愛するということ

４２．彩絵🆚美由紀

２．選別

　彩絵は考えた。
（そうか、私を捕まえて離さない魅力のあるたっちゃんのＤＮＡがほしいのか。
　あれ？　でも、私一筋のたっちゃんはいい男じゃないんじゃない？　いや、そういういい男を振り向かせるＤＮＡが先輩にあって、さらにそういうＤＮＡを強化するためにたっちゃんのＤＮＡが欲しいってことか？　なんか複雑。いや単純だけど、私には理解できないから、なんか複雑）
　美由紀は言う。
「自分のきれいさを磨くとか、頭脳を磨くとか、他人より優位に立つために私たちは日々努力させられてきているでしょ？　学校でも会社でも。
　私は今学んでいる経済学を駆使してのし上がっていくつもりでいるし、それが天性なんだと思う。
　せっかくそんな天性があるのに、経済に弱い男の血をもらって子孫の能力を制限するなんてあほだと思わない？　
　あなただって、背が小さいのを悩んでたでしょ？　それで自分より背の小さい人と結婚して、更に小さい子供を産むのと、背の高い人と結婚して大きな子を産むのとどっちがいい？」
「それは背の高い人ですけど、でも好きになったら関係ないですよね？」
「一時の感情に流されても幸せになれないんじゃない？　その時は幸せなんだろうけど。
　でも、なんかあれだなぁ、私が人を好きになっていないって思ってない？　私だって好きになってるんだよ。ただ、同時に何人も好きになれるだけ。だから今島根君のことが好きだけど、今の彼氏も好きなのよ。これってすごい能力だと思わない？」
「でも、一途に妻と子を守れる力もすごい能力だと思いますよ。だって、複数人愛せる人は、愛情も力も分散しちゃうじゃないですか？　散漫になってパフォーマンス落ちるんじゃないですか？」
「そうね、でも私を見下し過ぎ！　そんなこと、とうの昔に考えたわよ。
　私はＩＱと精能力と同時恋愛が能力だから、その３つに集中投資してるの。父も祖母も曾祖父も大学の教授だったから、ＩＱの高さは先祖伝来ね。私はその力を強化したり守ってもらうための男選びをしているのよ。
　私が男に望んでいるのは、私を守る経済力とＩＱ，精能力。あと女が群がる魅力ね」
「それじゃあ、先輩もたくさんいる女の人の１人になっちゃうじゃないですか」
「それでいいのよ、彩絵ちゃんの言う通り一途に１人を愛せる力はすごい能力だと思う。それから見れば、浮気性の人なんて無能よね。実際一つの家庭を守る女性（男性）から見たら、自分の家庭に注がれる力が何分の１にまで減っちゃってるんだから。正直そんな男は願い下げだわ。無用の長物よね。
　だから、私はその能力だけをいただいて、あとはお払い箱」
　美由紀は、友達の愛ちゃんを見て学習していた。浮気男に魅了されたがために男をお払い箱に出来ず、貢がされたり暴力を振るわれたりしている。
　男の一部になる能力よりも男を一部にする能力を高めたい、と彼女を見て誓ったのだった。