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48.Wデート
3.陸♡里美 💘
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陸とのデートの日がやって来た。里美は、最高のコーディネートだと思って選んだワンピースを着て準備万端整っている。それなのに、出発直前になってから、ベッドの上にワンピースを並べて、胸の前で腕を組み仁王立ちでにらめっこをしていた。
昨日の晩まで何度もどの服を着ていくか悩んで決めたのに、当日朝になって、やっぱりあれにしようかこれにしようかどれにしようか、と里美は迷ってしまった。
2時半にたこ焼きを食べることを考えると、お昼は早めに済ませた方がいい。そう考えた里美は、11時に一橋学園駅で待ち合わせをして、玉川上水の遊歩道にあるベンチで軽いランチを楽しもう、と陸を誘っていた。
駅前で待つ陸は、とても人目を引く。若い葉桜の様に快活な立ち姿、青々とした光を弾くその梢の陰から、まだ散らずに残っていた薄桃色の花びらを覗かせているようだ。
里美は、そんな陸に見惚れて、このまま時が止まってしまえばいいのに、と思う。ずっと見ていたかったが、陸に気付かれて歩みより、声をかけた。
「陸君、こんにちは。もしかして待ったぁ?」
「ううん、待ってないよ」
手を振って駆け寄る里美に、陸は頬を撫でるような優しさをもって右手を挙げて答える。
里美は、お気に入りのフリースのワンピースを着てきた。結局昨日決めた通りの装いだ。
「陸君、今日はありがとう」里美は、伸ばした右手の肘に左手を添えて、スカートを揺らす。
「いいよ、僕も曾おばあちゃんにはお世話になってるし」
上目づかいではにかみながら自分を見上げる里美と視線が絡んで、陸は、少し照れながら笑顔を返す。
2人の家の最寄り駅である一橋学園駅は、玉川上水と交差している。駅から少し歩いて行って、遊歩道にあるベンチに腰かけた。
コナラの木が並ぶとても清涼な景色だ。とても長い遊歩道で、左右を民家に囲まれているにもかかわらず、静かな林の中にいるみたいに思わせてくれる。心なしか、空気も違う気がする。里美はこの景色が好きだった。
この時期は、コゲラが並木の幹を行ったり来たり飛び回って、表皮を突いている。
コゲラとは、黒っぽい羽に白色が混ざった小さなキツツキだ。
そばの木にとまったコゲラを見て、陸が笑った。
「ギーギーだって、小さくて可愛いのにすごい鳴き方」
「そう、変な声。でもよく人が近くにいても飛んで逃げていかないね」
「引っ越してきてから1年以上経つのに気が付かなかった」
陸はそう言って、里美にお礼を伝えた。
嬉しさいっぱいの里美は、照れを隠すように、持ってきたリュックからバスケットを取り出して抱える。
「実はね、今日サンドウィッチ作ってきたの」
「わぁ本当?」
里美は、家の近い柚奈と2人でよく遊歩道でピクニックをしていた。ふたを開けてランチクロスを広げながら、里美は自分の頑張りを一生懸命伝えようとする。
「手作りサンドウィッチが私のウリなの。本場アメリカ仕込みだから、とても人気があるんだっ。家族と柚奈や萌愛も美味しいって言ってくれるし、お母さんのお友達にも大変な人気なの。
アメリカのお友達にもすごい好評で、お店出したらって言われたこともあるんだ♪」
メニューはシンプルで、数種類のサンドウィッチとピクルスのみ。柚奈とピクニックする時は、ポットにスープとホットかアイスのミルクティを入れて持ってくる。今日はお出かけ予定なので、自動販売機で飲み物を買った。
今日はいつもより彩りに力を入れた。里美はわざわざ紫色の玉ねぎを買ってきたし、サンドウィッチの種類も倍の6種類(軽くないぞ?)だ。厚めに切った食パンに切れ込みを入れて具材をはさんだタイプのサンドウィッチ。チキン、ハム、卵、レタス、クロックムッシュと具だくさんなやつ。どれもこれもこれでもかっていうほど具が挟んである。ボリューム満点だ。
特にパンの厚みより具の方が厚い具だくさんボリュームサンドは圧巻だ。なんと具が6層もある。レタス、トマト、ゆで卵、アボガド、人参、紫玉ねぎ、生ハム。
それを見て陸は、(なんかサンドウィッチの大様がいる)と思った。
ココットに玉ねぎとキュウリとニンジンのピクルスが添えてあって、目にも優しい。
