本のテレビに出てくるオネエ系のように、その属性をネタにした感じではない。
オネエ系タレントの人気は下火になったが、今たまに見るオネエ系タレントは、場に溶け込んでいるように思えた。昔人気があった時より、アメリカで見た人間関係に近い。
里美にとって、闇サイトの映像は何でもない。耐性のない生徒はびっくりしたのだろうが、アメリカで生活した経験のある里美にとって、陸の反応は普通である。
だから、日本育ちの陸が先進的(いや、それで普通だ。みんなが遅れているのだから)な思考の持ち主であることが、里美は嬉しかった。(さすが私が好きになった人だ)と思った。
みんなは、慣れていないことが突然起こったので、対応しきれていないでいるのだろう。このぎこちなさはすぐに解消される、と里美には分かっていた。里美は陸のそばに寄りそってあげたかったけれど、有紀子に遠慮してそれはしなかった。
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