使い捨てのペーパーボックスに詰めようかと迷ったけれど、里美はお気に入りのアケビの蔓を笊目編みにしたお弁当箱にサンドウィッチを飾った。いつもより華やかさに気を配って。
昨日の晩まで何度もどの服を着ていくか悩んで決めたのに、当日朝になって、やっぱりあれにしようかこれにしようかどれにしようか、と里美は迷ってしまった。
2時半にたこ焼きを食べることを考えると、お昼は早めに済ませた方がいい。そう考えた里美は、11時に一橋学園駅で待ち合わせをして、玉川上水の遊歩道にあるベンチで軽いランチを楽しもう、と陸を誘っていた。
駅前で待つ陸は、とても人目を引く。若い葉桜の様に快活な立ち姿、青々とした光を弾くその梢の陰から、まだ散らずに残っていた薄桃色の花びらを覗かせているようだ。
里美は、そんな陸に見惚れて、このまま時が止まってしまえばいいのに、と思う。ずっと見ていたかったが、陸に気付かれて歩みより、声をかけた。
「陸君、こんにちは。もしかして待ったぁ?」
「ううん、待ってないよ」
手を振って駆け寄る里美に、陸は頬を撫でるような優しさをもって右手を挙げて答える。
里美は、お気に入りのフリースのワンピースを着てきた。結局昨日決めた通りの装いだ。
「陸君、今日はありがとう」里美は、伸ばした右手の肘に左手を添えて、スカートを揺らす。
「いいよ、僕も曾おばあちゃんにはお世話になってるし」
上目づかいではにかみながら自分を見上げる里美と視線が絡んで、陸は、少し照れながら笑顔を返す。
2人の家の最寄り駅である一橋学園駅は、玉川上水と交差している。駅から少し歩いて行って、遊歩道にあるベンチに腰かけた。
コナラの木が並ぶとても清涼な景色だ。とても長い遊歩道で、左右を民家に囲まれているにもかかわらず、静かな林の中にいるみたいに思わせてくれる。心なしか、空気も違う気がする。里美はこの景色が好きだった。
この時期は、コゲラが並木の幹を行ったり来たり飛び回って、表皮を突いている。
コゲラとは、黒っぽい羽に白色が混ざった小さなキツツキだ。
そばの木にとまったコゲラを見て、陸が笑った。
「ギーギーだって、小さくて可愛いのにすごい鳴き方」
「そう、変な声。でもよく人が近くにいても飛んで逃げていかないね」
「引っ越してきてから1年以上経つのに気が付かなかった」
陸はそう言って、里美にお礼を伝えた。
嬉しさいっぱいの里美は、照れを隠すように、持ってきたリュックからバスケットを取り出して抱える。
「実はね、今日サンドウィッチ作ってきたの」
「わぁ本当?」
里美は、家の近い柚奈と2人でよく遊歩道でピクニックをしていた。ふたを開けてランチクロスを広げながら、里美は自分の頑張りを一生懸命伝えようとする。
「手作りサンドウィッチが私のウリなの。本場アメリカ仕込みだから、とても人気があるんだっ。家族と柚奈や萌愛も美味しいって言ってくれるし、お母さんのお友達にも大変な人気なの。
アメリカのお友達にもすごい好評で、お店出したらって言われたこともあるんだ♪」
メニューはシンプルで、数種類のサンドウィッチとピクルスのみ。柚奈とピクニックする時は、ポットにスープとホットかアイスのミルクティを入れて持ってくる。今日はお出かけ予定なので、自動販売機で飲み物を買った。
今日はいつもより彩りに力を入れた。里美はわざわざ紫色の玉ねぎを買ってきたし、サンドウィッチの種類も倍の6種類(軽くないぞ?)だ。厚めに切った食パンに切れ込みを入れて具材をはさんだタイプのサンドウィッチ。チキン、ハム、卵、レタス、クロックムッシュと具だくさんなやつ。どれもこれもこれでもかっていうほど具が挟んである。ボリューム満点だ。
特にパンの厚みより具の方が厚い具だくさんボリュームサンドは圧巻だ。なんと具が6層もある。レタス、トマト、ゆで卵、アボガド、人参、紫玉ねぎ、生ハム。
それを見て陸は、(なんかサンドウィッチの大様がいる)と思った。
ココットに玉ねぎとキュウリとニンジンのピクルスが添えてあって、目にも優しい。
使い捨てのペーパーボックスに詰めようかと迷ったけれど、里美はお気に入りのアケビの蔓を笊目編みにしたお弁当箱にサンドウィッチを飾った。いつもより華やかさに気を配って。
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